上 下
215 / 654
エルマン渓谷攻防戦

あれは死ねる!

しおりを挟む
白雷装は魔法防御力を犠牲にしてスピードを上げる業、私はその早さとプロテクトアーツを活かし、360°の全方位からグロスに攻撃をする。

 しかし、先から呪いや鈍重の魔眼使ったり【雷疫爪】とかも使ってるけど、やっぱり魔族レベルの相手にはデバフは入らないのね!も~!!ちょっと位入ってくれても良いじゃん!役にたたない!役にたたないよこのスキル!雑魚にばっか効いたって何か知んないけど、私の相手基本格上だから意味無いんだよ!むしろこないだ、初めてに近いレベルで効いたから逆にビビったし!そんなのアレだよね?スキルとしてどうなのよ!?私も澪みたいなの欲しかった!

 まあ、私の戦い方には合ってるから良いんだけどね?

 元々日本に居たとき、私達三人はネトゲでもリアルでも今と同じ様な戦い方が得意だった。

 私は勿論スピードを活かした一撃のスキルに賭ける紙装甲のピーキーなキャラステ。まあ現実ではスタミナが足らなくて、そんなに動くと直ぐにヘバるから面倒だし、相手の急所を打ち抜いて昏倒させる感じだったけど。

 瑠璃はスピードよりも技術や技を重視したカウンタータイプ、ネトゲでもそんな感じで大体平均的にステ降りしてた。

 澪は割りと王道で防御よりもスピード寄りのパワー型、色んなスキルよりも基本のパッシブスキルや得意属性ガン上げタイプだったよね?そしてリアルでも完璧超人!中身が残念なのは仕様です。

 まあ、だからこの世界でも大して戦いかたは変わってない。とは言え、ココまで得意のデバフが掛からない相手だと、流石に文句の一つも言いたくなるのはしょうがない。

 私は色々と溜まった鬱憤も晴らしながら更にグロスに攻撃を加えて行く。しかし、だんだんとグロスも私のスピードに馴れてきて、危ない場面が増えてきた。更に言えば、グロスのスピードが上がって来てる?!ーー私のその考えが正しいかの様に、私の髪や頬を暴風が撫でて行く感触に冷や汗が止まらない。

 とは言えやるしか無いんだよね?

 私は体の負荷を考える事無く、更にスピードを上げる為今までよりも細かく【雷速】を制御する。【雷速】を今まで以上に細かく制御するには、尋常でない集中力や精神への負荷が掛かる。しかし、そんな事で出し惜しみして勝てる相手では無いのは百も承知だった。だが、ボギィ!私のそんな些細な努力も空しく、遂にグロスの攻撃は私の左腕に当たり、私の腕の肉を中程まで吹き飛ばす。

 グッ!超イタイ!何とか繋がってるけど、折れてる上に露出した部分に風が当たって、滅茶苦茶痛い!!

「クハッ!どうしたハクアそれで終わりかぁ!スピード上がったが軽りぃんだょ!それがお前の切り札だったようだが、俺には通じねぇゾ!」

 そりゃそうだ。早くなったのはスピードだけ、私の力が上がった訳じゃない。スピードが上がって多少威力が上がった位じゃお前には効かないよな・・・・・・・。

 私は迫るグロスの拳を見詰めながら、待ち望んでいた物を見付け口の端を上げる。流石に怪訝に思ったのか、一瞬動きが鈍るがグロスは攻撃を止める事無く、私に特大の一撃を加えようと大振りの一撃を放つ。しかし。

「誰が何時、|コレ(白雷装)が切り札何て言ったよ?」

 私はその言葉を放った瞬間、今度は予めスタンバイしていた私に使える最大火力まで高めた火炎魔法を、自分に向けて放ち力へと変える。これは【雷装鬼】と【魔拳】の複合業だ。進化候補に炎鬼や風鬼何て物が在ったのを思いだし、もしかしたら白雷鬼の【雷装鬼】の様なスキルが在ったかも知れない。そしてもしそれが存在すれば、何時もの様にスキルとして覚えていなくても、使えるかも知れない。

 私はそう考えて取り合えず【魔拳】の要領でやってみた。一番最初に試した風属性は駄目だったけど、次にダメもとで試した火属性は何と成功した。

 だが、成功とはいえそれは一時的な物だった。それから何度か試したがやはり直ぐに効果は切れ、オマケに疲労感は半端無かった。そこで私は【雷装鬼】に【鳴神】を掛け合わせる事が出来た様に、単一で使うのでは無く掛け合わせる事は出来ない物か?と色々試した所何とか完成したのがこの鬼炎雷装だった。

 開発時は本当に苦労した。いや、マジで。

 因みにこのスキルの名前を考えたのは駄女神である。なかなかの中二センスだが、実は結構気に入ってるのは内緒だ。

 この鬼炎雷装も白雷装の様に制限がある。鬼炎雷装は白雷装の制限に更に物理防御力まで攻撃力に返還するの。詰まりは、物理、魔法の両防御力が無くなる代わりに、物理攻撃力と敏捷を上げる事が出来るのが鬼炎雷装なのだ!

 私は迫るグロスの攻撃を先程よりも強く弾き飛ばす。流石のグロスも【雷速】を使い防御力を全て攻撃に回し更に、前に戦った時の様に拳と足にのみ鬼炎雷装を集中、圧縮した私の超攻撃型のスタイルには、パワーで押し切る事は出来ず「うおっ!」と言って後ろへとバランスを崩す。

「まだまだダァ!こんなもんかハクア!」

 グロスは無理矢理体勢を戻し、私にカウンターを仕掛ける。拳が魔力纏い大地を穿ち私に、またも岩塊が迫る。

 チッ!私は舌打ちしながら、全ての岩塊を弾き、反らし、避けていく。鬼炎雷装状態ではどんな攻撃でも致命傷に為るため、一撃とて食らう事は出来ない。

 岩塊を避ける為立ち止まる私に、グロスが手の平に魔力を集め、その魔力を散弾の様に飛ばして来る。

 何と!?そんな攻撃も在ったんですか?!

 私は【雷速】を使い弾幕の薄い方へと逃れる。しかし、グロスはそれを見越したように先回りして私の事を捕らえようとする。

 ですよね!罠ですよね!だって弾幕の張り方おかしかったもん!!

 私は【結界】で何とか体を捩じ込む時間を稼ぎ、グロスの拳による攻撃の下に潜り込む、それと同時に放たれる蹴りを更に体を傾けて躱すと、今度は残った左手で下から掬い上げる様な攻撃が来る、私は地面を転がる事になるのも構わず、地面を蹴り後ろへと跳ぶ。

 ズザザザっ!と、音を立て地面を滑りながら、何とか体勢を建て直そうとする。だが、そんな私の努力を嘲笑うかの様に、私に向い飛んでくる魔力の塊。

 あれは死ねる!

 私は体勢を建て直す暇なんて無い!と、割りきって自分の下に、下から突き上げる様に【結界】を作り、自分の体を下から押し上げる。

 イッテェ!

 私は自分の作った物でダメージを食らいながら何とか攻撃を避ける。それと同時に今度は空中に【結界】を作り、それを足場にグロス目掛け【鳴神】を放つが、その攻撃はグロスが簡単に後ろに飛び避けてしまう。

 だがーーーそんなん想定内ですとも!!私は飛び退くグロスへと更に【雷鳴】を使って追撃を掛ける。この状態でなら威力は低いが【雷鳴】も連発できる。

 MP効率も悪いけどね?

 そして、何発か撃ちながらある地点へと誘導して、私自身も再び接近戦を仕掛ける為、今度は刀を取り出し刀技【散華】を使い突進していく。

 ガキィ!グロスは流石の防御力で私の刀では断ち切る事は敵わない。だが、それでも傷痕は残りダメージは通る。私はグロスの事を斬り付けながら、攻撃を避け続ける。すると、ズボッ!と、グロスの足元が崩れバランスを崩す。

 今だ!!私は体勢を崩すグロスへと私の持つ最高の業【鳴神】【疫崩拳】に炎の力もプラスした【雷轟炎】を放つ。

 因みにコレも駄女神が付けた名前だからな!まんまとか言うなよ!!苦情は受け付けません!!全て駄女神がやった事です!

 ドゴァァ!轟音を放ちながら打たれた私の攻撃を、グロスは手の平で受け止め私の拳を逆に握り潰す。

「うっああ!」

 だが、私の攻撃を受け止めたグロスの手も無事では済まなかった。腕は既に炭化し私の拳を握り潰すと、その圧力に堪えかねたかの様に肘から先が崩れ去る。私はそんなグロスに今度は影魔法で顔を覆い、同時に土魔法で地面を液状化させ、足と視界の二つを封じる。

「食らえ!」

 すると今まで戦闘に参加せず、攻撃準備の為に頭上でタイミングを図っていた澪が、下から見た私には山の様にしか見えない氷柱をグロスに向けて、風魔法のブースト付きで発射する。

 だが、その攻撃ですらグロスは私の様に全ての魔力を拳に籠め。バギァアァアン!「「うそん!」」ぶち当る瞬間、グロスの拳が氷柱の尖端へと当たると、そんな音を立て氷柱が砕け散りグロスとその周囲に散って行く。

 その氷は私が液状化させた地面に降り注ぐと、液状化させた地面ごとグロスの足を凍らせて、今度こそ完璧にグロスの足を地面へと縫い付ける。

 左手は私の攻撃を受け炭化して崩れ、右手は澪の攻撃で拳を潰され、足も私達二人に縫い付けられたグロスに、回避する手段は無い!この一瞬を作る為に最初から行動していた私達は、そのタイミングを狙い私、澪、瑠璃が同時にグロスへと三方向から攻撃を仕掛ける。

 放つは水転流奥義【水破】だが、多方向から放たれる場合この業は、全く違う攻撃となる。

 元は体内に存在する水分を刺激し乱す事で相手の防御に関係無く、内部から相手を破壊する業だが、その正体は波、詰まりは振動を体に与える事で水分を刺激する。そして、多方向から全く同じタイミングで放たれた場合体内でその波は互いに干渉増幅され、その波が完全に重なる一点に関しては、放射線治療のガンマナイフの様に小さい力が集中する事で、絶大な破壊力を持った爆弾の様な衝撃を、内部に発生させる事が出来る水転流共闘奥義【破極】となるのだった。

 更にハクア達は瑠璃に戦いを見せ、ハクア達を相手捕るグロスの動きから、大体の魔石の位置を割り出させ、そこに三人の波が重なる様にしたのだった。そしてその効果は絶大だった。グロスは攻撃を受けその巨体を内側から、破裂するような音と共に氷の中に仰向けに倒れるのだった。

 こうしてハクア達はグロスとの戦いに辛くも勝利したのだった。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...