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エルマン渓谷攻防戦

これだからストーカーは

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 陣へと辿り着いた私達は、現在その中を見回っていた。

「おい、無視をするな!」

 陣の各所には至る所にテントの様な物が張られ、所狭しと並べられている。

「おい!聞いているのか!」

 これ、攻められたら一発じゃね?

「陣を張るってこんな物なの?」

「大体はそうですね。但し冒険者の方々は余り大所帯で、と言うのは在りませんしここまででは無いですよ」

 私の言葉に騎士出身のフロストが答える。

 そんなもんか?

「無視をするな小娘!」

「いい加減うるさいぞハゲ」

「き、貴様!誰のせいだと思っているんだ!」

「私のお陰で未練なく剥げられたんでしょ?」

「ぐっ、くっ、この」

「そもそも、役に立ちそうにも無い癖に何でこんな前線に居るの?邪魔だよ」

「この私が自ら指揮を取ってやろうと言うのに何と言う言いぐさだ!」

「必要ない。その頭の毛根の様に消えてくれ」

「貴様ー!」

「そもそも何で私達に着いてくるのさ」

「ふん、貴様の様な危険人物を野放しに出来るか!」

「ウザ!」

 これだからストーカーは困る。きっとまだ瑠璃に対して「ルーリンさんは自分が守って上げなければ」とか頭悪い事考えてんだろうな~?それよりもっと。

 私達は陣の中を突っ切り外れの方にやって来る。そして、天幕の無い所まで来ると立ち止まり、ヘルさんに確認を取り始める。

「まあ、ハゲはどうでも良いや。この辺なら大丈夫でしょ?」

「そうですね。ここなら天幕も在りませんし良いと思われます。それに遮蔽物も在りませんから、私が感知出来ます」

「なら決まりだね?ミルリルも手伝ってくれるんだっけ?」

「はい!コロ様に教えて戴いたので頑張ります」

 私はその返事を聞くと、木の棒を拾い地面に線を書き始める。

「う~ん、この位あればゆったり出来るかな?」

「もうちょい広い方が良くない?」

「こんくらい?」

「それだけあれば大丈夫だと思いますよご主人様」

「んじゃ後は、厚さをこれくらいで・・・と、完成。じゃあ、アリシア、コロ、ミルリルお願い」

「「はい」」「了解かな」

「貴様ら何をするつもりだ!ハッ!?まさか破壊工作を」

「ウルセー、ハゲは黙ってろ」

 私はうるさいハゲの膝裏を蹴り、膝カックンする。そうして黙らせると、アリシア達の作業が始まる。アリシア達は私が地面に書いた線に沿って、土魔法で壁を作り、更にそれをコロが石で補強する。そして高さ二メートル程の壁を作り終えると、今度はその壁に天井を取り付け、あっという間に長方形の四角い部屋が出来上がる。私は入り口から中に入り、部屋の中ほどの位置から壁に向かって、部屋の半分を一段高くし、その部分をコロにまた石で補強して貰う。ミルリルはその間に、一段下の所に土魔法で窯等を作り料理する場所を整え、アリシアはテーブルや椅子を作り出す。

「こんな物ですかね?」

「二人ともお疲れ様」

「お役にたてて良かったです」

「な、何だこれは?」

「オイコラハゲ!勝手に入ってくるなよ」

「これは何だと聞いているんだ!」

「別に、天幕が嫌だから部屋作っただけ、さあ説明はくれてやったんだから出てけ」

「マスター、ギルド長とアレクトラが来ました」

 ヘルさんに言われ私が外に出ると、入り口の所で二人揃って驚いていた。

「どうしたの?」

「凄いな。まさか土魔法でこんな物を作るとは」

「驚きました。こんな使い道が有ったのですね」

「皆頭固すぎ」

 全く、土魔法様に向かって何言ってやがる。

「それで何の様?」

「アレクトラ様をお連れしたんだ。まさか護衛が居るとはいえ、送らないわけにはいかんだろう?」

 そりゃそうか。

「中入る?お茶位出すよ?」

「良いのか?」

「客にはそれ位する」

 そして私達は中に入り、全員でお茶を飲む。その間もアレクトラ達は、興味深そうに中を見回している。

 さして大した物もあるまいに。

「ふむ。もし良かったら今度ギルドで講習をやって貰えんか?」

「講習?」

「ああ、防御面においても安全性、快適さにおいても比較にならんからな」

「コロに聞いて第一人者だから、とは言えこのレベルで土系統の魔法を使えないとめんどいぞ」

「問題はそこか。いやしかしそれでも頼めないか」

「あの、え~と、ボクで良いのなら」

「本当か?!」

「は、はいかな」

「値段は応相談」

「うぐ、わ、わかった」

「貴様また金か!少しは技術力を人々に分け与えようという気は・・・」

「無い。嫌なら交渉は決裂。そもそもお前は早く帰れうるさい」

「ゲイル少し黙っていてくれ。それではコロ君、帰ったら日程を調整しよう」

「分かったかな」

「一つ聞きたい」

「なんだい?」

「ここに陣を構えてから、一度でも襲撃は?」

「いや来ていないな。ここから砦迄はまだ幾分距離があるその為だろう」

「そうか」

 気が付いていない?本当にそうか?

「何故だい?」

「私なら合流する前に叩く。何より陣の位置を見れば挟撃されるのは明白、その前に叩くのは定跡だと思うけど?」

「確かにな。一応警戒はしているんだがな」

「なら良い。余計な事を聞いた」

「いや、それよりも君はこのまま私と共に来てくれるか?このまま主要な人物を集め、作戦を伝えたいのだが」

「分かった」

 そして私とヘルさんの二人で、ギルド長と共にギルドの天幕へ赴き、退屈な作戦会議に参加するのだった。
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