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ダンジョン&アリスベル修行編
(・・・・・・・・はっ?!)
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「どうしたの白亜ちゃん?随分辛そうじゃん?俺が介抱でもしてあげようか?」
(クソ、体が重い上に力が抜ける)
「どうだよこれが俺の勇者の能力。【愚者の領域】だ!俺を中心に、一定範囲内に居る相手のスキル、魔法を封印。しかも魔力や体力も奪ってステータスを下げる事が出来る。そして俺だけは、魔法を使えなくなるだけで、その他影響を受けずに居られる。まさに、この領域内は俺のフィールドここでは俺が王だ!あはははは」
(ヘルさん?)
〈言っている事は本当です。現に全員の魔法、スキルは封印されステータスも下がっています。それに、状態異常の虚脱、武技も使えなくなっているようですね〉
(チッ!面倒な。私は状態異常効かないから良いけど、皆は無理か。戦えるのは私だけ。とは言えまずは、あいつが気持ちよく喋ってる間に、私のステータスだけチェックしないと。って【鑑定士】も使えねー)
〈私のこれは【念話】ではありませんし、ステータスチェックは、この機体の機能ですから。マスターの場合、全ての数値が大体50程下がっています〉
(何とかなるか?いや、するしか無いか)
ハクアはそう結論付け体に力を込め立ち上がる。するとそれを見た政人が怪訝そうに喋り掛けてくる。
「何だ?何で立てるんだよ!お前も後ろの奴等の様に立てない筈じゃ!」
(なるほど。必勝の手だと思ってた物が、私が普通に立つ事で覆ったから、この取り乱し様か・・・なら)
「そんな物、あんたと同じで欠陥だらけの能力だからでしょ?ギフトは個人の資質に依って変わるらしいからね。【愚者の領域】何て確かにぴったりだよ。ねぇ?愚者の王様?」
ハクアがそう言った瞬間、明らかな殺意がハクアを襲う。政人はこれまでの余裕の態度は鳴りを潜め、怒気に満ちた表情でハクアを睨み付ける。
「ご主人様」「白亜先輩」
「大丈夫です。相手が人ならハーちゃんは絶対負けません」
「当たり前でしょ。アリシアも結衣も心配しないで。こんな素人に負けないよ」
「この・・・言わせて置けば!もういい、お前は手足切り落として、一生俺のオモチャにしてやる!どんなに殺してくれと叫んでも殺さずに、生きたまま屈辱と敗北を刻み込んでやる」
ハクアはその言葉を聞き流し、水転流徒手空拳、流水の構えを取る。
それを見た政人は馬鹿にする様に嗤い、真正面から殴り掛かって来る。
ハクアは政人の大振りの攻撃を、受けた瞬間に腕全体を捻り力を受け流す。しかし政人は、それにも構わず連続で攻撃を繰り返すが、そのことごとくをハクアは全て打ち払い、反らし、回避していく。
(速い!けど、それだけだな)
「・・・・凄い」
目の前で繰り広げられる光景に、アリシアが呟き、結衣は唖然としている。瑠璃は当然の事として受け入れていた。それを不思議に思ったヘルが瑠璃に尋ねる。
「瑠璃、何故マスターはあのステータス差で、全ての攻撃を無効化出来ているのですか?」
「皆は知らないかも知れないけど、元の世界ではハーちゃんって、少し身体が弱くって激しい運動とかは出来なかったんです。
でもあの見た目ですから、私とみーちゃんが水転流や他の武術を教えたんです。
それで分かったのは、ハーちゃんはやっぱり天才だって事、相手が人ならハーちゃんは、先読みで相手の動きを全て把握して、対応が出来ます。
それに、幾らステータスに差が有ってもあんな素人の攻撃では、ハーちゃんの敵じゃ無いですよ」
(むしろ、魔法を絡めて戦われる方が危なかったかも?)
瑠璃が説明している間にも、政人はハクアに攻撃を続けるが、やはりそのことごとくを防がれる。
(パターンも尽きたかな?大体のスピードや力も分かったし、そろそろ攻撃に移ってみるか)
そう考えながら政人の右の拳を再び受け流し、そのまま手首を引く。すると、自身の力と引かれる力にバランスを崩し、前のめりになり身体を支えようと、足を踏み出す。が、それをハクアに足で払われ政人の身体が中に浮かび、頭から地面に思いきり叩き付けられる。
水転流【渦潮】相手の力を使い自らの力も加え投げ飛ばし、地面に叩き付ける水転流の基本技の一つ。
政人は頭から地面に叩き付けられたが、力任せにハクアの腕を振り解き、攻撃を加えようとする。が、その前にハクアは距離を取り、追撃こそ出来なかった物のダメージを与える。しかし地面に叩き付けたとはいえ、ハクアのステータスでは、対したダメージを与えられない様だったが、それは想定の範囲内だった。
(やっぱり、ダメージは余りいかないな。でも、今も首を触ってるし痛みは普通に有るのか?それに、体に力を入れて無ければ私の攻撃でも、少しは通る。
しかし、思えば前世も含めまともに戦えるのは割りと初めてかも?最初はゴブリンだし、次は小さいし、少しサイズがまともになったら、相手がでかかったからな~)
ハクアは知らなかったが、政人がここまで一方的にやられるのには、ハクアの才能と、先読みの力以外にも理由が有った。その一つが経験値の差で有る。
政人はこの世界に召喚されてからというもの、まともな戦闘になったのはこれが初めての事だった。その理由こそが政人の持つギフト【愚者の領域】のせいだった。このギフトは、対人以外でも効果を発揮し、モンスターを安全に狩る事が出来た。
そして、持ち前の運動神経の助けもあり、さして苦労する事も無かった為、それ以外の戦法も考えず、努力する必要すら無かった。
それ故に弱った敵を相手に確実なレベリングをした結果が、今のこの状況だった。
「調子に乗るなよ!クソアマが!!こいつで切り刻んでやる」
政人は何処からか短剣を二本取り出し両手に構え双短剣技【強襲】を使い、ハクアに襲い掛かる。
【強襲】は、防御を捨てた左右の短剣による全力攻撃である。
流石のハクアもステータスで劣っている為、その攻撃を何とか骸を使い防御に全神経を割いて対処するしか無い。
しかしその行為も、骸にヒビが入り崩れ初めてしまった事で均衡が崩れ、ハクアは堪らず距離を取り、暁と宵闇を取り出し使い物にならなくなった、骸を捨て再び政人と対峙する。
「どうしたんだよ!先までの余裕はどこ行ったんだ!今ならまだ俺のペットとして可愛がってやるぜ!」
「そりゃどうも、願い下げだよ下半身脳!」
ハクアに話し掛ける事で、息を整え終えた政人は、再び【強襲】を使いハクアに襲い掛かる。それに対し今度はハクアも防御では無く、襲い掛かる攻撃に対して横から打ち払う様に、政人の短剣と切り結んでいく。
それでもやはり、ステータスの差によりじりじりと押されて行き。遂にハクアは前に出ようとした所を、政人に阻止され両手に握った短剣を上に弾かれ、体の全面を無防備に晒し、後ろに倒される様にバランスを崩して仕舞うのを、何とか足を出し踏み留まる。
「ご主人様!」
その決定的な瞬間を作り上げた政人は、全ての力を込め短剣技【椿】による、首を切り裂く高速の一撃を、勝利の確信と共に放つ。
その瞬間、政人が見たのはハクアの絶望に染まり死に恐怖した顔・・・・・・では無く、口の端を歪めこちらを嗤う顔だった。
(何で、嗤って・・・)
政人は集中の中、スローモーションの様な視界の中で、必死にその意味を考える、しかし武技を使い出した技は、止める事が出来ずにハクアの首に向かって行く。
が、首に届く寸前・・・ハクアが自分から前に出て短剣に突っ込んで行く。ハクアが前に出た分目標がズレ、短剣はハクアの首を浅く傷付けるに留まり、政人の一撃は外れて仕舞う。
そしてハクアはそのまま更に身体を前に倒し、政人の【椿】の力を利用してカウンターで、武技を放ったその腕を肩口から切り飛ばす。
「いっ!ギャァァァァアア!う、うでがぁぁあ、オレの、俺の腕が!いでぇょ!」
ハクアに腕を切り落とされた事で、政人は倒れ込み痛みにのたうち回る。
(まっ、痛いよね?私もすんげー痛かったし)
実を言うとハクアの狙いは最初から、政人を倒す事では無く、痛みで戦闘不能状態にする事だった。
ステータスの差で倒す事は困難だと判断し、心を折る事にしたのだった。詰り、政人は最初からハクアの筋書きに添って動かされていた。
『シルフィン:ハクア嫌でしょうけど、今のうちに切り飛ばした腕を【喰吸】で取り込みなさい』
(えっ?こいつの腕取り込むとかガチで嫌なんだけど)
『シルフィン:後で説明します。我慢なさい』
(しょうがないか)
ハクアはのたうち回る政人を無視して、アリシア達の方に吹き飛んだ、腕を回収しに行く。と、歩いている途中に政人の【愚者の領域】が、解除される。
(痛みでギフトを維持出来なくなったか?)
腕の落ちた場所に着くと、皆はダルそうではあるが何とか回復していた。そしてハクアは政人の腕を取り。
「お前!俺の、俺の腕をどうするつもりだぁ!」
(血が止まってる。回復薬でも使ったか?)
「どうって?こうするんだよ」
そう言ってハクアは【喰吸】を使い、腕を取り込み消し去ってしまう。
それを見た政人が、声にならない奇声を上げ走って来るが、ウインドブラストで吹き飛ばし、木にぶち当てる。
「がはっ!クソがぁあっ!何であれを避けられんだよぉ」
(わざわざ言う訳無いじゃん。あんたじゃ無いんだし)
あの時、ハクアは政人に自分から短剣を弾かれる様誘導し、バランスを崩した様に見せ掛けた。しかしそれは、自分から一歩後ろに下り、その足に重心を乗せる事で、前に突進する力を溜めていた。だからこそ武技にカウンターを合わせるという、無茶を可能にしたのだった。
「さてと、お前を生かして置いてもしょうがないし、そろそろ幕にしようか?」
そう言ったハクアは短剣を構え直し、政人に近付く。
「まっ、待てよ!俺はクラスメイトだぞ!本当に殺すきか」
「そうだよ」
そして、ハクアが政人に短剣を降り下ろそうとした時、ハクアが「チッ!」と、舌打ちをして風縮を使い、アリシア達の前に飛んで来て、【結界】を全員の前に三重に展開する。
ボガァァァァアン
間一髪、ハクアの防御のお陰で全員怪我をせずにすむ。しかし、土煙が晴れるとそこに政人の姿は無かった。
(逃げられたか?いや、連れていったか)
「ハクア!ごめん逃がした」
そう言って現れたエレオノ達を見て、怪我が無い事に安堵するハクア。しかし、エレオノ達の後ろから、フロストが駆けて来るのが見え警戒を強める。そして・・・・・・。
「ユイ!」
「フロストさん!」
フロストに名前を呼ばれた結衣は駆け出し、走って来たフロストと互いに抱き締め合い、そのまま口付けを交わす。
(・・・・・・・・はっ?!)
ハクアはここ最近で一番の混乱に陥った。
(クソ、体が重い上に力が抜ける)
「どうだよこれが俺の勇者の能力。【愚者の領域】だ!俺を中心に、一定範囲内に居る相手のスキル、魔法を封印。しかも魔力や体力も奪ってステータスを下げる事が出来る。そして俺だけは、魔法を使えなくなるだけで、その他影響を受けずに居られる。まさに、この領域内は俺のフィールドここでは俺が王だ!あはははは」
(ヘルさん?)
〈言っている事は本当です。現に全員の魔法、スキルは封印されステータスも下がっています。それに、状態異常の虚脱、武技も使えなくなっているようですね〉
(チッ!面倒な。私は状態異常効かないから良いけど、皆は無理か。戦えるのは私だけ。とは言えまずは、あいつが気持ちよく喋ってる間に、私のステータスだけチェックしないと。って【鑑定士】も使えねー)
〈私のこれは【念話】ではありませんし、ステータスチェックは、この機体の機能ですから。マスターの場合、全ての数値が大体50程下がっています〉
(何とかなるか?いや、するしか無いか)
ハクアはそう結論付け体に力を込め立ち上がる。するとそれを見た政人が怪訝そうに喋り掛けてくる。
「何だ?何で立てるんだよ!お前も後ろの奴等の様に立てない筈じゃ!」
(なるほど。必勝の手だと思ってた物が、私が普通に立つ事で覆ったから、この取り乱し様か・・・なら)
「そんな物、あんたと同じで欠陥だらけの能力だからでしょ?ギフトは個人の資質に依って変わるらしいからね。【愚者の領域】何て確かにぴったりだよ。ねぇ?愚者の王様?」
ハクアがそう言った瞬間、明らかな殺意がハクアを襲う。政人はこれまでの余裕の態度は鳴りを潜め、怒気に満ちた表情でハクアを睨み付ける。
「ご主人様」「白亜先輩」
「大丈夫です。相手が人ならハーちゃんは絶対負けません」
「当たり前でしょ。アリシアも結衣も心配しないで。こんな素人に負けないよ」
「この・・・言わせて置けば!もういい、お前は手足切り落として、一生俺のオモチャにしてやる!どんなに殺してくれと叫んでも殺さずに、生きたまま屈辱と敗北を刻み込んでやる」
ハクアはその言葉を聞き流し、水転流徒手空拳、流水の構えを取る。
それを見た政人は馬鹿にする様に嗤い、真正面から殴り掛かって来る。
ハクアは政人の大振りの攻撃を、受けた瞬間に腕全体を捻り力を受け流す。しかし政人は、それにも構わず連続で攻撃を繰り返すが、そのことごとくをハクアは全て打ち払い、反らし、回避していく。
(速い!けど、それだけだな)
「・・・・凄い」
目の前で繰り広げられる光景に、アリシアが呟き、結衣は唖然としている。瑠璃は当然の事として受け入れていた。それを不思議に思ったヘルが瑠璃に尋ねる。
「瑠璃、何故マスターはあのステータス差で、全ての攻撃を無効化出来ているのですか?」
「皆は知らないかも知れないけど、元の世界ではハーちゃんって、少し身体が弱くって激しい運動とかは出来なかったんです。
でもあの見た目ですから、私とみーちゃんが水転流や他の武術を教えたんです。
それで分かったのは、ハーちゃんはやっぱり天才だって事、相手が人ならハーちゃんは、先読みで相手の動きを全て把握して、対応が出来ます。
それに、幾らステータスに差が有ってもあんな素人の攻撃では、ハーちゃんの敵じゃ無いですよ」
(むしろ、魔法を絡めて戦われる方が危なかったかも?)
瑠璃が説明している間にも、政人はハクアに攻撃を続けるが、やはりそのことごとくを防がれる。
(パターンも尽きたかな?大体のスピードや力も分かったし、そろそろ攻撃に移ってみるか)
そう考えながら政人の右の拳を再び受け流し、そのまま手首を引く。すると、自身の力と引かれる力にバランスを崩し、前のめりになり身体を支えようと、足を踏み出す。が、それをハクアに足で払われ政人の身体が中に浮かび、頭から地面に思いきり叩き付けられる。
水転流【渦潮】相手の力を使い自らの力も加え投げ飛ばし、地面に叩き付ける水転流の基本技の一つ。
政人は頭から地面に叩き付けられたが、力任せにハクアの腕を振り解き、攻撃を加えようとする。が、その前にハクアは距離を取り、追撃こそ出来なかった物のダメージを与える。しかし地面に叩き付けたとはいえ、ハクアのステータスでは、対したダメージを与えられない様だったが、それは想定の範囲内だった。
(やっぱり、ダメージは余りいかないな。でも、今も首を触ってるし痛みは普通に有るのか?それに、体に力を入れて無ければ私の攻撃でも、少しは通る。
しかし、思えば前世も含めまともに戦えるのは割りと初めてかも?最初はゴブリンだし、次は小さいし、少しサイズがまともになったら、相手がでかかったからな~)
ハクアは知らなかったが、政人がここまで一方的にやられるのには、ハクアの才能と、先読みの力以外にも理由が有った。その一つが経験値の差で有る。
政人はこの世界に召喚されてからというもの、まともな戦闘になったのはこれが初めての事だった。その理由こそが政人の持つギフト【愚者の領域】のせいだった。このギフトは、対人以外でも効果を発揮し、モンスターを安全に狩る事が出来た。
そして、持ち前の運動神経の助けもあり、さして苦労する事も無かった為、それ以外の戦法も考えず、努力する必要すら無かった。
それ故に弱った敵を相手に確実なレベリングをした結果が、今のこの状況だった。
「調子に乗るなよ!クソアマが!!こいつで切り刻んでやる」
政人は何処からか短剣を二本取り出し両手に構え双短剣技【強襲】を使い、ハクアに襲い掛かる。
【強襲】は、防御を捨てた左右の短剣による全力攻撃である。
流石のハクアもステータスで劣っている為、その攻撃を何とか骸を使い防御に全神経を割いて対処するしか無い。
しかしその行為も、骸にヒビが入り崩れ初めてしまった事で均衡が崩れ、ハクアは堪らず距離を取り、暁と宵闇を取り出し使い物にならなくなった、骸を捨て再び政人と対峙する。
「どうしたんだよ!先までの余裕はどこ行ったんだ!今ならまだ俺のペットとして可愛がってやるぜ!」
「そりゃどうも、願い下げだよ下半身脳!」
ハクアに話し掛ける事で、息を整え終えた政人は、再び【強襲】を使いハクアに襲い掛かる。それに対し今度はハクアも防御では無く、襲い掛かる攻撃に対して横から打ち払う様に、政人の短剣と切り結んでいく。
それでもやはり、ステータスの差によりじりじりと押されて行き。遂にハクアは前に出ようとした所を、政人に阻止され両手に握った短剣を上に弾かれ、体の全面を無防備に晒し、後ろに倒される様にバランスを崩して仕舞うのを、何とか足を出し踏み留まる。
「ご主人様!」
その決定的な瞬間を作り上げた政人は、全ての力を込め短剣技【椿】による、首を切り裂く高速の一撃を、勝利の確信と共に放つ。
その瞬間、政人が見たのはハクアの絶望に染まり死に恐怖した顔・・・・・・では無く、口の端を歪めこちらを嗤う顔だった。
(何で、嗤って・・・)
政人は集中の中、スローモーションの様な視界の中で、必死にその意味を考える、しかし武技を使い出した技は、止める事が出来ずにハクアの首に向かって行く。
が、首に届く寸前・・・ハクアが自分から前に出て短剣に突っ込んで行く。ハクアが前に出た分目標がズレ、短剣はハクアの首を浅く傷付けるに留まり、政人の一撃は外れて仕舞う。
そしてハクアはそのまま更に身体を前に倒し、政人の【椿】の力を利用してカウンターで、武技を放ったその腕を肩口から切り飛ばす。
「いっ!ギャァァァァアア!う、うでがぁぁあ、オレの、俺の腕が!いでぇょ!」
ハクアに腕を切り落とされた事で、政人は倒れ込み痛みにのたうち回る。
(まっ、痛いよね?私もすんげー痛かったし)
実を言うとハクアの狙いは最初から、政人を倒す事では無く、痛みで戦闘不能状態にする事だった。
ステータスの差で倒す事は困難だと判断し、心を折る事にしたのだった。詰り、政人は最初からハクアの筋書きに添って動かされていた。
『シルフィン:ハクア嫌でしょうけど、今のうちに切り飛ばした腕を【喰吸】で取り込みなさい』
(えっ?こいつの腕取り込むとかガチで嫌なんだけど)
『シルフィン:後で説明します。我慢なさい』
(しょうがないか)
ハクアはのたうち回る政人を無視して、アリシア達の方に吹き飛んだ、腕を回収しに行く。と、歩いている途中に政人の【愚者の領域】が、解除される。
(痛みでギフトを維持出来なくなったか?)
腕の落ちた場所に着くと、皆はダルそうではあるが何とか回復していた。そしてハクアは政人の腕を取り。
「お前!俺の、俺の腕をどうするつもりだぁ!」
(血が止まってる。回復薬でも使ったか?)
「どうって?こうするんだよ」
そう言ってハクアは【喰吸】を使い、腕を取り込み消し去ってしまう。
それを見た政人が、声にならない奇声を上げ走って来るが、ウインドブラストで吹き飛ばし、木にぶち当てる。
「がはっ!クソがぁあっ!何であれを避けられんだよぉ」
(わざわざ言う訳無いじゃん。あんたじゃ無いんだし)
あの時、ハクアは政人に自分から短剣を弾かれる様誘導し、バランスを崩した様に見せ掛けた。しかしそれは、自分から一歩後ろに下り、その足に重心を乗せる事で、前に突進する力を溜めていた。だからこそ武技にカウンターを合わせるという、無茶を可能にしたのだった。
「さてと、お前を生かして置いてもしょうがないし、そろそろ幕にしようか?」
そう言ったハクアは短剣を構え直し、政人に近付く。
「まっ、待てよ!俺はクラスメイトだぞ!本当に殺すきか」
「そうだよ」
そして、ハクアが政人に短剣を降り下ろそうとした時、ハクアが「チッ!」と、舌打ちをして風縮を使い、アリシア達の前に飛んで来て、【結界】を全員の前に三重に展開する。
ボガァァァァアン
間一髪、ハクアの防御のお陰で全員怪我をせずにすむ。しかし、土煙が晴れるとそこに政人の姿は無かった。
(逃げられたか?いや、連れていったか)
「ハクア!ごめん逃がした」
そう言って現れたエレオノ達を見て、怪我が無い事に安堵するハクア。しかし、エレオノ達の後ろから、フロストが駆けて来るのが見え警戒を強める。そして・・・・・・。
「ユイ!」
「フロストさん!」
フロストに名前を呼ばれた結衣は駆け出し、走って来たフロストと互いに抱き締め合い、そのまま口付けを交わす。
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ハクアはここ最近で一番の混乱に陥った。
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