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ユルグ村祭り編

何とか行けるかな?

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「クソ!魔族が相手だなんて聞いてねぇぞ!」

「ここまで来て泣き言いうな!」

 次々に駆け付けて来た冒険者の数は総勢24名になった。恐らくアリシア達の方も同じ位行っている・・・筈。
 しかしこれ、あかんく無い?一応対抗は出来てるけどそれも一応、しかも対応出来てるのはその中の6人位、後の人間はその6人がフォローしてるから生きてるだけだよね?

「ふむ、あんた名前は?それとクラスは?」

「えっ!わ、私?」

「そう」

 私は状況を整える為先ずは私を回復魔法で治していた女の人に話し掛ける。

「私はリドビア、クラスは僧侶よ」

「回復魔法と他にはサポート魔法何かある?」

「な、何でそんな事まであんたに言わなきゃ!」

「あんたでも見れば分かるでしょ、一部の人間以外は相手になって無い。それどころか、フォローに回ってるから逆に動けなくなってる」

「それは・・・」

「だから、あの6人を中心にフォローする形に切り替える。その為には魔法のサポートが出来る人間の事を知らないと組み立てにくい」

「はぁ、私が出来るのはレベル5の回復魔法、レベル4の結界魔法よ!あっちに居る3人もサポート主体の筈よ!」

「分かった!悪いけどリドビアはあっちに渡り着けて4人で回復のローテ組んで」

「分かったわ!貴女は?」

「奴の一番の関心は私だから前に出る!それと同時に盾以外の邪魔なのは蹴り出すから、あんた達の護衛に回して」

 私の話に首肯いたリドビアは他のパーティーの僧侶の元に走って行く。それを確認した私は風縮を発動し、グロスとの距離を一気に詰めさっきの様に風爪で斬り付ける。

「クハハハハ!ようやく戻って来たかハクアよォ!」

「ヤッホー、ただいま!」

 グロスの言葉に軽口を叩きつつ近くにいた数人の冒険者を、風魔法を使いグロスの間合いの外まで吹き飛ばす。

「ぎゃあ!」「な、なんだ!」「何しやがる!」

 吹き飛ばした私に罵声が飛ぶも、そのまま無視してグロスの横凪ぎの大剣を後ろに飛んで下がり攻撃を避ける。グロスの大剣は避けると同時に切り返し再び私に向かうも、私は着地と同時に風縮で前へと間合いを詰め【疫崩拳】に【魔拳】スキルを使いウインドブラストを込め鳩尾目掛けて叩き込む。

 ドパァン!

 攻撃はクリーンヒットするもグロスは1メートル程吹き飛ぶに留まる。その隙に後衛職の冒険者が魔法を放つ。

「ウインドブラスト」「ウインドカッター」「アースクエイク」「ファイアアロー」

「しゃらくせ~!」ドガァアン!

 叫びと共に地面へと大剣を突き刺すと地面が捲り上がり壁の様になる。

「クソ!【斬岩壁】で防がれたか!」

「今の内に聞いて、あんたとあんた達、後はそこの奴と盾以外は離れて役不足」

「何だと!」

「いや、嬢ちゃんのいう通りだ!」

 私の言葉に恐らくこの中で一番の実力者である、左目の所に傷痕があるオッサンが同意する。

「あんたがアタッカー決めて」

「俺で良いのかい?嬢ちゃんはどうする?」

「多分あんたが一番強い、だから任せる。あれの狙いは私のだから私は遊撃する。
あれは物理系は強いけど魔法には弱い、リーダーは後ろの奴で何時動くか分からないから、外した奴は回復役の護衛とあれの警戒よろしく」

「ほう、分かった!直ぐに行く少し持たせろ!」

「了解」

 私はオッサンに伝えるべき事を伝え再びグロスに向かって行く。するとグロスは自分で目の前に作った壁を壊し、その勢いで残骸を飛ばす。

「ぎゃあ!」「ぐわぁ!」「ごぶっ!」

 飛ばされた残骸に当たり何人かの冒険者が、直ぐには復帰出来ない程の傷を負う、私は旋刃鼬に土や石を加えて放ち、その影に身を潜めそのまま突き進む。

「来たな!何度も食らうかよぉ!」

 グロスはそう言って旋刃鼬を避けるが、その時私は、魔法を目隠しにグロスの後ろのに回り込んでいた、そして今度は暁と宵闇に魔力を纏わせ構え、先の冒険者との攻防で傷付いた背中の傷口へと短剣を突き入れ【魔剣】スキルを使い体の内部に魔法を直接放つ。

 グパァン!

「グァ!クか、捕まえたぞ!」ゴギンッ!

「くっ!ああぁ!」

 魔法を放つ一瞬の隙に私の腕を掴むグロスはそのまま私の腕を握り潰す、しかしその直後に私の手を離し大剣で自分の後ろへと斬り掛かる。ガギィン!金属のぶつかる音と共に盾職の冒険者が攻撃を受け止める。

「ヘイトブロー」

 ヘイトブローはヘビーナイトのクラスで覚える武技で、使われた相手は使用者を攻撃したくなる物だ、これはレベルが上がるとより効果が上がる。別スキルの【挑発】を併用して使う事で更に効果も上げられるが・・・。

「ハッ!効かねぇな」

「あばっ!?」

 そう言いながら大剣を無造作に振り盾を持った冒険者を盾ごと真っ二つに斬り伏せる。

「テメェ!」

 最初からいい勝負をしていた残りの冒険者が、グロスに斬り掛かり攻撃していく、流石にこの圧力は持たないと考えたのかグロスは初めて私達との距離を取り一息付く。

「ククッ!愉しぃネェ!次はどうすンだぁ」

「クソ!化けもんだな!どうすんだ嬢ちゃん!」

「どうもこうも無い!少しづつでも削りきる!」

「たくっ!それしかねぇか!行くぞっ!嬢ちゃんに負けんなよ!」

「「「「「おう!」」」」」

グロス
HP:1500/3000
MP:600/1000

 HPは後半分、何とか行けるかな?

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
 カーチスカと呼ばれた魔族が特大の魔法を放った直後、アリシアとコロは土魔法で壁を作り上げ、逆に私達の居る部分に落とし穴の様なものを作り爆炎を回避するも、その凄まじい衝撃に皆が吹き飛ばされる。

「皆、大丈夫!」

「うっ、くっ、つぅ!」

「うっ、大・・丈夫かな」

「ゴ・・ブ~」

「アリシアこれ飲んで」

 後衛なのに防御の為に前に出てダメージの大きいアリシアに、回復薬を飲ませながら私はカーチスカに注意を払う。

「小娘共!よくも私の体に傷を付けてくれたわね!」

 まずい!そう思った私はアクアに皆の回復を頼み、一人カーチスカに向かって走り出す。
 カーチスカは、そんな私に腕と同化した鞭を振るい攻撃をしてくる。
 私は上から降るように落ちてくる鞭を左に小さく飛んで回避する。
 ハクア曰く、鞭はしなりが有る為、受け止めると逆にダメージが多くなる可能性があり、受け止めるのはどうしても回避が出来ない時のみにした方が良いらしい。
 鞭を回避すると蛇の様に動き足を狙って絡み付いて来る。私は脚と鞭の僅かな隙間に剣を差しこみ、変則的ながらパワースイングを放ち、絡み付く鞭を断ち切ろうとする。しかし、鞭の弾力に隙間を拡げる事しか出来ず、仕方がなく攻撃では無く脱出だけに留まる。
 脚を抜いた私は、そのまま真空斬りをカーチスカに向けて放ち、牽制しつつ再び疾走する。更にファイアブラストを、カーチスカの足元に着弾させ、爆炎と土埃で視界を封じこめ、その間にカーチスカの死角に回り込み、ハクアに教わった魔力を刃に纏わせる業を使い切れ味と、破壊力を上げ剣技ブラッドソードを当てHPを回復しながら攻撃を加える。
 
「まさか、その程度?」

「っ?」

 そう言い放った瞬間、カーチスカの周りに炎の壁が現れ、私の腕を焼く。

「うぁぁあぁあぁ!くっ!」

 私は僅かに逃げ遅れ肘から先を焼かれてしまう。

 ドゴォ!「うっ!」ボキボキッ!「かっはっ!」

 腕の痛みに一瞬隙ができ、カーチスカの攻撃が私の腹部を打ち据え、肋骨を折られながら吹き飛ばされてしまう。

 ズザザザザ!ドン!

 吹き飛ばされ地面を転がる私は不意に何かに受け止められる。

「お嬢ちゃん大丈夫かい?」

「かはっ!あ・・なた・・・・は・・」

「無理に喋らなくて言い!おい、回復を頼む」

「は、はい」

 私を受け止めてくれた男の人は、一緒に居た女の子に私の回復を頼み、カーチスカを見つめる。

「あっち・・・私の仲間・・・」

「大丈夫だ。向こうの子達の所にも他の冒険者が行ってる。勿論あの白いお嬢ちゃんの所にもな」

「あの魔族は、魔法・・・主体・・だから・・物理の攻・・・撃を」

「分かった。しかし参ったな、向こうには相手が二人居るから、力のある冒険者はほとんど向こうに行っちまった」

「ッ!」

「安心しなそれでも何とかなるさ!」

「あら?それは面白い冗談ね?」

「危ない!」

 カーチスカの声が聞こえると同時に、私の腕を治療してくれていた女の子を抱き締め思いきり飛ぶ!しかし、私達を狙った攻撃の爆風をまともに食らい、またも思いきり吹き飛ばされてしまう。それでも女の子を守るため衝撃に備えて私はよりきつく抱き締める

 ガシャアァァン!

 何かを破壊する音と共に衝撃が私の体を叩く、そして朦朧とする意識の中・・・・・。

(・・・・・か?)

 私は確かに頭の中に流れる誰かの声を聞いた。
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