R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる

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87.レッスン

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 翌朝、約束の時間前に皆集まった。酒場のスタッフ達にはルーカスが説明してくれたので、店はわたしたちだけだ。

  そして始める前にわたしのもう1人の伴奏者、シトロンを紹介した。サンドラの伴奏者だった彼がここにいることに皆驚きを隠せない。だが演奏の腕が一流なのも周知の事実、聞きたい事を飲み込んで練習を始めた。

  歌は2曲、安定感のあるわたしとリラは分かれて2人ずつの2組。伴奏者はわたしの方にルーカスとシトロン、リラの方に後の2人。それぞれピアノとヴァイオリンのペアだ。ある程度出来るまで酒場と練習室で進めた。

  わたしとペアを組んだ子は、ルーカス達に伴奏してもらえるのをとっても喜んでいた。・・・いつも彼女の伴奏している男性が複雑な表情をするくらい。良く言えば素直、悪く言えば・・・いや、やめとこう。

  14時を回った頃にはだいぶ完成度が高くなっていた。




  酒場で昼食を取りながら皆が興奮気味に話す。

 「歌い手2人のハモりも良いけど、伴奏2人ってのも凄く良いですね」
 「上手くハマった時が最高に気持ち良いですよね!」

  伴奏の男性たち。

 「隣に誰かがいるのって新鮮で…でも楽しいです」
 「1人の時とは全然違う楽しさがありますよね」

  歌い手の女性たち。

 「あたしも楽しいわ。でもやっぱりソニアとも歌いたい」

  リラは残念そうに言った。

 「リラ…」

  わたしも出来ればリラとも歌いたかった。

  その時、席を外していたルーカスがフェズさんを連れて戻ってきた。

 「なら…もう一曲、ソニアとリラで歌ったらどうですか?やはり2人の歌は凄かったですから…惜しい気がします。ねえ、フェズさん」
 「…そうですね。良いと思いますよ、他の皆さんが良いのなら」

  2人の援護を受けて皆の同意も得られ、急遽わたしとリラで一曲歌う事になった。早速練習、といきたいところだが先に決めなければならない事がある。

  それはフェズさんに頼んでおいたステージ衣装。

  昨夜帰ってくる前に頼んだのだ。同じ服の色違いや、似た服を持ってきてほしいと。皆に歌い手の衣装について話すと、必要性は分かってもらえたが戸惑いもみられた。

 「ソニア様の言われたような品を持ってきたつもりですが、足りなかったら仰って下さい。それと…衣装は全てレドモンド様がプレゼントしてくださるそうです」

  それを聞いて女性陣が一気に盛り上がる。

  これの支払いについて、ねだる、ねだらない、買ってやる、自分で出す、などの話し合いという名のいちゃいちゃがあった事は言うまでもありません・・・。

  チラッとルーカスを見るとバッチリ目が合う。彼はニコッ、と笑って口を開いた。

 「私からはこれを。せっかく揃いの衣装にするのですから、耳もお揃いが良いでしょう?」

  ルーカスが出したのは大量の獣耳と尻尾。様々な種類、色違いや全くのお揃いもある。

 「え…ルーカス、聞いてな…っ!?」

  こっちは知らなかったわたしは、驚いて近くに来た彼に言い・・・終わる前にサッとキスされて目を剥く。何か言おうとするが結局諦めた。

 「ありがとう…」

  小声で言うと柔らかな笑みが返ってくる。

 「ソニア!どれにする?」

  リラが楽しそうに聞く。わたしも思いっきり楽しむことに決め、皆と一緒に衣装や獣耳を選んだ。





  夕刻、最後の仕上げに行ったリハーサルを終える。それを見ていた留守番のスタッフや部下たちは盛大な拍手を送ってくれた。

  最後に歌ったわたしとリラの元にレドがやってくる。

 「良いステージになりそうだ。しっかりやれ」
 「「はい」」

  リラと2人で返事して顔を見合わせて笑う。

  そんな彼女たちをレドモンドとルーカスは微笑ましげに眺めていた。

  その後、わたしたちは広場へと移動した。











 広場に到着したのはステージが始まる少し前。今夜個人のステージがあるのはわたしとリラ、わたしは中盤、リラはラスト直前に出る。

  控え室になっている裏のタープテントは、着替えられるようにサイドシートで覆われて個室のようになっている。中はテーブルとイス、飲み物などが用意されていた。名を書いた札が貼られ、場所まで決まっている。

  わたしたちは屋台に顔を出してから来たのでリラたちとは既に分かれていた。

  レドとルーカス、わたしの3人が控え室へ向かっていると裏にいた出演者たちが騒めく。

 「ここですね」

  ルーカスが入っていく。中には先にシトロンが来ているはずだ。

 「ソニア、俺はユニオンの席へ行く。ちゃんと観ててやるから、ステージ楽しんでこい」
 「うん、ありがとう」

  答えるとグイッ、と腰を引き寄せられた。そして止める間もなく口を塞がれる。舌こそ入ってこないが、人前でするには濃厚すぎるキス。きゃあきゃあ黄色い悲鳴が聞こえて羞恥心が一気に膨らむ。

 「…っん」
 「ふ…っ」

  漸く唇を解放された時には顔がとんでもなく熱くなっていた。鏡を見なくても真っ赤なのが分かります。

  上目使いで精一杯睨むが、真っ赤になって腰を抱かれたままじゃ全く効き目などない。案の定、レドはニヤッと笑ってペロリと自分の唇を舐める。

 「じゃあな」

  そう一言だけ言ってさっさと行ってしまった。今夜も付いている黒豹の耳と尻尾を機嫌良さそうに揺らしながら。でも残ったこっちは好奇の目に曝されて何ともいたたまれない気分だ。周囲を見ないようにしながら中へ急いだ。

 「ふふ、ソニア真っ赤ですよ」

  こちらの夫も笑っている。・・・もしかして。

 「…ルーカス、分かってたんでしょ」
 「さあ、どうでしょうね?ほら、コーヒー淹れてありますよ」
 「…飲む」
 「はいはい、どうぞ。ほら、まだ時間はありますから座って下さい」

  促され、膨れっ面したままイスに座った。

  そんな騒ぎなど全く関心が無いシトロンは、ひとり楽器の準備に没頭しているのだった。

 
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