73 / 113
69.ルーカスとチビソニア(ルーカス視点)
しおりを挟むレドが会合へ出掛け、今夜はチビソニアと2人での夕食なので子供向けのメニューにした。
オムライスにハンバーグ、ポテトフライ、スープ、など。
ソニアは目の前に並んだ食事を見て、おこさまランチみたい・・・と呟いた。何でも元いた異世界では、レストランなどにこういう子供向けのメニューがあったのだとか。ここではレストランといえば高級店で大人が行く場所。大抵は子供お断りだ。彼女がたまに話してくれる異世界の話はとても興味深く、面白かった。
食後のデザートにアイスを出すと、大きな目を更に大きくして喜ぶ。ソニアは甘いものが好きだがたまにしか食べない。どうやら太るのを警戒しているようだが、彼女は華奢だ。私はもう少し肉をつけても良いと思うが勿論言わない。
私の膝の上でスプーンを握り、アイスを自分で少しずつ口へ運ぶ。余程美味しいのか、うさ耳をゆらゆらと揺らし、しっぽも小さくふりふりしている。
・・・可愛い。
たまに目測を誤って上手く入らず、口のまわりが汚れるのを気にしている。
「ソニア、ほら。拭いてあげますからこちらを向いて下さい」
「ん…」
「……はい、良いですよ」
「ありがと」
「いいえ。アイス、美味しいですか?」
「んっ、おいし」
ああ・・・このカタコトな感じが素晴らしく可愛いです。
「ごちそさまれした。…ルーカス、コーヒー…らめ?」
「コーヒーはダメです。あなたはいつもブラックでしょう?子供には飲めませんよ」
「む~…」
ぷくっと頬を膨らませるソニア。
「ふふ…そんなに可愛い顔してもコーヒーはダメですよ。明日の朝、ミルクたっぷりのカフェオレを淹れてあげますから、それまで待ってください」
「ほんと!?ありがと!」
満面の笑みとぴょこぴょこ跳ねるうさ耳が嬉しさを現している。彼女はコーヒーがとても好きで飲まない日は無いが、小さくなってから丸一日以上飲んでない。結構我慢していると思う。
「さて、お風呂に入りましょうか」
「うん」
入浴後、白地にカラフルなドット柄のタンクトップとショートパンツを着せる。バスルームの扉を開けると、ありがと、と一言言ってから先に出た。ベッドルームへ歩くソニアの後ろからついていく。
今まで抱っこばかりしていたがさっき発見したのだ。歩くリズムでうさ耳がみょんみょんと揺れ、同時にしっぽもぴこぴこ上下するとんでもなく可愛らしい後ろ姿を!
ベッドルームで風呂上がりの水分補給していると、ソニアが私をじっと見てから言った。
「…ルーカス、こどもすきなの?」
おや、見られている事に気が付いていましたか。でも子供好きとは若干違う。
「ちょっと違いますね。私はソニアだから子供の姿でも好きなんですよ」
ソニアは私の言葉を聞いて目をパチクリさせてから照れくさそうに笑う。抱きしめたいのを我慢して頭を撫でると、うさ耳がぴくぴく動いて広った。
彼女はベッドに横になるとすぐ眠りに落ちるが、昨夜の事があるので今夜は傍にいる。
大人3人で眠っても余裕の広さのベッドに、チビの体を丸めてますます小さくなって静かな寝息を立てるソニアにそっとキスした。
日付が変わった頃、レドが帰ってきた。
ベッドルームへ来るとまずソニアの顔を覗き込み、頬にキスする。
「早かったですね。飲みには行かなかったんですか?」
「ああ、何となく落ち着かなくてな」
そう言ってもう一度キスしてからシャワーを浴びに部屋を出て行った。
いつものように眠っているソニアを挟んで座る。だが何故かレドも私もワインを飲む気にはなれず、あどけない顔を眺めていた。
「当たり前なんですけど…中身はいつものソニアなんですね」
「フフッ、そうだな。今日、膝に乗せたら仕事中だと注意された」
「私も、後ろから見つめてたら子供好きかと聞かれましたよ。気付かれていないと思っていたんですがね」
「ああ、ソニアはそういうの割と敏感だな」
「ええ…何だか少し安心しました。小さなソニアも可愛いですし、ちゃんと戻ると分かっていても…」
「…情けないが同感だ」
私たちでさえこう思うのだ。ソニア本人はもっと不安だろうが、顔には出さない。魔人で28才といえば最近まで子供だった、という印象だが彼女は精神的にとても大人だ。そこが素晴らしい所であり、同時に心配でもあった。
◇
その日の深夜、ルイの部屋にはビスタが来て一緒に飲んでいた。
「え~!ズルイですルイさんだけ!オレも見たいっす、チビな姐御!」
ルイがチビソニアを見たと聞いて悔しがるビスタ。
「もの凄く可愛かったよ…。ボスの後ろに隠れてさ、顔くらい出せって言われてホントに顔だけ出してルイしゃん、って、こう…舌ったらずでさ、小さくて白いうさ耳がキョロキョロしてて、ちっちゃい手でボスの服をキュッ、て握ってて、首を傾げる仕草がまた何とも言えない可愛らしさで………何?」
ベラベラとその時の様子を語るルイを、ビスタが若干白い眼で見る。
「姐御なんですから可愛いのは当然ですけど…ルイさん…もしかしてロリコン…?」
「ち、違うよ!そのくらい可愛かった、って事だよ!ビスタだって一度会えば僕の気持ちが分かるさ」
「それですよ」
「どれだよ」
「オレも会ってみたいです!直談判したら会わせてくれますかね?」
「…どうかな…ルーカスさんから話を聞いた限りだと…必要以上には人に会わせない感じだったよ」
「え~!ズルイですルイさんだけ!オレも見たいっす、チビな姐御!」
「もの凄く可愛かったよ」
振り出しに戻る2人。ビスタはチビソニアに会えるでしょうか?
・・・おそらくムリですよ。
53
お気に入りに追加
5,936
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる