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66.世話上手なレド、甘々なルーカス
しおりを挟むあれからフェズさんが山ほど子供服や必要そうなものを持って来てくれて、いつものショッピングが始まった。たった数日間なのだからそんなに要らない!と今までで一番必死に訴えたが、よしよし、と頭を撫でられて軽くあしらわれただけだった。
フェズさんが帰るともう夜。ルーカスは名残惜しそうにしながら残っている店の仕事を片付けに行った。お風呂は待っててくださいね!と念を押してから・・・。
今はレドが作ってくれた夕食を、彼の膝に座って食べさせてもらっている。・・・大人用の食器は大きくて上手く使えなかったんです。オマケにイスの上に立たないとテーブルに届きません。
数時間この体で過ごしてみて分かったのは、自分で出来ない事がたくさんあること。何せドアひとつ満足に開けられないのだ。それというのも、この部屋が長身のレドに合わせて造られているからだ。天井も高いしドアも大きい。ソファーさえ座高の高い彼に合わせて大きめに造られていた。彼の股下よりも身長が低いチビのわたしは、背伸びしてもドアの取っ手にやっと手が届くかどうか。当然台があっても蛇口には届かず、ひとりでは水も飲めない。何をするにも手を借りている・・・いえ、正直に言いましょうね。全てやってもらってる状態ですよ。
「…おなかいっぱい」
「もういいのか?ならミルク飲むか?」
「うん…」
「ほら、落とすなよ」
小さなカップにミルクを半分ほど注いで渡してくれる。飲んでる間も手が添えられていた。
「…レド、なれてるね」
彼と子供の世話なんて全然結びつかないが、そつなくこなしていた。
「ん?ああ、昔は先代に言われてよくガキどもの世話をさせられたからな」
「そうなんだ…」
・・・レドの昔の話、初めて聞いた気がする。これから少しずつ話してくれるかな。そう思いながらレドの顔を見上げていると、彼がフッ、と笑う。
「…そのうち機会があれば話してやるよ」
「…うん」
「さて、片付けるからここで大人しくしてろ」
「はい」
レドはわたしのおでこにちゅっ、とキスしてから席を立った。
◇
リビングへ移動し、一休みしているとルーカスが帰ってきた。
「ソニア~。良い子にしてましたか?体に異常はありませんか?」
レドからわたしを受け取り、抱っこして頬をすりすりする。
・・・ルーカス、エドガーを部屋に戻してからずっとこんな感じだよね。もしかしてロリコ・・・イヤイヤ、まさかね。
「おかえりルーカス。わたしはだいじょぶだよ」
「そうですか、良かったです。ではお風呂に入りましょうね~」
ルーカスが頭と体を洗ってくれる。・・・鼻歌交じりで。
彼は、はいバンザイして~、とか、目を瞑ってるんですよ~、とか終始わたしを子供扱いした。物凄く子供に甘いパパみたいで、メロメロ状態を見事に体現していた。
レドが呆れ顔をしているけどあなたも似たようなものですよ?わたし、チビになってからまだ自分で歩いていませんからね。ソファーに座っている時でさえ膝に抱えられるんですから。赤ちゃんじゃないんだからひとりで座れるのに。
・・・嬉しいけど。
お風呂を終えてベッドルームへ移動する。いつもならワインを飲むんだけどな・・・。
しゅんとしているとレドがフルーツジュースを持って来てくれた。
「良いワインを用意しておいてやるから、チビの間はこれで我慢しろ」
「ありがと」
カップに半分ほど入ったジュースを飲み終える。
「…もうしゅこしのみたい」
・・・すこし、が、しゅこし、になってしまいましたよ・・・。
「フフッ、駄目だ。お漏らしするぞ」
「む~…」
「ああ、駄々をこねるチビソニアも可愛いですねぇ…」
ルーカスがニヨニヨしてわたしの頭を撫でる。やっぱり彼は少し変態チックだ。
「お子様は寝る時間だぞ」
「…はぁい」
ベッドへ乗せられ、寝る前に2人に言う。
「レド、ルーカス、めんどうかけて、ごめんね?…ありがと」
わたしをひとりに出来ないという事は、戻るまで常に誰かに一緒にいてもらわなければならない。彼らの事だ、他の人には任せずなるべく自分たちでみようとするだろう。きっとわたしが寝てから夜中に仕事をすませるのだ。それが分かっているから申し訳ない。
2人は目をパチクリさせてから柔らかく笑った。
「いいさ、お前の所為じゃない」
「そうですよ、そんな事気にしないで下さい」
「レド…ルーカス…」
2人の言葉に心がほわっとなる。しかし・・・
「素直に世話させてくれるソニアは、いただきたくなるくらい可愛いですよ」
「それに、戻ったら身体で返ししてもらうから心配ない」
・・・台無し!
ルーカス、チビのわたしをいただいたら犯罪だから!
レド、身体でって、これ以上何をさせるつもりなの!
と、言いたい。でもきっと口が回らない。ちゃんと言える気がしない。
結局何だか複雑な表情になるわたしです。
◇
ソニアが眠った後、いつもなら2人もワインを飲んでいるが今夜はまだ仕事がある。小さな頬にそっと口づけを落としてベッドルームを出て行った。
リビングで話す2人。
「寝ぼけて起きてこなければいいのですが…」
「…今夜は起きるかもな。途中で様子を見に来る」
「私もなるべく早く終わらせます。後少しですから」
「ああ」
会話を手短かに終わらせ、それぞれ仕事へ入った。
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