58 / 113
54.儀式
しおりを挟む遥か昔、月の満ち欠けと魔力は密接に関係していると信じられていた。その頃から執り行われてきた儀式は、それが迷信だと解明された今も変わらず受け継がれている。魔人同士の結婚になくてはならないもの。
シャハールを一望できる高台。青と黄、2つの満月の月明かりが淡く3人を照らしている。
レドモンドがソニアのブラウスのボタンを外し、胸元を開く。男2人も上半身裸になり、3人向かい合って魔人の印を互いに晒す。
レドモンドは左胸、ルーカスは右胸、ソニアは真ん中。胸に集まった印、これは偶然か、それとも運命か。
小さなナイフを取り出し、レドモンドが指先を切る。そして流れた血を一滴、ソニアの印に垂らす。
と。
胸の谷間にある淡いピンクの印が光りだし、ヴェールのようにソニアを包んだ。その幻想的な光景は数秒間で終わり、もとに戻った。
次にソニアが血を一滴、レドモンドの印に垂らす。すると同じように光に包まれ、すぐに収まった。
2人は抱き合い、短い口づけを交わす。
そして今度はルーカスが血を一滴、ソニアの印に垂らす。光のヴェールが消えると彼女もルーカスの印に血を一滴垂らした。
ルーカスと抱き合い、短い口づけを交わす。
最後にレドモンドとルーカスが、互いの印に血を垂らした。光が月明かりにとけるようになくなる。
3人は互いに手を取り、穏やかに微笑みあった。ソニアの瞳からひとすじの涙が頬を伝っておちた。
他人の血を自分の印に垂らす。それは魔人にとって相手への絶対的な信頼の証。
これは――――悠久ともいえる時を共に生きることを誓い、深淵の絆を得るための儀式。他にも恩恵があると言われているが、詳しい文献などは一切残っていない。真実は当事者のみぞ知ること。
わたしは儀式を終えた瞬間から涙が止まらなくなってしまった。2人との強い絆を感じ、本当の意味でひとつになれたんだとわかって・・・愛しさと嬉しさが溢れてどうしようもなくなった。
只々涙するわたしをレドとルーカスの優しい眼差しが包む。そしていつものように左右から頬にキスし、その舌で拭ってくれた。
「「ソニア…愛してる」」
「レド…ルーカス…わたしも愛してる」
3人で愛を囁き、唇をあわせた。
こんなに急に儀式を行うことになったのはシェストや盗賊の一件があったから。前々から準備だけは進めていたが出来るかどうかとても微妙だった為、わたしには言わなかったのだとか。年に一度しかないからこの夜を逃せば1年後だ。延期になったらわたしが悲しむかもしれないと思った、と後から聞かされた。
・・・ああ、こんなところにも愛が溢れてる。彼らにの優しさがしみて幸せがまた膨らんだ。
41
お気に入りに追加
5,918
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
召喚されたのに、スルーされた私
ブラックベリィ
恋愛
6人の皇子様の花嫁候補として、召喚されたようなんですけど………。
地味で影が薄い私はスルーされてしまいました。
ちなみに、召喚されたのは3人。
2人は美少女な女子高生。1人は、はい、地味な私です。
ちなみに、2人は1つ上で、私はこの春に女子高生になる予定………。
春休みは、残念異世界への入り口でした。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる