R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる

文字の大きさ
上 下
44 / 113

41.小さな不安

しおりを挟む

 工事を開始して3日後、改装が無事終了しました。本当に3日で出来ました。凄い大人数でやってましたよ。

  改装された点は、まずはベッドルームと旧物置部屋の間の壁を取っ払って広くなった。そしてその奥に部屋が2つ増えた。1つは物置部屋、もう1つは広~いウォークインクローゼットだった。

 「急がせてすまなかったな。助かった。何かあったらいつでも言え」
 「今度店に来てください。ご馳走させていただきますよ」

  レドとルーカスが職人さん達に声をかける。

 「ありがとうございました。お疲れ様でした」
わたしもお礼を言った。

 「いえ、仕事ですから!」

  ビシッと整列した彼等のリーダーはそう答えると意を決したように続けた。

 「ボス!早速ひとつお願いがあるんですが、聞いていただけますか!」
 「言ってみろ」
 「はい!…ソニア様の歌が聞きたいです!」

  ・・・え?

 「もう乾期に入ってしまったので、寒冷期まで聴けないんですよね!?お願いします!」
 「「「「「お願いします!!」」」」」

  全員が一斉に頭を下げた。

 「…どうします?レド」
 「そうだな…ソニアはどうだ?歌うのはお前だからな、お前が決めろ」
 「え、わたし?」
 「ああ」

  皆がわたしに注目する。

  ・・・3日で、なんて無理言って頑張ってもらったのだ。断れるわけがない。

 「分かりました」

  こうしてわたしは急遽1曲歌うことになったのだった。











 歌の後、職人のリーダー、ヘリオトさんが残ってレドに声をかけた。

 「ボスのお耳に入れておきたい話があるのですが」

  今までとは打って変わった深刻な表情にレドとルーカスが視線を交わす。

 「あちらで話しましょう」

  ルーカスの言葉でリビングへ移動し、ソファーに腰を落ち着けるとヘリオトさんが口を開いた。

 「部下が北東にある山で新しい足跡を見つけたんです。半年くらい前に見つけた山なんですが、今回初めて木を切り出しに行ったんです。場所的に考えてもオレら以外は誰も使っていないはずなんですが…」

  そこは他の街からは離れすぎているし、近くの村も使っていない事は確認済みだという。

 「木を切られた形跡は?足跡は幾つだった?」
 「切られた跡はありません。足跡はそんなに多くはなかったそうで…次の日には消えていたと」
 「レド…もしや」
  ルーカスがレドを見る。
 「…可能性はある。見つけたのはいつだ?」
 「6日ほど前です。昨夜、木も切らずに帰って来た部下から報告を受けました」
 「ヘリオト、その山は暫く使うな。調査に入る」
 「実際に見た部下と一緒に閉店後もう一度来てください。詳しく聞きます」
 「かしこまりました」

  ヘリオトさんは頭を下げてから帰っていった。

  ・・・いても良いって言われて一緒に聞いてたけど・・・その足跡が何に繋がるのか、わたしにはまだ分からなかった。




  その夜、約束通りヘリオトさんが足跡を目撃した部下と一緒にやってきた。部屋にはビスタさんも呼ばれ、地図を広げながらの詳しい説明が行われた。

  終了後、ビスタさんは少数の部下を連れて山へ調査に向かった。

  ・・・ビスタさんは魔人でした。

  ・・・・知らなかったよ。だって前に治療した時全身見たけど印はなかったし。あ、パンツの中は見てない。・・・お尻にでもあるのかな?

  3人になってから、何故調査をするのか教えてくれた。

 「その山には、盗賊のアジトがある可能性が高い」

  盗賊は頭のグループが本隊、腹心の部下達がいくつかの小部隊に分かれている。それぞれの隊ごとにアジトがあり、そのアジトは不定期に変わる。古いアジトに移る事もあれば、新しい場所を探す場合もある。

  今回の場合、小部隊が新しくアジトをそこへ移したかもしれないのだ。

  アジトの場所や探し方には何の規則性もなく、奴らの居所を掴むのは至難の技だ。見つけたとしても、頭と腹心の部下達は力ある魔人で、下手に手を出せば返り討ちにあう。その為、盗賊を討つには熟考が必要になる。これだけ聞けば不利に感じるかもしれないが、魔人の数や総力でいえばこちらが有利なのだ。腹心までは辿り着かなくとも盗賊を捕まえてもいる。ただ守るべき場所が多くある為、総力を結集して、とは中々いかないのが現実。今は膠着状態が続いている。

  一通り説明を受けて息を吐く。

  アジトが見つかれば捕まえるチャンスだが、危険も伴う。知っている誰かが怪我したり・・・死んだりするかもしれない。知識として知ってはいても、実際身近でこんなことが起こった経験などない。わたしは不安と恐怖を感じずにはいられなかった。・・・情けない。守られるだけは嫌だと思った。彼らの傍にいると誓った。完全開眼した時はこれで自分も役に立てると思った。なのに・・・。

 「…怖いか?」

  レドに聞かれてコクン、と頷く。すると2人は向かい側のソファーからわたしの隣へきて座る。

 「怖くて当たり前、誰だって同じだ。ただ…それを抑えるのが上手くなるだけでな。最初から怖くない方がおかしい」
 「そうですよ。それにあなたはまだ28でしょう?大人になったばかりだ。焦らなくて良いんです。あなたが共に居てくれるだけでも私達には救いです」

  両側から肩を抱いてくれる。

 「救い…?」

  わたしが?

 「ああ、お前の存在が俺たちを明るく照らす。将来への希望になる。…生きる事への執着に繋がる。白魔法だってある。今までは救えなかった命が、その魔法で救える。ビスタはお前がいなかったら恐らくあのまま目覚めなかった」

  ビスタさんが・・・。

 「「ソニア」」

  2人がわたしの顔をのぞき込む。

  わたしって、なんて幸せ者なんだろ。こんなに自分を必要としてくれて、愛してくれている人達がいて。わたしは、自分に出来ることを頑張ろう。うん。

 「ありがとう…レド、ルーカス」
 「…そこは愛してる、だろ?」
 「同感です」
 「ふふっ、もう…レド、ルーカス、愛してる」

  笑ってそう言った途端、レドの唇が迫ってくる。それがわたしへたどり着く前に迎えにいった。小さく何度も啄ばんでは角度を変え、頬にキスしてくれたルーカスに交代する。2人の手が着ていたワンピースを脱がし、ブラも外されてショーツだけにされた。胸を片方ずつ弄られてくぐもった喘ぎ声を漏らしてしまった。

 「ん”ん”っ…んぅ…っは…あぁん、お風呂、入りたい…」

  唇が解放されてそう訴える。

 「駄目だ、もう待てない」
 「そうです、ダメです。洗ったらソープの香りであなたの匂いが薄くなる」

  なんで即否定?それにルーカス、その発言なんかマニアックだよぅ。

 「…耳と尻尾、見せてみろ。そうしたら風呂に入れてやる」

  レドの発言にきょとん、となってしまう。しまっているのが当たり前で、存在を忘れてた・・・。

 「え…耳と尻尾?…見たいの?」
 「「見たい」」

  即答・・・。確かにバニーちゃんみたいで可愛いけど・・・交換条件出すほどの物でもない気がするよ。まあいいか。

 「いいけど…」

  わたしは久しぶりにうさ耳と尻尾を出した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

処理中です...