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34.逆ハーレムへカウントダウン
しおりを挟む完全開眼を果たしたといっても、普段は閉じているので以前とあまり変わりはない。だが教えてもらった通り、閉じても全く使えない訳ではない。集中すればある程度の事は出来た。ステージに立つと集中力が高まり易く、歌いながらつい開きそうになる。
気を付けていたのだが・・・今夜は新しい歌にすっかり没入してしまった。
歌い終えてやっとやらかした事に気が付き、慌てて閉じたがもう手遅れ。そりゃそうだ、前半から全開だったのだから。
お客さんの視線がいつも以上に熱い。とにかく礼をして裏に入ってしまえば・・・。そう思って礼をし、頭を戻した。するとお客さんが次々と立ち上がって拍手してくれる。
拍手は有難いのですが・・・ジリジリと迫って来ているような・・・。こ、これはちょっとばかりコワイですよ?
早く裏へ行こうとステージを降りた途端、ひとりの若い男性が目の前に立ちはだかった。
「ソ、ソニアさん、すす、好きです!!握手して下さい!!」
ホール中に聞こえるような大声で叫び、ガバッと手を差し出す。それを見た他の人もあっという間に集まり、囲まれてしまった。
な、何だかみんな目が血走ってるよぅ…どど、どうしよう!私のバカ!!
その時
「触るな!!」
2階から突き刺さるような鋭い声と、私を庇う背中。
皆ピタッと動きを止めた。
「…歌い手に手を触れてはいけません。常識、ですよね?お客様」
庇ってくれたのはピアノを弾いていたマスター。声色は優しいのに、何故か背筋が凍るような気がする。お客さんどころかホールに居たスタッフまで微動だにしない。
「全員、席に戻れ」
言ったのはレド。コツ、コツ、と革靴の音をさせながらゆっくりと降りてくると、私の隣に立った。マスターも隣に並び、2人に挟まれる。
「…出入り禁止にされたいか?」
握手を、と迫った若い男性を色の無い瞳で見据える。
客商売とはいっても、ここは依頼や情報も扱っている。店に迷惑をかければ即刻出入り禁止だ。お客もそれを承知の上で来ている。
「い…いえ…すみませんでした。に、二度としません」
男性はブルブル震えて真っ青になっている。
「…ならいい。他の皆も分かってるな?歌い手に店で手を出すのはタブーだ」
皆声も出さずに首を大きく縦に振る。
「よし。…ソニア、来い」
そう言ってマスターに目配せすると先に歩き出す。私は急いで後を追った。マスターはルイさんたちに声を掛けてから付いてきた。
◇
裏へ入った途端無言で抱き上げられる。
「きゃ…レ、レド…」
呼んでも無表情を崩さない。初めて目にする彼の私への怒り。マスターも黙って歩く。
私室のリビングのソファーにドサッ!と降ろされ、立ったままのレドに見降ろされる。
「…気を付けろ、と言ったはずだが?」
「ごめん、なさい…」
冷たい声に身体が震える。
「もし、俺もルーカスも居なかったらどうなってたと思う」
「そ、れは…」
あの血走った目を思い出すと・・・。
「握手だけで済むと思っているなら甘いですよ」
マスターの笑みも怖い。
「ソニア、お前は自分の魅力を少しも理解していない」
怒りを宿していた漆黒の瞳に欲望が生まれる。
「歌で魅了されている所へお前の甘い魔力をモロに浴びて…余程精神力が強くなければ耐えられるもんじゃない」
レドが隣に座り、ドレスの上から腿を撫でる。熱を誘う指の動きに身体が跳ねた。
「ッ!」
その光景を見ていたマスターが反対隣に座る。身体にはふれず、はちみつ色の髪を弄ぶ。髪の匂いを嗅ぐ仕草にぞくりとする。
「…こんな風にあちこちから触られて、逃げられなくなる」
耳元で囁き、ねっとりと舌でねぶる。もう片方の手が後ろへ回り、お尻を掴む。
「ふ…あ…ごめ、なさ…許して」
マスターが居るのに・・・怒られてるのに・・・抑えようと思っても、身体の奥から熱が広がって言うことを聞いてくれない。
「反省、したか?」
「っん…はい…」
「許してほしいか?」
話している間も手は身体を弄り、私を追い詰めていく。
「っは…は、い」
視界が滲む瞳でレドを見る。
「どうする?ルーカス」
「そうですねぇ…では、これからは私も名前で呼んでくれませんか?」
そう言って頭を撫でる温かい手の持ち主の方を向く。
「なまえ…?」
「ええ、ルーカス、です。はいどうぞ」
いつもの手と笑顔に安堵して言われるがまま名を口にする。
「ルーカス…」
「はい。よく出来ましたね、ソニア」
呼び捨てされたの初めて・・・。
満面の笑みで呼ばれて心がほわっ、となった。
「次は俺だ」
レドの声がしたと思ったら顎を掴まれて向きを変えられ、唇を奪われる。口内を蹂躙され、すぐに息が上がって酸素を求めるが放してくれない。苦しくてレドの服を掴むと、もう片方の手をマスター…ルーカスに握られた。
「んっ、ンん…ん”ぅ」
見られてる・・・だめ・・・こんなの、だめ、なのに・・・。
激しいキスに頭の中まで官能に侵され、愛撫されるように手を撫でられ、弄られてもいない秘部から蜜がとろりと零れる。ショーツが濡れはじめ、口の端から唾液が流れて首筋を伝う。
漸く解放されて喘ぐように浅い呼吸を繰り返す。
・・・2人にこんな事されて感じるなんて・・・わたし、どうなってるの・・・?
服を掴んでいた手をレドに握られる。左右の耳元で同時に息づかいを感じた。
「「ソニア、愛してる」」
その声はヘッドホンをしているみたいに脳に直接響いて、私に痺れるような快楽を与えた。その悦びに膣がきゅうっ、と締まって淫らな声が漏れてしまう。
「っんあぁ…」
もう、だめ・・・。
考える事を放棄した途端、私の意識は落ちてしまった。
「フッ、気を失ったか…」
レドモンドがそっと溢れた涙を指で拭う。
「そのようですね、なんて可愛らしい…」
握った手の甲に柔らかなキスを落とすルーカス。
「よくありますか?」
「いや、最初の時以来だ。半日責めてもイキ落ちしない。へばって動けなくなるがな」
「半日レドに責められてもですか…その辺りは流石ハーフ、というところですね」
「ああ、だがソニアはそれだけじゃない。最高の女だ」
彼に抱かれてイキ落ちしない女は初めてだった。激しく突いても嫌がるどころか悦びに震え、レドモンドの我が儘にさえも快感を見いだす。
「ふふ、妬けますね。…脈アリだと思いますか?」
「あるな。じゃなきゃ気を失ったりしない」
「…そうですか」
レドモンドの答えにホッとするルーカス。
2人でしばらくソニアの寝顔を見つめていた。
レドモンドが頬を撫でながら呟く。
「念のため、もう少しお仕置きが必要だな」
「そうですね…天真爛漫な所は彼女の魅力ですが、こういった時には困りものです」
「同感だ」
天真爛漫・・・本人が聞いたら全力で否定しそうな事を真顔で言い合う2人だった。
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