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26.怒濤の買い物ラッシュ
しおりを挟む結局フェズさんの店で服の他に靴やアクセサリーなどを大量に買ってもらった。お前も選べ、と言われて私が1つ探している間にレドは3つも4つも選んで店員にドンドン渡していた。その調子で他も選んでいく楽しそうな彼の顔を見ていたらもう止める気になれず、素直に買ってもらう事にした。
次に行ったのはなんとランジェリー専門店。
女性の店員さんはレドの来店に目を見開いて驚き、狼狽えていた。数人いた他のお客さんは買わないで帰っちゃうし、私は心の中で平謝りしていた。普通の男性ならランジェリーは一緒に見ないだろう、と思うのは偏見でしょうか?
お前が選ばないと俺の好みで選ぶぞ、と言われて急いで探すが・・・またもやレドが店員さんを呼び、次々とブラやショーツは勿論、ベビードールやガーターベルトまで渡している。店員さんはカチン、と固まったまま品物を受け取っている。レドを止められない私を許してください。
傍に行くと私の手にあった物も渡して会計を頼んだ。丁寧に畳まれていく品物の、刺激的過ぎるラインナップに思わず頭を抱えそうになった。でも中には可愛らしい物もあって、それは欲しい、と思ってしまった。見事に彼の術中に嵌まった気がしてならない。
最後に頭だけは下げて店を出た。売り上げは大きかっただろうが、その分削られたであろう店員さん達の神経が心配になりました。
◇
少し休もう、という事でカフェに入った。
「ここはコーヒーが美味いし焼き菓子も評判良い。一緒に頼むか?」
「うん、食べたい!」
レドがボーイを呼んで注文する。一見落ち着いて見えるボーイも、周囲のお客さんと同じく彼の隣に座る私をチラチラ見ていた。
コーヒーと焼き菓子が運ばれて来る。焼き菓子はアーモンド入りのビスコッティ。コーヒーを少し味わってからビスコッティを食べる。くどくなくて甘さ控えめ、アーモンドの食感も良くて美味しい。
「美味しい。レドも食べてみる?甘さ控えめだよ」
彼は甘いものは殆ど食べない。苦手ではないが食べたいと思わない、と前に言っていたが一応聞いてみる。
「食わせてくれたらな」
私の言葉にニヤニヤして答えるレド。
・・・・やられた。自分の迂闊さを呪う。ここであれをやれと?公衆の面前で?
彼に食べさせる時、あ~ん、は必須事項と決まっているのだ。
「ム、ムリして食べなくてもいいよ?」
事態の回避を試みるが、肩にあったレドの手が腰に滑り降りて引き寄せられる。
「…食わせてくれないのか?」
耳元で言われて観念する。ここでこれ以上されたら恥ずかしい、では済まなくなる。
「うぅ…イジワル。…あ~ん」
「あ~ん」
レドが私の手からパクリとお菓子を食べる。・・・もう皆の視線を集めまくりですよ。穴が開きそうです。私は満足そうな表情を浮かべる彼を赤くなりながら睨むのだった。
カフェを出てやっと視線から解放されるも、私はちょっと膨れています。
「どうした?」
理由など分かっているくせに聞く。
「2人っきりでも恥ずかしいのに…」
「そうか?俺が食わせてやった時は全く恥ずかしそうじゃなかったがな」
「むぅ~…」
「フフッ、膨れるな。あそこが次の店だ」
彼の示した店を見て思わず声を上げる。
「えっ!」
そこはいかにも高級そうなドレスの専門店。店構えも煌びやかで目を引く。私は殊勝な女じゃないが、ここはさすがに買ってもらうには申し訳なさ過ぎる。
「ソニア?」
「レド…これ以上買ってもらうのは…ちょっと」
「何故」
レドが目を眇める。
「だって、凄く沢山買ってもらったし…申し訳ないっていうか、その…」
顔を見られなくて俯いて言うと、繋いでいた手をぐんっと引かれて抱きしめられた。指で顎を持ち上げられ、息がかかる程近くで見据えられる。
「レ、レド…見られてる」
行き交う人の目が気になって小声で訴えるがスルーされる。
「俺の楽しみを奪うのか?」
「…楽しみ?」
「ああ、俺好みの恰好で喘ぐソニ…」
「わわわッ!往来でそんな事言っちゃいけません!」
慌ててレドの口を手で塞ぐ。
喜ぶ顔が見たいとか、せめてその服を着た私が見たいとか、色々ありそうなのに何でそこかね!?
「フフッ、俺は正直に言っただけだぞ?…ソニアの為だけに買ってる訳じゃない。願望を叶える為だ…いいな?」
私の手は逆にレドに捕らえられた。
「はい…」
負けた気になるのは何故でしょう・・・。とか思っていたら。
「きゃあ!」
抱き上げられました!お姫様抱っこです!何故に!?
「レド降ろして!」
「ダメだ。言う事を聞かなかったお仕置きだ」
彼は堂々とそう言い放つと私を抱っこしたまま店内に入ってしまいました・・・。
中は外の騒ぎを窺っていた女性店員さんたちが慌てて持ち場へ戻っている最中。
「い、いらっしゃいませ」
「とりあえずこいつに似合いそうなのを何着か見せてくれ。小物も揃えて」
「かしこまりました」
店員さんは頭を下げてドレスへ向かった。
「ドレスはこれから必要になる。早めに何着か揃えておかないと急ぎの場合に困る事になる」
「え…そう、だったの?」
「願望を叶えるのも本当だ」
これから必要に・・・パーティーとか?
ここに貴族はいないが、やはり貧富の差はかなりある。富豪の屋敷ではパーティーが開かれる事は知っていた。そうか、その家と繋がりがあればレドも呼ばれるんだよね。彼が私を伴って行くのなら、きちんとした身なりでないと恥をかかせるかもしれない。
何も考えないでドレスいらないなんて言うんじゃなかった。謝ろうかと思った時、店長らしき40代位の女性が出てきた。
「いらっしゃいませ、レドモンド様。奥へどうぞ」
「ああ」
レドが歩き出す。・・・ハッ!しまった!歩く前に降ろしてもらえば良かった・・・。
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