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15. ドジっ子ガイ
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ガイが居住スペースの空き部屋に入ってから15日ほど経過した。最初は2、3日のはずだったんだけど、その予定は伸びに伸びている。それは何故かというと・・・
ドン!
ガッシャーン!!
バシャッ!
「きゃあ!」
「わっ!ソ、ソニアちゃん!大丈夫!?」
仕事の休憩中、食後のアイスコーヒーを飲んでいた。隣にいるのはルイさん。そこへガイが昼食のトレーを持ってやってき来た。その時点で多少嫌な予感はしたんだよね。だって余所見してるんだもん。でもいくらガイがドジっ子だからって、1日に何回も粗相したりしないでしょう。
そう思ったさっきの自分を叱りたい。だって、彼が乱暴に置いたトレーが私のグラスにぶつかって・・・ユニフォームのカットソーがコーヒー色になりました。あぁ・・冷たい。それにコレ、落ちるかなぁ?
「ガイ!もっと静かに置けって言っただろう!」
普段温厚なルイさんが珍しく声を荒げる。
「ス、スンマセン!」
「何で僕に言うんだ。謝るならソニアちゃんだろう」
「…スンマセン」
ああ、ふてくされてる。何で私に対しては不服そうに言うのかね?
「ハハ…うん、気を付けてね。私、時間が無いの。悪いけどここの片付けお願いするね。…ルイさん、私着替えてきます。これもちょっと洗いたいので少し遅れるかもしれないと伝えてもらえますか?」
「ああ、分かった。大丈夫だよ、今暇な時間だし」
「ありがとうございます」
ドジっ子ガイくん。君はあれか?私に何か恨みでもあるのかね?まさかあの時抑え込んだのを根に持ってるのかな?全く・・・何でいつも私の前でドジるかな。
私はブツブツ言いながら部屋へ向かった。
そう、原因はガイのドジっ子ぶりにある。
あの翌日、ガイは店の手伝いを申し出た。彼なりに反省して頑張っているんだな、と思えたのは初日だけだった。
彼は言動が粗雑だ。加えてドジっ子だ。ホールじゃなくても、店を手伝うのにそれではいけないとマスターに教わった・・・はずなのだが、直る気配はない。皿やグラスをいくつも割って調理場を2日で移動になった。掃除をさせれば廊下が水浸し、店の外に水を撒いてもらえば水たまりは出来るわ通行人に掛けるわ。よそ見してコケ、さっきのように2次災害を引き起こしたりもする。
マスターの話によると、調査などの仕事は一応見習いとしての合格を貰っている。失敗もここまで多くない。だがここでは酷い。普段店の従業員の事はマスターに任せているオーナーでも、ガイは余程目に余るようで何度も部屋に呼ばれお叱りを受けている。
ガイは今、再教育されてる最中なのだ。
私は手早く着替えて汚れた服を洗いに行った。ここの洗剤も悪くはないがやはり地球、というか日本にあったものとは差があった。おそらくキレイにはならないと思う。替えのユニフォームを貰っておいて本当に良かった。でなければ私は今頃、ホールに出られないか私服で出る羽目になっただろう。まあ、今までシミが出来なかったのが不思議なくらいだったんだけどね。何故かガイの失敗に巻き込まれるのは私がダントツで多いのだから。
洗い終えてため息を吐く。やはり汚れはうっすらと残ってしまった。オフホワイトにコーヒーのシミはとても目立つ。どうしよう?漂白剤は無いし・・赤ワインなら塩と熱湯で落ちると聞いた事があるが、あと思い当たるのは酢と重曹くらい。ここでの酢はワインビネガーだから却下だね。重曹なら調理場で分けてもらえるかも。でも染み抜きするには時間が無さ過ぎる。仕方ない、仕事が終わってからやろう。
私は服を干して仕事に戻った。
◇
その夜、私はお風呂に入る前に染み抜きをしていた。
うぅ~ん・・・だいぶ薄くはなったけど・・よ~く見たら分かるよね?これはホールでは着られないな。染みの付いた服でお客さんの前に出る訳にはいかない。仕方ない、マスターにお願いしてもう1枚用意してもらおう。ユニフォームは支給品なので本当はタダだが、今回は3枚目だから支払わなきゃだね。
明日の朝マスターに頼もう、と考えながら服を脱ごうとした時。
ドガーン!!
「うひゃあ!!」
突然の爆裂音に飛び上がるほど驚く。
ビビ、ビックリしたぁ~。何事?襲撃?とか物騒な事を想像しながらそっとお風呂場から顔を出す。
「まぁたお前かぁ!ガイ!!」
聞こえた怒鳴り声はフロアサブリーダーのコンゴさんだった。巨体の上にちょこんと乗ったハゲあた・・コホン、スキンヘッドがなんとも面白・・いや、ユニークな人だ。
お風呂横の裏口からコンゴさんがガイを中へ引っ張ってきた。近くにいたルイさんが私に気が付いてこちらへ来る。
「ソニアちゃん、驚いただろう?大丈夫だった?」
「はい、大丈夫です。あの、さっきの音は?」
「それがさ、ガイが給湯魔石を壊しちゃって」
・・・え、壊した?なら、もしかして・・・
「入る前で良かったよ。これが直らないとお湯がでないからね」
お湯が出ない・・・お湯が出ない・・・お湯が・・・ああ・・頭の中でルイさんの言葉がループする・・・。
ショックで呆然とする私。
・・・床も壁も綺麗な白い石が敷き詰められた広いお風呂場、可愛い猫足バスタブ、シャワー完備。もちろん男湯よりだいぶ狭いが女は私1人なんだからこれで充分だ。というか充分過ぎるくらい素敵なお風呂なのだ。私が1日で一番楽しみにしている癒しの時間が・・・空間が・・・
がくっ。
「ソ、ソニアちゃん!?」
突然項垂れた私に目を丸くするルイさん。
その時
「おい、何事だ」
ドスの利いた声と共に、オーナーとマスターが現れた。
ドン!
ガッシャーン!!
バシャッ!
「きゃあ!」
「わっ!ソ、ソニアちゃん!大丈夫!?」
仕事の休憩中、食後のアイスコーヒーを飲んでいた。隣にいるのはルイさん。そこへガイが昼食のトレーを持ってやってき来た。その時点で多少嫌な予感はしたんだよね。だって余所見してるんだもん。でもいくらガイがドジっ子だからって、1日に何回も粗相したりしないでしょう。
そう思ったさっきの自分を叱りたい。だって、彼が乱暴に置いたトレーが私のグラスにぶつかって・・・ユニフォームのカットソーがコーヒー色になりました。あぁ・・冷たい。それにコレ、落ちるかなぁ?
「ガイ!もっと静かに置けって言っただろう!」
普段温厚なルイさんが珍しく声を荒げる。
「ス、スンマセン!」
「何で僕に言うんだ。謝るならソニアちゃんだろう」
「…スンマセン」
ああ、ふてくされてる。何で私に対しては不服そうに言うのかね?
「ハハ…うん、気を付けてね。私、時間が無いの。悪いけどここの片付けお願いするね。…ルイさん、私着替えてきます。これもちょっと洗いたいので少し遅れるかもしれないと伝えてもらえますか?」
「ああ、分かった。大丈夫だよ、今暇な時間だし」
「ありがとうございます」
ドジっ子ガイくん。君はあれか?私に何か恨みでもあるのかね?まさかあの時抑え込んだのを根に持ってるのかな?全く・・・何でいつも私の前でドジるかな。
私はブツブツ言いながら部屋へ向かった。
そう、原因はガイのドジっ子ぶりにある。
あの翌日、ガイは店の手伝いを申し出た。彼なりに反省して頑張っているんだな、と思えたのは初日だけだった。
彼は言動が粗雑だ。加えてドジっ子だ。ホールじゃなくても、店を手伝うのにそれではいけないとマスターに教わった・・・はずなのだが、直る気配はない。皿やグラスをいくつも割って調理場を2日で移動になった。掃除をさせれば廊下が水浸し、店の外に水を撒いてもらえば水たまりは出来るわ通行人に掛けるわ。よそ見してコケ、さっきのように2次災害を引き起こしたりもする。
マスターの話によると、調査などの仕事は一応見習いとしての合格を貰っている。失敗もここまで多くない。だがここでは酷い。普段店の従業員の事はマスターに任せているオーナーでも、ガイは余程目に余るようで何度も部屋に呼ばれお叱りを受けている。
ガイは今、再教育されてる最中なのだ。
私は手早く着替えて汚れた服を洗いに行った。ここの洗剤も悪くはないがやはり地球、というか日本にあったものとは差があった。おそらくキレイにはならないと思う。替えのユニフォームを貰っておいて本当に良かった。でなければ私は今頃、ホールに出られないか私服で出る羽目になっただろう。まあ、今までシミが出来なかったのが不思議なくらいだったんだけどね。何故かガイの失敗に巻き込まれるのは私がダントツで多いのだから。
洗い終えてため息を吐く。やはり汚れはうっすらと残ってしまった。オフホワイトにコーヒーのシミはとても目立つ。どうしよう?漂白剤は無いし・・赤ワインなら塩と熱湯で落ちると聞いた事があるが、あと思い当たるのは酢と重曹くらい。ここでの酢はワインビネガーだから却下だね。重曹なら調理場で分けてもらえるかも。でも染み抜きするには時間が無さ過ぎる。仕方ない、仕事が終わってからやろう。
私は服を干して仕事に戻った。
◇
その夜、私はお風呂に入る前に染み抜きをしていた。
うぅ~ん・・・だいぶ薄くはなったけど・・よ~く見たら分かるよね?これはホールでは着られないな。染みの付いた服でお客さんの前に出る訳にはいかない。仕方ない、マスターにお願いしてもう1枚用意してもらおう。ユニフォームは支給品なので本当はタダだが、今回は3枚目だから支払わなきゃだね。
明日の朝マスターに頼もう、と考えながら服を脱ごうとした時。
ドガーン!!
「うひゃあ!!」
突然の爆裂音に飛び上がるほど驚く。
ビビ、ビックリしたぁ~。何事?襲撃?とか物騒な事を想像しながらそっとお風呂場から顔を出す。
「まぁたお前かぁ!ガイ!!」
聞こえた怒鳴り声はフロアサブリーダーのコンゴさんだった。巨体の上にちょこんと乗ったハゲあた・・コホン、スキンヘッドがなんとも面白・・いや、ユニークな人だ。
お風呂横の裏口からコンゴさんがガイを中へ引っ張ってきた。近くにいたルイさんが私に気が付いてこちらへ来る。
「ソニアちゃん、驚いただろう?大丈夫だった?」
「はい、大丈夫です。あの、さっきの音は?」
「それがさ、ガイが給湯魔石を壊しちゃって」
・・・え、壊した?なら、もしかして・・・
「入る前で良かったよ。これが直らないとお湯がでないからね」
お湯が出ない・・・お湯が出ない・・・お湯が・・・ああ・・頭の中でルイさんの言葉がループする・・・。
ショックで呆然とする私。
・・・床も壁も綺麗な白い石が敷き詰められた広いお風呂場、可愛い猫足バスタブ、シャワー完備。もちろん男湯よりだいぶ狭いが女は私1人なんだからこれで充分だ。というか充分過ぎるくらい素敵なお風呂なのだ。私が1日で一番楽しみにしている癒しの時間が・・・空間が・・・
がくっ。
「ソ、ソニアちゃん!?」
突然項垂れた私に目を丸くするルイさん。
その時
「おい、何事だ」
ドスの利いた声と共に、オーナーとマスターが現れた。
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