188 / 213
170.進化後の戦闘
しおりを挟む
次の街を目指して出発した私たちの旅路は以前にも増して賑やかで楽しいものとなっていた。サニー、サックス、スレートの鳴き声はスノウと同じく言葉として聞こえる。似ていると思っていたサニーとサックスの性格も、話をしてみると確かな違いが感じられて面白い。レオンとエヴァも御者台に居る時退屈しないと言って笑っている。
(注:通常スライムは体から『ポヨポヨ』と音を出して仲間と意思疎通するのでそれが言葉に聞こえます)
目的地である漁師町までは通常馬車で10日前後だが、例によって私たちは店を開けながら進む事にしていた。
■
村を発った4日後、馬車は森の中の道を走っていた。ここは抜けるのに2日は掛かるという深い森。珍しい物も採れるけれど、奥の方には一日中太陽の光が届かないような危険地帯もあるらしい。
私たちはその珍しい物を採取するべく、林道を外れて森の奥へと向かった。
(あっちにこんふぃが4いるの!)
探し始めて少し経った時、先頭を飛んでいたスノウが鳴いた。
"こんふぃ"とはアルミラージというホーンラビットの上位種のこと。肉がホーンラビットよりも柔らかくとても美味で、ツノは薬に、皮も使い勝手が良い魔物だ。以前これの肉をコンフィにしたところスノウがすごく気に入り、それ以来アルミラージを見つけると『こんふぃがいたの!』と叫ぶようになった。クラーケンをから揚げ呼ばわりした事といい、最近スノウは魔物を料理名で呼ぶことが多々ある。
(スノウたちでいってきてもいい?)
「他には居ねえか?」
(ん、ちかくにはいないの)
「なら行っても良いが、終わったらすぐ戻って来いよ?」
(はいなの!みんな、とつげきなの!)
((トツゲキ!))
(オー!)
スノウの号令に答えるサニー、サックス、スレート。この中では一番移動が遅いスレートがサックスの上によじ登ると、意気揚々と飛び出していった。
複数の契約獣が居る場合、いくつかの条件を満たすとその中でリーダーが誕生することがある。スノウたちは今まで常にレオハーヴェン達の指示を受けて行動していたが、進化してみんな揃って秘めていたポテンシャルや知力が上がったことでスノウがリーダーとなった。だからといって決して勝手な行動はしないものの、今回のように許可を得て契約獣のみで戦う機会が出てきたのだ。
(みんなで1ずつやるの!)
(((オー!)))
スノウたちの接近に気が付いたアルミラージが逃げようと身を翻す。
(まっぷたつなの!)
可愛い声と共に真っ先に獲物を倒したのはもちろんスノウ。風の刃で的確に首を落とした。
((ニガサナイ!))
続いて鋭く嘶いたサニーとサックスは、疾走スキルで瞬時に差を詰めて蹴りと踏みつけを使って一発で仕留めた。
そしてスレートはサックスから飛び降りて200㎝の本体に戻ると、自分に背を向けていた獲物に手を伸ばしてガッチリ捕まえる。アルミラージは捕まった相手を見て驚き、必死にもがきながら土魔法を放つ。だが隆起して尖った硬い土も、防御力が高くぷにぷにしたスレートの体には効き目がない。そうしているうちに獲物を体内に取り込み、血液や内臓、骨などの要らない部分を吸収する。程なくして皮と肉、それと魔石だけになったアルミラージが吐き出された。
進化時の成長率でいうとスレートが一番だろう。エンペラースライムはスライム種の最終形態で知力も中々高く、レベルが上がればその強さはAランクとも言われている。すべてのスライムに共通の消化吸収スキルは威力が格段にアップし、毒や麻痺を持つ敵でも余程強力でなければ全て吸収してしまう。その上スレートは元プロテクトスライムなので防御力も高くなるし、ナイフの使い方まで教わっている。レベルが上がって強くなり、レオハーヴェンたちが制作した武器を使いこなすようになったらと思うと末恐ろしい。
スノウたちを少し離れた位置で見ていた私たちは、危なげない戦いぶりに感心したのだった。
■
私たちはアルミラージを仕留めたあとも探索を続けていた。ブラックベリーや薬草などはあったが一番欲しいものはまだ見つからない。
「ん…あった!」
目当ての物を見つけて声を上げたエヴァが土の中からそれを掘り出す。最近Bランクになった彼の探索スキルはやはり上級だけあって格段に精度が上昇した。そのスキルを頼りに探したのだ。
私はエヴァの手にある物を見て思わず声を上げた。
「わ…ほんとにトリュフだ。しかも白…」
そう、この森の珍しい採取物とはトリュフとのこと。私の身体を考えて休憩を挟みながらだったので時間は掛かったが漸く見つけた。トリュフはここでも高級食材だが、採れる時期が違うので前世のものと多少違いがあるのかもしれない。でも見た目はそっくり。
「時期的にはギリギリだったが探してみて良かったな」
「ホントだよ。ヴェスタでもホワイトはまず見なかったし、これは大きさも状態も凄く良い」
(これがとりふ?これたべれるの?)
エヴァの手に飛んで来たスノウが匂いを嗅ぎながら言う。
「もちろん食べれるよ。でもトリュフは香りを楽しむ食材だから、スノウの好みでは無いかも」
(ふ~ん)
エヴァが言った通りあまり関心がなさそうな返事をする。スノウは食いしん坊だけど好みは割とハッキリしているので分かりやすい。
「もうすぐ日が落ちる。さっき通った湖のそばまで戻ろうぜ」
「だね。おいでキラ」
「うん」
その夜は湖の畔にコテージを設置して休んだ。
(注:通常スライムは体から『ポヨポヨ』と音を出して仲間と意思疎通するのでそれが言葉に聞こえます)
目的地である漁師町までは通常馬車で10日前後だが、例によって私たちは店を開けながら進む事にしていた。
■
村を発った4日後、馬車は森の中の道を走っていた。ここは抜けるのに2日は掛かるという深い森。珍しい物も採れるけれど、奥の方には一日中太陽の光が届かないような危険地帯もあるらしい。
私たちはその珍しい物を採取するべく、林道を外れて森の奥へと向かった。
(あっちにこんふぃが4いるの!)
探し始めて少し経った時、先頭を飛んでいたスノウが鳴いた。
"こんふぃ"とはアルミラージというホーンラビットの上位種のこと。肉がホーンラビットよりも柔らかくとても美味で、ツノは薬に、皮も使い勝手が良い魔物だ。以前これの肉をコンフィにしたところスノウがすごく気に入り、それ以来アルミラージを見つけると『こんふぃがいたの!』と叫ぶようになった。クラーケンをから揚げ呼ばわりした事といい、最近スノウは魔物を料理名で呼ぶことが多々ある。
(スノウたちでいってきてもいい?)
「他には居ねえか?」
(ん、ちかくにはいないの)
「なら行っても良いが、終わったらすぐ戻って来いよ?」
(はいなの!みんな、とつげきなの!)
((トツゲキ!))
(オー!)
スノウの号令に答えるサニー、サックス、スレート。この中では一番移動が遅いスレートがサックスの上によじ登ると、意気揚々と飛び出していった。
複数の契約獣が居る場合、いくつかの条件を満たすとその中でリーダーが誕生することがある。スノウたちは今まで常にレオハーヴェン達の指示を受けて行動していたが、進化してみんな揃って秘めていたポテンシャルや知力が上がったことでスノウがリーダーとなった。だからといって決して勝手な行動はしないものの、今回のように許可を得て契約獣のみで戦う機会が出てきたのだ。
(みんなで1ずつやるの!)
(((オー!)))
スノウたちの接近に気が付いたアルミラージが逃げようと身を翻す。
(まっぷたつなの!)
可愛い声と共に真っ先に獲物を倒したのはもちろんスノウ。風の刃で的確に首を落とした。
((ニガサナイ!))
続いて鋭く嘶いたサニーとサックスは、疾走スキルで瞬時に差を詰めて蹴りと踏みつけを使って一発で仕留めた。
そしてスレートはサックスから飛び降りて200㎝の本体に戻ると、自分に背を向けていた獲物に手を伸ばしてガッチリ捕まえる。アルミラージは捕まった相手を見て驚き、必死にもがきながら土魔法を放つ。だが隆起して尖った硬い土も、防御力が高くぷにぷにしたスレートの体には効き目がない。そうしているうちに獲物を体内に取り込み、血液や内臓、骨などの要らない部分を吸収する。程なくして皮と肉、それと魔石だけになったアルミラージが吐き出された。
進化時の成長率でいうとスレートが一番だろう。エンペラースライムはスライム種の最終形態で知力も中々高く、レベルが上がればその強さはAランクとも言われている。すべてのスライムに共通の消化吸収スキルは威力が格段にアップし、毒や麻痺を持つ敵でも余程強力でなければ全て吸収してしまう。その上スレートは元プロテクトスライムなので防御力も高くなるし、ナイフの使い方まで教わっている。レベルが上がって強くなり、レオハーヴェンたちが制作した武器を使いこなすようになったらと思うと末恐ろしい。
スノウたちを少し離れた位置で見ていた私たちは、危なげない戦いぶりに感心したのだった。
■
私たちはアルミラージを仕留めたあとも探索を続けていた。ブラックベリーや薬草などはあったが一番欲しいものはまだ見つからない。
「ん…あった!」
目当ての物を見つけて声を上げたエヴァが土の中からそれを掘り出す。最近Bランクになった彼の探索スキルはやはり上級だけあって格段に精度が上昇した。そのスキルを頼りに探したのだ。
私はエヴァの手にある物を見て思わず声を上げた。
「わ…ほんとにトリュフだ。しかも白…」
そう、この森の珍しい採取物とはトリュフとのこと。私の身体を考えて休憩を挟みながらだったので時間は掛かったが漸く見つけた。トリュフはここでも高級食材だが、採れる時期が違うので前世のものと多少違いがあるのかもしれない。でも見た目はそっくり。
「時期的にはギリギリだったが探してみて良かったな」
「ホントだよ。ヴェスタでもホワイトはまず見なかったし、これは大きさも状態も凄く良い」
(これがとりふ?これたべれるの?)
エヴァの手に飛んで来たスノウが匂いを嗅ぎながら言う。
「もちろん食べれるよ。でもトリュフは香りを楽しむ食材だから、スノウの好みでは無いかも」
(ふ~ん)
エヴァが言った通りあまり関心がなさそうな返事をする。スノウは食いしん坊だけど好みは割とハッキリしているので分かりやすい。
「もうすぐ日が落ちる。さっき通った湖のそばまで戻ろうぜ」
「だね。おいでキラ」
「うん」
その夜は湖の畔にコテージを設置して休んだ。
21
お気に入りに追加
4,889
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる