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閑話.デコボココンビ
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「いやぁ~助かった。良かったね、薪が手に入って」
ぽっちゃり女子のニームが薪を組みながら言う。
「…ぅん…」
ほっっそり女子のエネリはテントを張りながら消え入りそうな小声で頷いた。
薪やオーク汁を購入して雑貨屋レックスを出た2人は、建物の裏の方にある大木の傍で野営の準備をしていた。お店のすぐ傍なので一応一言断りは入れてある。
「これでOK、っと。エネリ、そっちは終わった?」
「…ぅん」
「じゃあオーク汁食べようよ!あたしもう我慢出来ない!」
「…ぅん」
ニームがインベントリから小鍋やお椀を取り出し、汁をよそって1つ渡す。
「…ありがとう」
「うん。さ、食べよう食べよう」
「…ぅん」
オーク汁を口にした2人が顔を見合わせる。
「美味しい!何これ!」
「…凄く美味しいね。安かったのに…」
「そうだよね!安かったから味にはあまり期待してなかったんだけど、あぁ~しまった!こんなに美味しいならもう1日分買っておくんだった!」
「…まだお店やってるかな…?」
エネリが建物の方を振り向いた時、大きな馬小屋の扉が開いて赤髪の男、レオハーヴェンが出てきた。中にいた馬が扉の所まで来て彼に擦り寄っている。
「…ねぇニーム…あの馬もしかして…」
「ん?」
エネリに言われたニームが馬小屋の方を見るとそこには…
「…え…ええッ!あれスレイプニルじゃない!?」
「…やっぱりそうだよね…あ、2頭いる…す、凄い…」
「2頭!?」
驚いて叫ぶニームの声がきこえたのか、レオハーヴェンがチラリと彼女たちの方を見る。
「ホァッ!う、うるさかったかな…すみませ~ん…」
超小声になってしまった謝罪の言葉が聞こえたかどうかは分からないが、彼はすぐに視線を逸らせて家の中に入っていった。
「…びっくりした。スレイプニルと契約って凄すぎない?いつの間にか家建ってるし、街道に店だし、オーク汁超美味しいし、美人だし、イケメンだし。それに…一妻多夫、だったよね?」
「…ぅん、お揃いの耳飾りしてたし…」
「う、羨ましすぎるっ!…はぁ~、いいな~」
拳を握りしめた後、すぐに溜息を吐くニーア。
「…でも、ここに店があれば助かるね」
「それはそうだね。安いし、店先に無い物も出してくれたし、すっごく助かる。…温め直そうか」
「…ぅん」
2人は話している間にすっかり冷めてしまったオーク汁を温め直して食事を続けた。
明くる朝。
彼女たちはいつもよりもスッキリ目が覚めた事や疲れが吹き飛んでいる事、それに一晩中魔物の気配を微塵も感じなかった事に首を傾げる。そしてレックスが家をしまって出発するのを見てまた驚いたのだった。
そして彼女たちがこれから流れるレックスの噂の大元となるのだが…それはもう少しだけ先の話。
ぽっちゃり女子のニームが薪を組みながら言う。
「…ぅん…」
ほっっそり女子のエネリはテントを張りながら消え入りそうな小声で頷いた。
薪やオーク汁を購入して雑貨屋レックスを出た2人は、建物の裏の方にある大木の傍で野営の準備をしていた。お店のすぐ傍なので一応一言断りは入れてある。
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「…ぅん」
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「…ぅん」
ニームがインベントリから小鍋やお椀を取り出し、汁をよそって1つ渡す。
「…ありがとう」
「うん。さ、食べよう食べよう」
「…ぅん」
オーク汁を口にした2人が顔を見合わせる。
「美味しい!何これ!」
「…凄く美味しいね。安かったのに…」
「そうだよね!安かったから味にはあまり期待してなかったんだけど、あぁ~しまった!こんなに美味しいならもう1日分買っておくんだった!」
「…まだお店やってるかな…?」
エネリが建物の方を振り向いた時、大きな馬小屋の扉が開いて赤髪の男、レオハーヴェンが出てきた。中にいた馬が扉の所まで来て彼に擦り寄っている。
「…ねぇニーム…あの馬もしかして…」
「ん?」
エネリに言われたニームが馬小屋の方を見るとそこには…
「…え…ええッ!あれスレイプニルじゃない!?」
「…やっぱりそうだよね…あ、2頭いる…す、凄い…」
「2頭!?」
驚いて叫ぶニームの声がきこえたのか、レオハーヴェンがチラリと彼女たちの方を見る。
「ホァッ!う、うるさかったかな…すみませ~ん…」
超小声になってしまった謝罪の言葉が聞こえたかどうかは分からないが、彼はすぐに視線を逸らせて家の中に入っていった。
「…びっくりした。スレイプニルと契約って凄すぎない?いつの間にか家建ってるし、街道に店だし、オーク汁超美味しいし、美人だし、イケメンだし。それに…一妻多夫、だったよね?」
「…ぅん、お揃いの耳飾りしてたし…」
「う、羨ましすぎるっ!…はぁ~、いいな~」
拳を握りしめた後、すぐに溜息を吐くニーア。
「…でも、ここに店があれば助かるね」
「それはそうだね。安いし、店先に無い物も出してくれたし、すっごく助かる。…温め直そうか」
「…ぅん」
2人は話している間にすっかり冷めてしまったオーク汁を温め直して食事を続けた。
明くる朝。
彼女たちはいつもよりもスッキリ目が覚めた事や疲れが吹き飛んでいる事、それに一晩中魔物の気配を微塵も感じなかった事に首を傾げる。そしてレックスが家をしまって出発するのを見てまた驚いたのだった。
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