異世界ライフは前途洋々

くるくる

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163.コテージ完成

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 早いもので森に落ち着いてからもう40日ほどが経過し、2月も後2日で終わろうとしていた。東大陸の中でも南方に位置するこの森にもう雪は無く、寒さも緩んできて春が近い事を報せていた。

 改装中は久しぶりに本宅の方を使い、コテージとはまた違った生活を楽しんでいる。悪阻も治まった私は、結構なマタニティウェアやベビー服を縫った甲斐あって生活魔法がCにアップ。そして私が妊娠してから料理することが多かったエヴァの料理スキルはついにSランクになった。





 ■





 その翌日、2月の最終日にコテージの改装が終了。メインは何と言っても2階が増築された事だ。玄関ポーチ横、店舗の丁度逆側に作られた階段(屋内)を上がると廊下がある。部屋は2つ並んでいるが、仕切っている壁がスライド式に動かせるようになっていてひとつの広い部屋にも出来る。部屋の奥、家の裏側には大きな窓とベランダまであって眺めが良い。店舗増設やバスルーム改装、そして2階の増築と建設当時とは随分変わったが、アンバランスな感じは無くしっくり来ているのが凄い。スノウとスレートは早速ベランダから下を眺めてサニー、サックスと何やら遊んでいた。

「2人とも改装お疲れ様。ありがとう、部屋もベランダも素敵。それにこのスライド式の壁凄いね」
「気に入ってくれた?」
「うん、もちろん」
「良いアイディアだろ?この先子供が増えた時に備えて考えたんだ」
「まあ個室は家の方にあるから、コテージでは広い部屋で一緒にっていう手もあるけどね」
「そうだな」
「さ、そろそろ家に戻ろう。長居すると体が冷えるよ」
「うん」
「スノウ、スレート、戻るぞ」
「はいなの~!」

 私たちはスノウとスレートも連れて家に戻った。




 夕食後は久々の相談会。

「コテージも出来たし、キラの悪阻も落ち着いた。そろそろ発っても良いと思うんだが、皆どうだ?」
「そうだね。丁度寒さも和らいできたし、良いんじゃないかな」
「私も良いよ」
「スノウもそれでいいの!」

 レオンの言葉にみんなが賛成する。

「よし、じゃあ明日準備を整えて明後日発つ事にするか」
「だね。一度街に寄って情報収集しようか?」
「ああ、そうだな。キラもそれで良いか?」
「うん」
「おはなしおわり?」

 スノウがそわそわしながら言う。

「うん、終わり。お風呂入ろうか」
「はいるの!すれー、おふろいくの!」

 スノウとスレートは嬉々としてバスルームに向かった。





 ■





 2日後。予定通り森を出た私たちは、街での情報収集や買い物を済ませた後コテージで一泊してから出発した。次の街までは7日ほどだ。

 3月に入った東大陸はだんだん暖かくなってきている。まだ緑は少ないがチラホラと花の蕾も見えてこれからの景色が楽しみなところ。

 真冬の寒さから解放されたスノウは防寒具を脱いで元気に外を飛び回り、マイアイテムバッグにお気に入りの物を貯め込んでいた。スレートは変わらず御者台や馬車内でジッとしている。夜はまだ冷えるので早めにコテージを設置して休んでいた。

 そして私はというと、馬車内用に作った大きなクッションに座っていた。夫たちは馬車での移動が私の体の負担にならないか心配してくれている。今回は山越えが無いし元々殆ど揺れないので大丈夫なのだが、無理すると心配を増長させるだけなので何かあったら素直に言おうと思う。




 街を発って3日目、今日は午後から雨が降り始めたので進むのを止めてコテージに入った。やはりこの時期の雨は冷たく、少し冬に逆戻りしてしまったような寒さだ。

「ふぅ…寒い日は鍋に限るな」
「だね~。身体があったまる上に美味しい」

 夕食の寄せ鍋を食べながらレオンとエヴァがしみじみと言う。この冬の間にすっかり我が家の定番となった鍋は家族全員の好物だ。食べるとき最初は普通の鍋敷きを使っていたのだが、エヴァがIHクッキングヒーターに酷似した物を作ってくれた。凄いです。

「シメは何が良い?」
「そうだね…雑炊は?」
「スノウはどれでもいいの」
「俺は今日のスープでラーメン食ってみたい気もする」

 もうすぐ頃合いというところでシメの相談を始めると、ラーメンという言葉を聞いたスレートが自己主張するようにみょんと体を伸ばした。ラーメンがとっても好きなのだ。

「フフ。スレートも主張してるし、ラーメンにする?」
「ふふ…そうしようか」

 私はインベントリから中華麺を取り出した。




 鍋を堪能して温まった後は明日の相談。

「この分だと止みそうも無いね、雨」
「そうだな。雪にはならねえと思うが、明日は1日ここに留まるか」
「その方が良さそうだね」
「じゃあ店開けても良いかな?売ってみたいものがあるの」
「開けるのは構わないけど、売ってみたい物って?」
「うん、オーク汁なんだけど」

 野営の光景はどの大陸も変わりなく、テント、焚き火、保存食だ。季節が冬でも違いは寒さ対策をしている事くらい。それを見ていて、夜はまだ肌寒い今の時期に街道で温かい汁物を出したら売れるんじゃないかと思ったのだ。街にあった汁物の出店にはオーク汁も売ってたし、これなら冷めても温めなおせる。

「なるほどな、確かに野営で温かい物が食えるのはありがたい」
「だね。…そうだ、どうせならおにぎりも売ったら?おにぎりは携帯してる人もいるだろうけど、そう長くは保たないし売ってたら買うと思うよ?」
「それ良いな。おにぎりとオーク汁があればそれだけで一食賄えるし、この組み合わせは好きな奴が多いと思うぜ?」

 夫たちがそれぞれ感想や意見を言ってくれる。

「2人ともありがとう。じゃあおにぎりも一緒に売ってみようかな」
「それが良いよ。売り方とかは何か考えてある?」
「うん、あのね…」

 その後細かな事を話し合い、全て決めてから休んだ。

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