異世界ライフは前途洋々

くるくる

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144.宴

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「誓いは3日後か、早いな」
「そうなのか?」
「早い方じゃない?オレたちは7日後だった。まあ大陸ごとの違いもあるかもしれないけど」

 教会での用を済ませ、みんなでギルドに向かいながら話す。

 ライラたちの誓いは3日後に決定。私たちもお祈りして無事3人とも同じ称号を得られました。それは“竜殺し”と“龍の支配者”の2つ。ヘルプによると竜殺しはSランクドラゴンを討伐した者が得る称号で、竜族への攻撃力アップという効果がある。

 そして龍の支配者は、神の名が付く称号を持ち、竜を5体以上討伐した者だけが得られる。しかもその5体の中に古龍が含まれていなければならない為、この称号を持つ者は長い歴史の中でも数人しか居ない。更に効果は竜を使役出来るという世界征服が目論めそうな代物です。

 …まあドラゴンと遭遇する機会なんてそうそう無いだろうし、使う事のない効果だと思いますが。











 ギルドに入ると、酒場には既にガーディアンの姿があった。ランドさんとライラは、再会の挨拶をした後早速結婚について色々言われている。酒場のマスターが料理やお酒を運んでくると、乾杯!とゴルドさんが声高らかに開会を宣言した。

 酒場はそう広くもないけれど大きな窓があって外へ出られるようになっている。外に出ると目の前にラクダを繋いでおく場所があり、契約獣もそこで待機していることが多い。今は窓が開け放たれていてスノウ達はそこでご飯をもらっていた。

 話題はライラたちの結婚から私たちの昇級、ガーディアンの武勇伝などにコロコロ変わる。途中からマル君も加わり、ランドさんが弟だと紹介すると更に盛り上がった。

 言ってしまって良いのか気になったけど2人はもう王家とは縁のない人間だし、8番目や11番目の王子の名など知ってる人は居ないという。それにこの世界は寿命が長くて年の離れた兄弟も多い上、家を出て独立すれば中々帰る事が無い。だからこのように久しぶりに再会するケースも珍しくはないらしい。そういえばステータスも名前のみの表記になったと言ってたし、元王子という事実だけ知られなければ問題ないのかも。

 それにしても似てない兄弟だな~、なんて考えていたら、ライラが窓際に座っていた私の隣に移動して来た。

「やっと抜け出せたわ…」
「ふふ、お疲れ様」

 酒場での飲み会はやはり男性が中心なので、私はここで楽しく遊ぶスノウたちを愛でていたんです。ライラは最初にランドさんと一緒に真ん中に座らされ、長々と酒の肴にされていたのだ。私たちの話題もあったけど、そこはエヴァがスムーズに話題を移行させていましたよ。

「皆さんに祝われて嬉しいけど恥ずかしいわ」
「良いじゃない。10年の愛が実ったんだもの、今までの分も幸せを満喫しなきゃ」
「…そう言われるとそんな気もする」
「でしょう?」
「ええ。うふふ」

 そう言って笑いながら話していると、ギルドの扉が開いてルリアちゃんが入って来た。ファニーさんも一緒だ。

「パパ!」

 ルリアちゃんは一目散に父の元へ走っていって抱きつく。

「ルリア!どうした?ここは子供の来る所じゃないぞ」
「ママといっしょにさしいれもってきたんだもん!」

 注意され、ぷくっと頬を膨らませて言い返す。すると先にマスターと話していたファニーさんが持ってきた差し入れをゴルドさんのテーブルに置く。

「ルリアも作るの手伝ったのよ」
「何ッ!?皆待て!おれが一番に食う!」

 大声で制止をかけ、一口。

「あじつけもてつだったんだよ!…パパおいしい?」
「…美味い!ルリアは料理上手だな!」
「ほんと?ありがとパパ!ね~、ルリアもジュースのみたい!」
「仕方ないなぁ、少しだけだぞ?」
「うん!パパだいすき!」
「そうかそうか」
「「「「「……」」」」」

 父娘の会話を聞いていた皆は無言になってしまいましたよ。…子供の来る所じゃない、と注意した父は何処へ?ここも極甘です。まあ…可愛い娘にパパ大好き!なんて満面の笑みで言われたらみんなああなるのかな。

「…ルリア、良い子にしてるのよ?…皆さんも召し上がってくださいね」
「ありがとうファニー。時間大丈夫ならお前も休んで行ったらどうだ?キラちゃんとライラちゃんも居るし」
「そう?じゃあルリアをお願いね」
「ああ」

 夫のデレっぷりをサラッと流したファニーさんは、にっこり笑ってそう答えると私たちのテーブルに来る。

「急にすみません。少しだけお邪魔しても良いですか?」
「ええ、もちろん。ねぇライラ?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとう」

 こうして酒場の一画で女子会がスタートしました。




 赤ちゃんは彼女の母、ルリアちゃんの祖母に頼んできたというファニーさんは、こんな風にお喋りするのは久しぶりだと喜んでいる。前世の年齢に一番近いファニーさんとはとても話しやすい。当然ライラとも知り合いだったし、彼女はギルドで受付嬢をしていた事もあるという事で、私たちはすぐに馴染んで会話を楽しんだ。

 それぞれの馴れ初めや子供の事、料理や洋服、アクセサリーの事など色々。時々スノウがジネの頭に乗ってやって来て一緒につまみ食いしていったり、ルリアちゃんが『おさけくさかった~』と言いながらやってきたり。

 男性陣の方はやはり武器や防具、戦い方などに関する話が多かったが、ランドさんが偶に揶揄われたりしている。他の冒険者たちもちょいちょいやって来ては少しだけ話して帰っていく。

 話は尽きないけれど、楽しい時間はあっという間。飲み会はお開きになって皆それぞれ帰って行った。私たちも宿に泊まるというライラたちと別れ、門を出てコテージへと戻った。





⬛︎





 少し酔いを醒ましてからお風呂に入り、バスタブで温まりながら話す。

「良かったね、ライラとランドさんが結ばれて。ライラ幸せそうだった」
「そうだね。でもさ、それにしたってランドのデレデレぶりは凄かったよ」
「くくっ…デレデレといえばゴルドもだろ」
「フフ、確かに。…子供が出来ると皆ああなるのかな」
「ふふ、そうだと思うな」
「キラ…俺らも…な?」
「うん、あんな風に…ね?キラ」

 2人は柔らかく微笑みながらキスしてくれる。

「うん」

 私も頷いてキスを返した。


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