異世界ライフは前途洋々

くるくる

文字の大きさ
上 下
148 / 213

134.パーティー"ガーディアン"

しおりを挟む
 セーフティーゾーンに着いてまず行ったのは気絶した男性の回復。

 移動しながら聞いた話によると、彼は魔力が切れて体力も尽きかけという危ない状態だった。回復魔法は移動前に掛けたので今するのは魔力回復。魔力切れになると暫く目を覚まさない。時間が経てば数値が戻ってきて自然に目覚めるが、それではきちんと動けるようになるまで結構な時間を要する。なので数人がかりで魔力回復薬を口に流し込み、少量ではあるが何とか飲み込ませた。後は目覚めるのを待つのだが、他のメンバーにも休息が必要な状況なので丁度良い。

 処置を終えると時刻は19時を回っていた。私たちはガラ空きのセーフティーゾーンにコテージを出し、彼らと共に食事を摂ることに。外も悪くないけどやはりコテージ内は落ち着くんです。




 またもやポカン、としているガーディアンの面々に洗浄・乾燥を掛けてからテラスに案内する。

 私はローブを脱ぎたかったのだけど、夫たちに止められました。今日はビキニアーマーなの忘れてましたよ。 まあとにかく食事です。インベントリから力が付きそうな料理を選び、たくさん並べて薦める。

「…な、なんで…」
「良いからまずはメシ食え。俺らも腹減ってんだよ」
(めしー!)

 スノウが羽を広げて叫び、お肉に突撃してすごい勢いでかぶりつく。

 ここを攻略すると決めた当初はワンフロアを1日掛けて周るつもりだった。しかしバリリアに着いてから予定が変わったので出来るだけ急いで階下を目指した。だから当然昼食など摂る暇はなかったのだ。ダンジョンでは昼抜きになる事も結構あるが、今日は体力・魔力共に消費量が多くいつも以上に空腹、という訳だ。

「食料は充分準備してきたから遠慮は要らないよ」
「ドンドン食べて下さい」
「あ、ああ…ありがとう…」

 エヴァと私も声を掛けるとリーダーらしき男性は戸惑いながら答えてメンバーを見る。

「ここは甘えよう」

 そうして食べ始めればはもう止まらず、夢中になって料理を平らげていた。

 食後に詳しい話をしようかとも思ったが、疲労も溜まっているし全員揃ってからの方が良いという事で互いに簡単な自己紹介だけ済ませた。ガーディアンはさすがにコテージで眠るのを遠慮し、表に自分たちのテントを建てていました。




 テントとコテージに別れた後、私たちは話し合いをしていた。スノウは既に眠っている。

「…だから緊急措置を取ろうと思うんだが…どうだ?」
「う~ん…キラの魔除け香を焚きながら上を目指す手もあるけど…確実に助けるならそっちの方が良いね。ただオレたちの戦いをあまり人には話さないで欲しいよね」
「ああ、そうだな。ベラベラ喋んな、ってのはキッチリ言って釘を刺しておく必要がある」
「そうだね。キラはどう思う?」

 エヴァに問われた私は少し考えてから答える。

「魔除け香は全ランクに効くなんて言っても信じるかどうか分からないし、緊急措置の方が良いと思う。それに…ギルマスや管理人さんの話を考えると、彼らはバリリアに必要なパーティーだって感じたの」

 出回っている普通の魔除け香は、最高品質の物でも効き目はAランクの魔物まで。私のは全ランクに効く"?"マークがつくような代物だ。信じられないと言われるのは目に見えている。それならさっき内容を教えてもらった緊急措置の方が確実だ。

「バリリアに必要だ、ってのは同感だ。小さい街には上級パーティーが居ねえ所も多い。その上ここは砂漠のド真ん中で魔物も強力だ」
「それはオレも同じ事を感じたよ」
「よし。なら決定で良いな?」
「うん」
「良いよ」



 こうして話し合いを終え、私たちも眠りについた。











 翌朝。

 気絶していた男性も無事に目覚め、揃ってお礼を言われた。その後皆で一緒に朝食を摂ってから話し合う。まずは私たちがここに来る事になった経緯などを話し、それから彼らの事を聞いた。




 ガーディアンは4人の男性パーティー。

 1人目、リーダー・ゴルドは38才で攻撃の要。典型的なマッチョで黒っぽい髪は角刈り、厳つい顔つきで見た目はかなりヤクザっぽい。

 2人目、リーダーの片腕であるアイシクルは同じ38才。剣と魔法の両使いで体は細マッチョといったところ。パーティー内の位置的には参謀で、インテりな雰囲気。色素の薄い髪は長く、後ろで束ねている。

 3人目、ドラジェは34才で盾役。その役に相応しい巨体は屈強そのもの。頭は丸刈りなのか薄いのか分からない感じだ。

 4人目、ネルソンは一番若く32才。魔法の扱いに長けていて危機察知や回復は勿論、攻撃も熟せるパーティーの命綱。




 彼らは一向に攻略者が現れないドラゴンダンジョンを制覇するべく時間を掛けて準備を進め、万全の状態で挑んだ。交代で休息し、時には隠れながら数体のドラゴンを討伐して何とかセーフティーゾーンに辿り着いた。疲労はあったが後はボスを残すのみ、覚悟を決めて最下層に突入。

 だが―――歯が立たなかった。

 命からがら逃げ出しては来たものの、全員が怪我を負ってしまった。ネルソンの魔法や薬で回復し、とにかく生きて帰ろうと今度は上を目指すが、ドラゴンに見つからずに進む事は出来なくて地下4階でまた戦うことに。そこでは辛くも勝利したが、回復の要であるネルソンが魔力切れになって再びすぐ下のセーフティーゾーンに戻った。その時手元に残っていたのは僅かな保存食と水だけ、盾役のドラジェも怪我をし、全員が疲弊し切っていた。

 それでもこのままただ死を待つよりはと、再度上へ行ったところで私たちに出会ったのだった。




「情けないがおれたちには出来なかった。だがあの短時間でレッドドラゴンを倒しお前たちなら…奴を倒せるかもしれない。得た情報は全て話す、どうか、このダンジョンを攻略してくれ。でないとバリリアは…頼む!」

 ガーディアンのリーダー、ゴルドさんはそう言ってガバッと頭を下げた。

「…ああ、あんたらの気持ちは分かった。で、これから上を目指すのか?」
「もちろんだ」

 私たちは一度3人で視線を交わした。そしてレオンが提案を告げる。

「それなんだが、俺らから提案がある。…緊急措置を取らねえか?」
「「「「!!」」」」

 その言葉を聞いたガーディアンの面々は驚きに目を見開いた。


しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...