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118.記念に
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翌朝。
いつもの時間に目が覚めて夫たちの腕の中からそっと抜け出す。まずは着替え。今日は買い物しながら街を見ることになっているので防具ではなく普通の服。私は少し悩んでからボートネックの半袖カットソーとロングのサロンスカートを取り出した。
服はほぼ自分で作っているけど、ボトムスは圧倒的にロングスカートが多い。それは私が足を出して歩くのを旦那様たちが嫌がるから。例外はコテージ内で、外に出ない日はショートパンツやミニスカートを履くこともあります。ちなみに今日のカットソーはオフホワイト、スカートはモスグリーンです。
キャミソールを脱ぎ、ブラを着けてサロンスカートを巻く。横のボタンを留めていると後ろで動く気配。たぶんエヴァだろう、大抵彼が先に目を覚ます。
その気配は私を後ろから優しく抱きしめ、耳元で囁いて頬にキスする。
「おはようキラ」
「おはよう、エヴァ」
私も挨拶と共にキスを返す。するとレオンがもぞもぞと動き、ベッドに起き上がって目を擦る。妻でなくては見られない彼の可愛い癖です。起きなければならない時はパッと目を覚ますがいつもはこんな感じ。
「キラ…」
「おはようレオン」
座ったまま名を呼ぶレオンの傍に行ってキス。彼も返してくれた。
それから身支度。衣服も含め、日用品などはほとんど私が持っているのでインベントリから出して渡す。レオンは基本的に黒、白、赤の3色で、一言で表すならワイルド系。エヴァはオフホワイトやグレー、ブラウンなどの優しい色合いを好み、すっきりとまとまったコーデが多い。
(…おはようなの…)
そしてみんなの支度が終わった頃、やっとスノウが寝ぼけ眼でふらふらと飛んでくる。鳥といえば夜明けとともに行動する印象があるし、実際ここでも昼間活動する魔物は同じだと聞いたのだけど…ウチの子はちょっとばかりお寝坊さんです。超可愛い。
スノウが居眠り飛行してぽすん、とベッドに落下したので必殺の一声を掛ける。
「スノウ、朝ごはん食べに行くよ」
(…ごはん?ごはんいくの!)
私たちはいつもの食いしん坊反応を見て笑うのでした。
■
宿の1階で朝食を済ませた後、サニーとサックスを連れてショッピングへ。昨日馬車の中から眺めただけだったメインストリートは、実際歩いてみると都会的な雰囲気の店が多い気がする。もちろん武器や防具の店もあるけど食器や工芸品、アクセサリーの看板が目立っていた。
「キラはどこから見たいんだ?」
「えぇと…ちょっと迷ってて」
「ならオレたちの行きたい店からで良い?」
「うん、もちろん」
「じゃああの店に行こう」
「え…」
そう言ってエヴァが示したのはジュエリーショップで、私の脳内からはすでに抹消されていた店だった。鉱石や宝石で有名な街に来たのだから1つくらいはアクセサリーも欲しいと思ってた。でもここは超高級そうだったから即除外したんです。
「ほら、行くぞ」
私は2人に腕を引かれて店へと向かった。
「いらっしゃいませ」
店に足を踏み入れると壮年男性の静かな声に出迎えられた。店内はとても落ち着いた雰囲気で壁も床も綺麗に磨かれた白い石で統一されている。奥の方に並べられている商品がガラスケースなどに入っていない事に少し驚いたが、考えてみればショーケースが無かったのだからこれが普通なのかもしれない。当然ながら警備員らしきマッチョが2人、商品の置かれたカウンターの左右に立っていた。
「キラ、好きなのを選んで」
「え、でも…」
値札が付いてる品の方が少ないんですけど…その値札も結構な額だし、他はどのくらいお高いのか想像が付きません。
「いいからいいから」
「石の街ゴレに来た記念だ」
戸惑い気味な私の肩と腰を抱いてジュエリー選びを促す夫たち。
…確かに今まで訪れたほとんどの街で記念になりそうな品を買ってきた。でもですよ?他と同じ記念品と表すにはこの宝石たちは高価すぎる気がしてしまうんです。
とか思いつつもジュエリーに目がいってしまう。だって並んでいるのはどれも美しい装飾が施されていて…視界に入れば見入ってしまうものばかりなんですもん。
「…」
「これなんかどう?」
「!?」
思わず無言で品を見つめる私にエヴァが示したのは―――おぉ~きな赤い宝石が付いた指輪。昔食べた指輪型の某キャンディーみたいに大きくて、値札無しの中でも明らかに一番高そう。
チョット待った…いくらなんでもそれは…!
まさか本気でそれを薦めてる訳ではないだろうと思うけれど、彼は本気とも冗談とも取れる表情で微笑んでいる。
「…そ、それは、ちょっと…あの…」
「ダメ?じゃあこれはどうかな?」
取り敢えずその宝石は回避しようとすると今度は別の品を指差した。それはダイヤのような宝石に金で装飾がされたネックレス。先程よりもだいぶ小ぶりな事にほっとして『綺麗…』と呟く。するとレオンも傍にあった違うネックレスを薦める。
「これも良いと思うぜ」
「ホント…それも素敵…」
「指輪やブレスレットもあるけど、ネックレスが良い?」
「え…うん。指輪とかだと料理するとき外さなくちゃいけないし…」
私はいつの間にか2人のペースになっている事にも気が付かず、素敵なジュエリーに目を奪われていた。
その時、ずっと気配を消すように黙っていた店の男性が声を掛けてきた。
「商品をお持ちいたしますので、あちらのソファーにお掛けになってごゆっくりご覧になりませんか?」
「あ…」
「そうだね、そうしようか」
「ああ」
「おいでキラ」
おそらく長年宝石を売っているのだろう、何とも絶妙なタイミングである。もう今更遠慮しますとも言えず、レオンとエヴァに導かれるがままソファーへと移動したのでした。
■
「ありがとうございました」
入った時と同じ静かな声に送り出されてジュエリーショップを出た私の胸元にはネックレスが光っていた。石はダイヤ、チェーンはプラチナで創られたもので、大粒ではないが繊細なカットが為された無色透明の輝きが素晴らしい逸品。
か…買ってもらってしまいまいした…。少しだけ心の隅に申し訳ないような気持ちもあるけれど、やはりとても嬉しいです。
「とっても似合ってるよ、キラ。透明感のある君にピッタリだ」
「ああ、お前の綺麗な髪と肌の色にしっくりくる」
「ありがとう…凄く嬉しい。ずっと大事にする」
2人からのプレゼントと賛辞にお礼を言う。現金な奴だと思われるかもしれないが、今の喜びは言葉だけじゃ全然表現し足りない。夫たちはそんな私の気持ちをますます膨らませるような言葉をくれる。
「フフ…奥さんの可愛い笑顔を見られて嬉しいよ」
「くくっ…妻が綺麗になって喜ばねえ男は居ねえさ」
降ってきた小さなキスに応じるべく、つま先立ちして愛しい旦那様たちの頬にくちづけた。
その後も複数の店を見て回り、記念となる品々を手にして宿へ戻った。
いつもの時間に目が覚めて夫たちの腕の中からそっと抜け出す。まずは着替え。今日は買い物しながら街を見ることになっているので防具ではなく普通の服。私は少し悩んでからボートネックの半袖カットソーとロングのサロンスカートを取り出した。
服はほぼ自分で作っているけど、ボトムスは圧倒的にロングスカートが多い。それは私が足を出して歩くのを旦那様たちが嫌がるから。例外はコテージ内で、外に出ない日はショートパンツやミニスカートを履くこともあります。ちなみに今日のカットソーはオフホワイト、スカートはモスグリーンです。
キャミソールを脱ぎ、ブラを着けてサロンスカートを巻く。横のボタンを留めていると後ろで動く気配。たぶんエヴァだろう、大抵彼が先に目を覚ます。
その気配は私を後ろから優しく抱きしめ、耳元で囁いて頬にキスする。
「おはようキラ」
「おはよう、エヴァ」
私も挨拶と共にキスを返す。するとレオンがもぞもぞと動き、ベッドに起き上がって目を擦る。妻でなくては見られない彼の可愛い癖です。起きなければならない時はパッと目を覚ますがいつもはこんな感じ。
「キラ…」
「おはようレオン」
座ったまま名を呼ぶレオンの傍に行ってキス。彼も返してくれた。
それから身支度。衣服も含め、日用品などはほとんど私が持っているのでインベントリから出して渡す。レオンは基本的に黒、白、赤の3色で、一言で表すならワイルド系。エヴァはオフホワイトやグレー、ブラウンなどの優しい色合いを好み、すっきりとまとまったコーデが多い。
(…おはようなの…)
そしてみんなの支度が終わった頃、やっとスノウが寝ぼけ眼でふらふらと飛んでくる。鳥といえば夜明けとともに行動する印象があるし、実際ここでも昼間活動する魔物は同じだと聞いたのだけど…ウチの子はちょっとばかりお寝坊さんです。超可愛い。
スノウが居眠り飛行してぽすん、とベッドに落下したので必殺の一声を掛ける。
「スノウ、朝ごはん食べに行くよ」
(…ごはん?ごはんいくの!)
私たちはいつもの食いしん坊反応を見て笑うのでした。
■
宿の1階で朝食を済ませた後、サニーとサックスを連れてショッピングへ。昨日馬車の中から眺めただけだったメインストリートは、実際歩いてみると都会的な雰囲気の店が多い気がする。もちろん武器や防具の店もあるけど食器や工芸品、アクセサリーの看板が目立っていた。
「キラはどこから見たいんだ?」
「えぇと…ちょっと迷ってて」
「ならオレたちの行きたい店からで良い?」
「うん、もちろん」
「じゃああの店に行こう」
「え…」
そう言ってエヴァが示したのはジュエリーショップで、私の脳内からはすでに抹消されていた店だった。鉱石や宝石で有名な街に来たのだから1つくらいはアクセサリーも欲しいと思ってた。でもここは超高級そうだったから即除外したんです。
「ほら、行くぞ」
私は2人に腕を引かれて店へと向かった。
「いらっしゃいませ」
店に足を踏み入れると壮年男性の静かな声に出迎えられた。店内はとても落ち着いた雰囲気で壁も床も綺麗に磨かれた白い石で統一されている。奥の方に並べられている商品がガラスケースなどに入っていない事に少し驚いたが、考えてみればショーケースが無かったのだからこれが普通なのかもしれない。当然ながら警備員らしきマッチョが2人、商品の置かれたカウンターの左右に立っていた。
「キラ、好きなのを選んで」
「え、でも…」
値札が付いてる品の方が少ないんですけど…その値札も結構な額だし、他はどのくらいお高いのか想像が付きません。
「いいからいいから」
「石の街ゴレに来た記念だ」
戸惑い気味な私の肩と腰を抱いてジュエリー選びを促す夫たち。
…確かに今まで訪れたほとんどの街で記念になりそうな品を買ってきた。でもですよ?他と同じ記念品と表すにはこの宝石たちは高価すぎる気がしてしまうんです。
とか思いつつもジュエリーに目がいってしまう。だって並んでいるのはどれも美しい装飾が施されていて…視界に入れば見入ってしまうものばかりなんですもん。
「…」
「これなんかどう?」
「!?」
思わず無言で品を見つめる私にエヴァが示したのは―――おぉ~きな赤い宝石が付いた指輪。昔食べた指輪型の某キャンディーみたいに大きくて、値札無しの中でも明らかに一番高そう。
チョット待った…いくらなんでもそれは…!
まさか本気でそれを薦めてる訳ではないだろうと思うけれど、彼は本気とも冗談とも取れる表情で微笑んでいる。
「…そ、それは、ちょっと…あの…」
「ダメ?じゃあこれはどうかな?」
取り敢えずその宝石は回避しようとすると今度は別の品を指差した。それはダイヤのような宝石に金で装飾がされたネックレス。先程よりもだいぶ小ぶりな事にほっとして『綺麗…』と呟く。するとレオンも傍にあった違うネックレスを薦める。
「これも良いと思うぜ」
「ホント…それも素敵…」
「指輪やブレスレットもあるけど、ネックレスが良い?」
「え…うん。指輪とかだと料理するとき外さなくちゃいけないし…」
私はいつの間にか2人のペースになっている事にも気が付かず、素敵なジュエリーに目を奪われていた。
その時、ずっと気配を消すように黙っていた店の男性が声を掛けてきた。
「商品をお持ちいたしますので、あちらのソファーにお掛けになってごゆっくりご覧になりませんか?」
「あ…」
「そうだね、そうしようか」
「ああ」
「おいでキラ」
おそらく長年宝石を売っているのだろう、何とも絶妙なタイミングである。もう今更遠慮しますとも言えず、レオンとエヴァに導かれるがままソファーへと移動したのでした。
■
「ありがとうございました」
入った時と同じ静かな声に送り出されてジュエリーショップを出た私の胸元にはネックレスが光っていた。石はダイヤ、チェーンはプラチナで創られたもので、大粒ではないが繊細なカットが為された無色透明の輝きが素晴らしい逸品。
か…買ってもらってしまいまいした…。少しだけ心の隅に申し訳ないような気持ちもあるけれど、やはりとても嬉しいです。
「とっても似合ってるよ、キラ。透明感のある君にピッタリだ」
「ああ、お前の綺麗な髪と肌の色にしっくりくる」
「ありがとう…凄く嬉しい。ずっと大事にする」
2人からのプレゼントと賛辞にお礼を言う。現金な奴だと思われるかもしれないが、今の喜びは言葉だけじゃ全然表現し足りない。夫たちはそんな私の気持ちをますます膨らませるような言葉をくれる。
「フフ…奥さんの可愛い笑顔を見られて嬉しいよ」
「くくっ…妻が綺麗になって喜ばねえ男は居ねえさ」
降ってきた小さなキスに応じるべく、つま先立ちして愛しい旦那様たちの頬にくちづけた。
その後も複数の店を見て回り、記念となる品々を手にして宿へ戻った。
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