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14.次の街へ
しおりを挟む【ウインドカッター!】
手を掲げて放った風魔法は、空を飛んでいた魔物の首を落として消えた。
「やった!命中!」
思わず小さくガッツポーズをしてから墜落した魔物を回収しに行く。
今日は街の西にあるニルバの森、正確には隣の草原に来ていた。新たに得た魔法を練習するためだ。
危機察知は常に展開していて、魔力が減ったのは始めだけ。察知出来る範囲は広くないが今まではそれすら無かったのだからありがたい。
土魔法は壁を作れるストーンウォールの他、地面を多少隆起させたり、石つぶてを飛ばしたりは出来た。ただ石つぶてをホーンラビットに当てたら、破裂して肉やら内臓やらが飛び散って無残な結果となったので使えるかといえば微妙である。
そして風魔法。ウインドカッターは森の中でも試したが速さがある分コントロールも必要だった。何度目かで獲物に当たったが、後ろの木までスッパリ切れてしまったので草原に移動し今に至る。
魔物は想像より大きく、翼を広げれば150㎝ほど。赤と白、2色のゴワゴワした羽根にあまり食べるところのなさそうな細い体。どうせならもっと丸々太った鳥が良かったな、などと考えながら解析。
【解析結果】
【名前】フレイムコンドル
【レベル】23
【体力】168
【魔力】120
【攻撃力】39
【防御力】26
【素早さ】43
【スキル】火魔法(E)
【備考】羽根、嘴は防具素材・肉は食用可
食用可、なんだ。食べるとこあるのかな?まあ、いざとなればトリガラにして出汁でもとろう。さて、既に持ってるから出来るか分からないけどEランク火魔法を複製してみようかな。
結果は成功。火魔法(F)が(E)に変わった。
時刻は14時。
朝早くに出てきたのでもう4時間は練習した。コツは掴めてきたのであとは森で採取でもして帰ろうと再び森の中へ。
解析を使って採取しているとき、宙に浮いてる画面を見てふと考える。
解析結果って、この画面で見るしか方法ないのかな?これだと周りに人がいたら使えないし・・・。
そう思った時フッと画面が消えて頭の中に情報が入ってきた。ヘルプを使った時と似た感覚。また画面が見たい、と思うとパッと出てくる。私の思考だけで簡単に切り替えが可能らしい。
便利だねぇ。
その後は必要そうなものを見繕って採り、川にいた魚をストーンウォールで囲んで捕らえ、17時を回ったところで帰路に就いた。
■
ハイミルから馬車で7日ほど北西に行ったところにヴェスタという街がある。そこはとても大きな街で冒険者ギルドと商業ギルド、双方の本部があるそうだ。そこまではやはり乗り合い馬車が出ていて次は明後日。
私は次の目的地をヴェスタに決め、旅支度に取り掛かった。といっても移動は馬車だし、準備するのは食料くらい。街の外でご飯を炊いておにぎりの追加分を作り、肉は下味をつけて焼くだけにした物と焼いた物両方。魚の大きいものは三枚におろして下味を、更に野菜も下ごしらえしておいた。今回は米の他にパン、それに森で採った果物まであるので前回に比べるとバリエーションも多い。
私は乗り物酔いはした事が無いし、最初の頃と違って物も色々揃った。正直いって馬車の旅が楽しみです。
出発当日、7時にギルドを出て馬車の停留する広場へ向かった。8時には発つと聞いたのでギルマスと酒場のマスターには昨夜のうちに挨拶しておいた。
広場には別方向へ向かう馬車も含めて数台停まっていた。その中で一番大きいのがヴェスタ行きで、馬車の前には2人の御者が立っている。誰が見ても親子だと分かりそうな顔立ちの男性たちに声をかけた。
「あの、ヴェスタ行きはこれですよね?乗りたいのですが」
「はい、そうです。ヴェスタ行きです。料金は6,000ギルですが、冒険者の方なら夜の見張りを手伝っていただければ5,000ギルになります」
御者(父)が説明してくれる。もちろん手伝いますよ。
「そうなんですか、ではお手伝いします」
「ありがとうございます。では中へどうぞ、8時なったら出発です」
「はい」
身分証を提示し、前払いで代金を支払って後方から入る。
中は向かい合わせに木の長椅子が並び、隅に小スペースながら荷物置き場があった。長椅子には毛皮などが座布団代わりに敷いてあってポツポツと空きがある。前方の端に空きを見つけ、他に倣って毛皮を敷いて腰を落ち着ける。すると向かいに座っていた男性が顔を上げたので一応会釈しておいた。彼の他はまだ居ない。長旅途中の街だから買い出しにでも行っているのだろう。
…早く来すぎた。
ポケッとしていると男性と目が合ってしまった。
深紅の髪は所謂ショートウルフカットで前髪も上げクールな印象、鋭い金色の瞳、強面だが整った顔、組み直した長い足は黒いパンツとブーツで更に長く見え、上半身は髪色と同じ深紅の革ジャンで覆われている。威圧感があり、10人中9人は怖いと言うだろうが不思議と怖くはない。
たった数秒間だったと思う。
何故か目が離せず、瞬きもせずに彼を見ていた。彼も私を見ているがその視線に全く不快は感じはしなかった。
その時、馬車に他の客が戻ってきた。
普通の旅人らしき若い男が2人と中年の男が1人、そして、冒険者らしき3人なのだが、30歳前後の男1人の両脇にべったりと女冒険者が引っ付いている。なんと女の1人はビキニアーマー、もう1人も防具としての機能はあるのか疑いたくなる装備だ。
人の事言えないけど…。
冒険者の男は何故か私を舐めるように見る。2人の女は一気に不機嫌になってこちらを睨みつけ、男の手を引いて席に着いた。
「全員揃いましたね?では少し早いですが出発します」
御者の一言で馬車は動き出した。
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