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3.廃村で
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森を出て歩くこと4時間、午前1時過ぎ。街道も見当たらなくて本当にこの方角で良いのか不安に思っていた時、古い木の塀で囲まれた村に辿り着いた。
・・・だが、人に会えるかもしれないという期待はアッサリ砕け散った。
疲れた足を引き摺って私が見たものは―――廃村だったのだ。
「…廃村…そういえばまだ80kmなんて歩いてない…」
初めて自然以外の物を見つけてテンションが上がってしまい、すっかり忘れていた。一番近い村が80km先だという事を。
座り込みたいのを堪えて注意深く辺りを見て回る。村はとても小さく、集落と言ったほうが正しい気がした。当然人っ子一人居ない。幸い魔物の気配もなく、木造の家も倒れてはいないので雨風くらいは凌げそうだ。私は中でも一番マトモに建っている家を選んで休む事にした。
中々すんなり開かない扉を何とかこじ開けて入ると、家の中は想像より広かった。窓から入る月あかりが部屋を照らしていて思いのほか暗くも無い。小さなキッチン、埃の積もったテーブルに足の壊れたイス。粗末なベッドには毛布どころか布切れ一枚もなく木が剥き出し。家捜ししてやっと擦り切れた布を見つけ、やらないよりはとベッドの汚れを払った。どんな所でも表で眠るよりはマシだ。
ベッドの上でマントにくるまって目を閉じると、私は瞬く間に眠りに落ちていった。
■
目が覚めたのは6時、習慣とは恐ろしい。あれだけ疲れていたのにいつもの時間に起きるとは。だが起き上がってみて驚いた。昨日の疲れはすっかり回復して頭も冴えている。
グッと体を伸ばした時盛大にお腹が鳴った。そういえば水以外何も口にしていない。インベントリにあるホーンラビットの肉は食用だが生では無理だ。
そこで何か使える物がないか村中を探索してみることに。一応ヘルプに聞いてみたが、棄てられたものなら盗みには該当しないそうなので一安心。
見つかったのは端切れ数枚、欠けたスープ皿と水瓶、火打ち石、焚き木少々のみだが、まだ使える井戸があって水も飲用可だった。何はともあれ水瓶と火打ち石が見つかって良かった。魔法もまだ使えないのでこれは生命線に関わる大きな発見だ。
まずは各家のカマドからスープ皿に灰を集め、水瓶を何度も洗う。許容範囲に達したらスープ皿も同じく綺麗にする。灰自体が若干違うので出来るか心配だったが結果的には成功。次はホーンラビットを捌く。やり方はヘルプに聞いたがもちろん初めてだ。でも捌かなければ食べられないのだからやるしかない。私は気合いを入れて捌きにかかった。
3体あったホーンラビットを全て捌き終え、火を熾し、小枝を削って作った串に刺して焼く。時間がかかってしまったがやっと食料を口に出来た。
私のインベントリの時間経過はまだハッキリしないが、ホーンラビットは入れた時と寸分違わぬ状態だったのでかなり遅い事は確かだと思う。だから肉も新鮮で臭みなどはほぼ感じなかった。塩胡椒でもあれば全く分からなかっただろう。
食べ終えた後ステータスを確認した。魔物を14体倒したのだからきっとレベルが上がっているはず。
【名前】?
【年令】20才
【職業】なし
【レベル】16
【体力】98
【魔力】2300
【攻撃力】36
【防御力】239
【素早さ】60
【スキル】剣術(S)・解析(S)
【固有スキル】複製(F)3/3
【称号】転移人
おお、15も上がってる。でも魔力の上がり方がおかしい気が・・・まあいいか。・・・ん?剣術(S)の文字が光ってる。何かあるのかな?クリックしてみるとメッセージが。
《剣技・薙ぎ払いを獲得しました。確認しますか?》《YES・NO》
剣技?もちろん確認します。YESっと。
画面はスキル一覧に切り替わり、剣術の欄に、剣技・薙ぎ払い(魔力10)とあった。それ以上の説明はない。カッコ内は使用時の魔力消費だろうがこれだけではイマイチ使い方が分からない。ヘルプに聞いてみよう。
スキルには魔力を消費するものとしないものがある、というのは昨日知った。私の持っているスキルで言うと、複製と解析は有りで剣術は無し。しかし、そのスキルを持っていることによって得られる技などは消費有り、なのだ。使い方は解析などど同じく、唱えるというか念じればいいようだ。字面から効果は想像出来るが今度試してみようと思う。
そういえば、剣を装備したら攻撃力は変わるかな?
私はインベントリに入れていた大剣を出して装備し、もう一度ステータスを見た。
・・・え?・・・336?この大剣は300も攻撃力があるって事?・・・そうだ、解析!
【解析結果】
【名前】神弟子の大剣
【種類】神剣
【攻撃力】300
【状態】最高
【備考】神弟子の作品・劣化無し・磨ぎ不要
・・・神、弟子・・・?ほ、他のは?
結果、短剣も、ビキニアーマーも、マントも、全て神弟子の、いや神弟子様?の作品だった。
これも一応チートかな・・・どうりでオークが真っ二つになる訳だ。そうだ、私の装備が神弟子様のものなら、私を転移させたのも神弟子様?
・・・でも物は考えようだよね。おそらく死んだであろう私を、記憶を持ったまま転移させてくれたのだ。それも若返らせて。武器も防具も神様仕様、スキルも最高ランク、魔力も高いし便利そうな固有スキルまである。村までの水と食料も確保出来たし、オークを売ればお金になるだろう。
・・・そう思ったら何だか急に元気出てきた。こうなったら異世界中を巡って、満喫して、好きに生きてみたい。それにはやっぱり冒険者だよね。まずは冒険者になってレベル上げして、旅の資金を貯めよう。
漸く自分の状況をきちんとを把握出来た私は、ひとりで決意を固めたのだった。
まあ・・・魔力の高さと固有スキルは自分の力なのだが、それはまさに“神のみぞ知る”である。
・・・だが、人に会えるかもしれないという期待はアッサリ砕け散った。
疲れた足を引き摺って私が見たものは―――廃村だったのだ。
「…廃村…そういえばまだ80kmなんて歩いてない…」
初めて自然以外の物を見つけてテンションが上がってしまい、すっかり忘れていた。一番近い村が80km先だという事を。
座り込みたいのを堪えて注意深く辺りを見て回る。村はとても小さく、集落と言ったほうが正しい気がした。当然人っ子一人居ない。幸い魔物の気配もなく、木造の家も倒れてはいないので雨風くらいは凌げそうだ。私は中でも一番マトモに建っている家を選んで休む事にした。
中々すんなり開かない扉を何とかこじ開けて入ると、家の中は想像より広かった。窓から入る月あかりが部屋を照らしていて思いのほか暗くも無い。小さなキッチン、埃の積もったテーブルに足の壊れたイス。粗末なベッドには毛布どころか布切れ一枚もなく木が剥き出し。家捜ししてやっと擦り切れた布を見つけ、やらないよりはとベッドの汚れを払った。どんな所でも表で眠るよりはマシだ。
ベッドの上でマントにくるまって目を閉じると、私は瞬く間に眠りに落ちていった。
■
目が覚めたのは6時、習慣とは恐ろしい。あれだけ疲れていたのにいつもの時間に起きるとは。だが起き上がってみて驚いた。昨日の疲れはすっかり回復して頭も冴えている。
グッと体を伸ばした時盛大にお腹が鳴った。そういえば水以外何も口にしていない。インベントリにあるホーンラビットの肉は食用だが生では無理だ。
そこで何か使える物がないか村中を探索してみることに。一応ヘルプに聞いてみたが、棄てられたものなら盗みには該当しないそうなので一安心。
見つかったのは端切れ数枚、欠けたスープ皿と水瓶、火打ち石、焚き木少々のみだが、まだ使える井戸があって水も飲用可だった。何はともあれ水瓶と火打ち石が見つかって良かった。魔法もまだ使えないのでこれは生命線に関わる大きな発見だ。
まずは各家のカマドからスープ皿に灰を集め、水瓶を何度も洗う。許容範囲に達したらスープ皿も同じく綺麗にする。灰自体が若干違うので出来るか心配だったが結果的には成功。次はホーンラビットを捌く。やり方はヘルプに聞いたがもちろん初めてだ。でも捌かなければ食べられないのだからやるしかない。私は気合いを入れて捌きにかかった。
3体あったホーンラビットを全て捌き終え、火を熾し、小枝を削って作った串に刺して焼く。時間がかかってしまったがやっと食料を口に出来た。
私のインベントリの時間経過はまだハッキリしないが、ホーンラビットは入れた時と寸分違わぬ状態だったのでかなり遅い事は確かだと思う。だから肉も新鮮で臭みなどはほぼ感じなかった。塩胡椒でもあれば全く分からなかっただろう。
食べ終えた後ステータスを確認した。魔物を14体倒したのだからきっとレベルが上がっているはず。
【名前】?
【年令】20才
【職業】なし
【レベル】16
【体力】98
【魔力】2300
【攻撃力】36
【防御力】239
【素早さ】60
【スキル】剣術(S)・解析(S)
【固有スキル】複製(F)3/3
【称号】転移人
おお、15も上がってる。でも魔力の上がり方がおかしい気が・・・まあいいか。・・・ん?剣術(S)の文字が光ってる。何かあるのかな?クリックしてみるとメッセージが。
《剣技・薙ぎ払いを獲得しました。確認しますか?》《YES・NO》
剣技?もちろん確認します。YESっと。
画面はスキル一覧に切り替わり、剣術の欄に、剣技・薙ぎ払い(魔力10)とあった。それ以上の説明はない。カッコ内は使用時の魔力消費だろうがこれだけではイマイチ使い方が分からない。ヘルプに聞いてみよう。
スキルには魔力を消費するものとしないものがある、というのは昨日知った。私の持っているスキルで言うと、複製と解析は有りで剣術は無し。しかし、そのスキルを持っていることによって得られる技などは消費有り、なのだ。使い方は解析などど同じく、唱えるというか念じればいいようだ。字面から効果は想像出来るが今度試してみようと思う。
そういえば、剣を装備したら攻撃力は変わるかな?
私はインベントリに入れていた大剣を出して装備し、もう一度ステータスを見た。
・・・え?・・・336?この大剣は300も攻撃力があるって事?・・・そうだ、解析!
【解析結果】
【名前】神弟子の大剣
【種類】神剣
【攻撃力】300
【状態】最高
【備考】神弟子の作品・劣化無し・磨ぎ不要
・・・神、弟子・・・?ほ、他のは?
結果、短剣も、ビキニアーマーも、マントも、全て神弟子の、いや神弟子様?の作品だった。
これも一応チートかな・・・どうりでオークが真っ二つになる訳だ。そうだ、私の装備が神弟子様のものなら、私を転移させたのも神弟子様?
・・・でも物は考えようだよね。おそらく死んだであろう私を、記憶を持ったまま転移させてくれたのだ。それも若返らせて。武器も防具も神様仕様、スキルも最高ランク、魔力も高いし便利そうな固有スキルまである。村までの水と食料も確保出来たし、オークを売ればお金になるだろう。
・・・そう思ったら何だか急に元気出てきた。こうなったら異世界中を巡って、満喫して、好きに生きてみたい。それにはやっぱり冒険者だよね。まずは冒険者になってレベル上げして、旅の資金を貯めよう。
漸く自分の状況をきちんとを把握出来た私は、ひとりで決意を固めたのだった。
まあ・・・魔力の高さと固有スキルは自分の力なのだが、それはまさに“神のみぞ知る”である。
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