異世界ライフは前途洋々

くるくる

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1.目覚めたら異世界

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 ドッシャーン!!

 「ひゃっ!」

  いつの間に眠ってしまったのか、爆音に驚いて飛び起きた私は目の前の光景に更に驚いた。

 「森…?何が…(ドッシャーン!!)…わわッ!」

  ひとり呟くが再びの爆音に身を竦める。と、さらっと顔の横に降りてきた髪が目に入った。

 「えっ…」

  ぎ、銀髪!?コレ私の髪!?

  触って確かめようとすると、ポツリと雫が銀色のアームに当たった。

  ・・・ナニコレ!!

  ガバッと全身を見る。

  ナニこの格好!!い、いや、とにかくこのままじゃマズイ。どこかで雨宿りしなきゃ!

  私は慌てて立ち上がり、凌げる場所を探すべく歩き始めた。




  運良くすぐに見つかった小さな洞窟に入ると、それを待っていたかのようなタイミングでドシャ降りになった。まさにゲリラ豪雨並みの降り方で、ここから身動き出来なくなってしまった。

  洞窟内は高さ2m、幅と奥行きは4、5mといったところ。足元もゴツゴツした岩なので休むには適していなかったが仕方がない。諦めて現状把握に入る事にする。

  何と言ってもまずは体だ。自分を隅々までチェックする。

  随分体が柔らかくなったがそれは置いといて・・・身長はたぶん同じ165㎝くらい。サラサラした綺麗な銀髪はポニーテールになっていて下ろせば結構なロングだ。顔は分からないが視力は良いらしい。眼鏡が無くても視えるなんて何年振りだろう。肌が白く、胸は大きくなった。おそらく95㎝はある。ウエストはかなり懐かしい・・・いや、それ以上の細さ、お尻もキュッと上がっていて足も長い。それに・・・何というか、全体的にむっちりしていて妙にいやらしい感じがする。どこのエロゲ・・・いや、つまり、私ものではない。

  そしてこの格好・・・。

 「何でビキニアーマー・・・」

  思わず呟く。

  そう、今の私の装備はビキニアーマーなのだ。全て光沢を放つ銀色の金属で出来ていて、所々金色の縁取りや装飾がある。腕と脚はアームとグリーブに覆われ、左腕には手甲がはめられているがお腹は丸出し。武器はない。

 「どうなってんの…夢…じゃない、よね………私、どうしたんだっけ?」

  目に映るものの鮮明さ、雨の冷たさ、木や葉、岩の感触、どれを取ってもとても夢には思えない。記憶を手繰ってみても電車に乗った辺りまでしか思い出せない。・・・いや、体に何だか物凄い衝撃を受けたような気がしないでもない・・・もしかして私、死んだのかな?




  藤堂晶とうどうあきら、39才、女。

  女手一つで育ててくれた母が随分前に他界したのでもう家族は居ない。結婚寸前までいった彼と別れてから恋人も居ない。そう言うと寂しい人だと思われがちだが私は子供の頃からひとりが好きだった。大人になってもそれは変わらず、おひとり様で何処へだって行く。趣味は?と聞かれたら絵を描く事、と答えるだろうが他にもある。編み物や刺繍、アクセサリーの手作り、物作りの細かい作業が好き。でもインドア派という訳ではなく良い景色を探して歩くのも好き。そこで風景画を描くのだ。

  そして最もハマっているのがゲームとネット小説で、すでに生活の一部となっている。なにせゲームはファミコンの時代からやっているのだ。アクション、RPG、パズル、シュミレーション、アドベンチャー、恋愛、PCのエロゲーに至るまで幅広いジャンルを網羅した。ネット小説は恋愛ものも読むが一番好きなのは異世界転移もの。転生より転移が好き。日々好みの物語を読み漁っている。




  そんな私が今置かれている状況は、異世界転移や転生に近い気がしてならない。それもこのビキニアーマーから察するに剣と魔法のファンタジー。試しにステータスオープンを念じてみる。

  と

 パッと目の前に画面が現れた。それはゲームではよくある半透明の液晶画面で・・・思わず画面の裏や下を覗いてしまった。




 【名前】?
 【年令】20才
 【職業】なし

【レベル】1
【体力】35
【魔力】520
【攻撃力】8
【防御力】208
【素早さ】19

【スキル】剣術(S)・解析(S)

【固有スキル】複製(F)・3/3

【称号】転移人




  読めるけど日本語じゃない・・・それに転移人・・・これで私が異世界転移した事が確定した。事実は小説よりも奇なり、である。

  それにしても・・・名前の?マークはナニ?私は名無しなの?年令20才って半分なんですけど?レベル1なのに魔力だけ高すぎやしませんか?防御力208ってビキニアーマーの効果ですか?剣術と解析のSってもしかしてランクかなんかですか?何でS?固有スキルの複製って?

  疑問は尽きませんが、それよりも重大な事実が判明しましたよ。現在ワタクシ、所持金ゼロです。画面右上に、所持金0ギル、とハッキリ記載が・・・あぁ、その横に時間表示がありました。只今の時刻、13時20分です。これはどうしたもんか・・・バッグも身に付けていないので持ち物もない。お金も武器もない状態でどうしろと?うーむ。

  唸りながら画面を睨んでいると下の方にインベントリの文字を発見!これはもしかしてアイテムボックスの類いでは!?と若干の期待を胸にタッチしてみる。すると中身一覧のリストに切り替わった。カテゴリ別に分かれている。

  あったのは大剣1本、短剣1本、マント、それに・・・最新版異世界案内ソフト(地球人向け)。

  まあ・・・どこも世の中甘くない、って事だね。剣らしきものの経験なんて学生の時の剣道部くらいだが、武器があっただけマシでしょう。

  まずは短剣を出すため文字をタッチしてみようとすると手の中にフッと短剣が出現した。

  おお、便利。

  ベルト付きだったので腰に装着し、抜いてみる。刃物なんて包丁位しか持った事がないのに何故かしっくり手に馴染む。剣スキルの効果だろうか。大剣も出して構えてみるとやはり違和感はないし重くもない。岩壁に気をつけながら少々振る。・・・使えそうだ。

  大剣はしまっておいて、最新版異世界案内ソフト(地球人向け)を取り出・・・せない。首を傾げていると画面にメッセージが。

  《インストールしますか?》《YES・NO》

  もちろんYES。

  《インストール中……………正常に終了しました。これより案内を開始します》

  ヴンッ、と起動音が鳴ってまたメッセージが。

  《これは転移地球人向けの異世界案内ソフトです。質問は音声と思考、両方で受け付け可能。常時起動可能》

  つまり頭の中で質問しても返してくれるって事?声に出さなくていいのは周囲にバレないので助かる。早速使おう。

  とりあえずこの世界の基本的な事を聞く。すると頭の中に情報がしみ込む不思議な感覚がした後、私の知識として認識出来るようになった。




  この世界は4つの大陸と無数の島々から成っていて大陸にはそれぞれ国がある。1年は12ヶ月、ひと月30日、1日24時間、曜日はなく、休みなどはキリの良い5日おきで分かりやすい。四季はあるが、季節は大陸によって長さや厳しさが違う。魔物も出るし魔法も存在、冒険者ギルド、商業ギルドなどもあるが種族はヒューマンのみ。

  貴族制度は廃止されたものの貧富の差は激しい。また犯罪者は奴隷落ち、というのがここでの定石なので奴隷も当たり前のように存在している。

  戦争は昔召喚された勇者により終結し、現在は平和協定が結ばれて国同士で輸出入も行われている。魔法がある為文明は発達途中だが家電的魔道具は一応ある。但し少々お高め。食については調味料の点でいえば米、醤油、味噌なども揃っている。




  雨は止まない。することもないので次はステータスについて。




・ステータスは生あるもの全てに存在する。
・魔力がゼロになると気を失い、体力がゼロになると・・・死んでしまう。
・インベントリも皆持っているが、容量や時間経過は魔力が反映されるので人様々。
・レベルは日常生活でも上がるが魔物を倒した方がはるかに効率が良い。
・スキルは先天性と後天性があり、ランクが存在する。
・ランクはF~A、Sの7段階あり、FとEは下級、DとCは中級、BとAは上級、Sは最上級となる。
・後天性は素質があれば訓練する事で得られる。
・スキルランクは一定の条件クリアで大概アップする。
・スキル所有数は普通で4、5個、多くて7、8個、稀に10個。
・固有スキルの所持率は100人に1人位。
・スキル行使には魔力を消費するものとしないものがある。
・全ての経験値には個人差があり、限界も人によって違う。




  まとめるとおおよそこんな感じ。情報を一度に詰め込み過ぎかもしれないが後ひとつ、私の固有スキルである複製について聞いた。

  これは簡単に言えば命あるもの以外を複製出来るスキル。食材や道具などの形ある物はもちろん、他人のスキルも複製出来る。だがランク毎に使用回数制限があり、使い切ると翌日まで回復しない。他人のスキルは複製スキルと同ランクにしか使えないし、物も最低ランクでは簡単な物のみ。

  ステータスにあった3/3は使用回数だったんだ。まだイマイチピンとこないが、回数制限があるならある程度慎重にならなければいけない。優先順位は、水、食べ物、回復系スキル、魔法スキル、といったところだろう。解析があるんだから食べられる物の見分けはつく。晴れたら早速行動開始だ。

  私は雨が止むのを待った。

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