異世界ライフは前途洋々

くるくる

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181.顔合わせ

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 コテージに帰った私たちは、昼食を済ませてから冒険者ギルドに向かった。

 有事の際はもちろん、通常でも街の守りとして重要な立場にあるSランクパーティーは、拠点としている街のギルマスと顔合わせをしておく必要かある。暫くシラコワに滞在することが決まった私たちも、ここのギルマスには挨拶しておかなければならないのだ。

 なので今日の目的はギルマスへの挨拶である。




 最近は外で待つ事が多いスノウたちと別れてギルド内に入る。14時という暇な時間帯だが冒険者はそこそこ居て、皆思い思いに過ごしている。確かにギルドは冒険者同士の交流場所でもあるが、やはりここのような緩い雰囲気は珍しい。

 まずは空いている窓口へ。

「ギルマスに会いたいんだが」
「お名前とご用件をお願いします」

 レオンがカウンターにパーティーのカードを出す。

「Sランクパーティーのレックスだ。ギルマスに挨拶したい」
「…!少々お待ちください」

 カードを見て目を見開いた受付嬢は足早に奥へ消え、少しして戻ってきた。

「ご案内します。こちらへどうぞ」

 私たちはギルマスの執務室へと案内された。




「おれがシラコワの冒険者ギルドマスター、ジキルだ」
「サブマスターのスカーレットです」

 執務室にはマスターとサブマスターが揃っていた。

 ギルマスのジキルさんは見た目50代、スキンヘッドとつぶらな瞳、筋骨隆々な体をしている。声も何だかドスが効いているし、これでサングラスでもかければ外見は完璧にヤクザだが瞳は可愛い。

 そしてサブマスターのスカーレットさんは物凄い金髪美人…いや、美男子だ。名前だけ聞けば女性かと思いそうだが、とにかく綺麗なその顔立ちは神秘的で中性的。身体もあまり筋肉は無いようだし、服装によっては男女どちらにも見えるであろう不思議な人だ。年齢も想像が付き難い。

「レックスのリーダー、レオハーヴェンだ」
「エヴァントです」
「キラです」

 簡素な自己紹介を終え、促されてソファーに腰掛けるとジキルさんが話し始める。

「カードは確認させてもらった。…全員Sランクのパーティーなんて初めて見た。しかも…いや、話が逸れたな。それで?」
「俺らは旅の冒険者だが、暫くの間シラコワに滞在することになったから挨拶に。期間は1年前後だ」
「理由は?」
「妻が妊娠中だからだ。子が産まれて落ち着くまで一か所に留まる事にした」
「そうか」

 旅の冒険者が1つの街に何か月も滞在することはあまりないが、私を見た時点で分かっていたのだろう。2人はすんなり納得した。

 次にスカーレットさんが口を開く。

「Sランクパーティーの役割はあなた方もご存じでしょうが、念のため申し上げておきます。奥さんが妊娠中でも、有事の際にレオハーヴェンさんとエヴァントさんのお2人には協力していただくことになりますがよろしいですか?」
「ああ、承知している」
「…ありがとうございます」
「俺らの他にSランクパーティーは?」
「シラコワには居ません。Aランクパーティーは居ますが」
「そうか」
「滞在地をお聞きしても?」
「カルマさんの土地を借りている」

 カルマさんの名が出た途端、2人が一瞬目を見開く。

「カルマ婆さんが土地貸したのか?」
「そうだが、それがどうかしたか?」
「いや…カルマ婆さんは色々賃貸条件が厳しくて、クリアできた奴はあまりいないからちょっと驚いただけだ」

 商業ギルドでならともかく、冒険者ギルドにまで知られてるなんて…厳しくて有名な人なんだ。でも私がそう思ったのは初対面の時の僅かな間だけ。それも訳あってのことだし、本当はとても優しい人だと思うな。

「とにかく、一時的にでもSランクパーティーが街に居るのは有り難い。よろしくな」
「こっちこそ、よろしく頼む」

 ジキルさんとレオンが握手を交わす。

 その後いくつか質問し、一応依頼もチェックしてからギルドを後にした。




 その頃執務室ではジキルとスカーレットがレックスについて話していた。

「レックス…何処かで聞いたような…」
「ラッキーシンボルですよ」
「おお、それだ!」

 ポンッと手を打つギルマス。

「同一人物だと思うか?」
「ええ、おそらくは」
「凄えな…」
「そうですね、同感です」
「珍しいな。お前が手放しで褒めるなんてよ」
「…対面しただけで圧倒的強者であることが分かるような相手に対して、他にどう言えと?」
「それもそうか…」

 窓から外を眺めていたスカーレットの視線は、帰路に着こうとしているレックス一行に注がれていた。





 ◼️





 その日の夕食後。

「これで挨拶やら何やらは済んだな」
「だね。ちょっと慌ただしかったけど、キラ疲れてない?」
「うん。大丈夫」
「そう?良かった。後4日も経てば安定期だし、それまではのんびりしよう」
「そうだな。大森林の情報集めと依頼消化はその後で良い」
「あ、なら温泉に行きたいな」
(おんせん!スノウもおんせんいきたいの!)
(オレ モ)

 私の希望にテーブルの上に居たスノウとスレートも賛成の声を上げる。

「そういえばまだ行ってなかったな」
「そうだったね。じゃあ明後日辺りにでも行ってみる?」
「ああ、良いぜ」
(やったぁなの!)
(バンザイ)
「ふふ、楽しみだね。サニーとサックスが入れないのは残念だけど」
「ここでも飲料用を売ってれば、複製で増やして馬体を洗ってあげられるんだけどね」
「そうだね、あれば良いな」




 こうして大まかな予定を組み終えた後、コテージのバスルームでゆっくりと温まってから眠った。 

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