セカンドライフを異世界で

くるくる

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33話 嫉妬と羨望

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 ガダルからの事情聴取も終わった。

 「今日は驚かされてばかりだな!盗賊を生け捕りにしてくるわ、可愛い嬢ちゃんを連れてるわ、嬢ちゃんはスキル持ちだわ、シザーは相変わらず賢くて可愛くねえわ!ワハハハ!!」
  豪快に笑うヴァンダイクさん。耳が…キーンとします…。
 「…マスター。ボリューム」
  オリオンさんが静かに窘める。何故か彼女は平気のようだ。
 「ハッ!ス、スマン」
 「そ、それで、アジト壊滅はいつに?」
ザウスさんが耳を押さえながら聞く。
 「うむ、早い方が良いな。…シザー、ロイ、嬢ちゃんも、行ってくれるか?」
 「ああ」
 「もちろん」
 「はい」
  それぞれ返事をする。
 「じゃあ、ギルドからはわたしが行くわ~」
  シャモワさんが名乗りを上げると、トリトンさんたちが3人で顔を見合わせてから続いた。
 「俺たちも連れていって下さい!」
  それを聞いたシザーが彼らを睨む。彼らはビクッとしながらも目を逸らすまいと必死だ。
 「…レベルは」
 「20です」
 「18、です」
 「俺も、18、です」
20はトリトンさんだ。
 「実践経験は」
 「魔物ならありますが人とは今回が初めてでした」
 「お前らのレベルはナツメより低い。アジト壊滅には精神的な覚悟もいる。手を引け、面倒見切れねえ」
 「そんな!」
 「ナツメちゃんって結構レベル高いのね~。…シザー、連れてってあげたら~?敵の人数も少ないし、手下が増えたと思ってさぁ」
 「手下なんざいらねえ」
 「あんたもこの子達くらいの時だったじゃない。何事も経験よ、後はそれを生かすも殺すも本人たち次第」
 「いいんじゃない?連れてってもさ。あれは僕らの考えを変えた貴重な体験だった」
  シャモワさんとロイさんが援護する。
 「「「お願いします!」」」
  3人に頭を下げられてため息を吐く。
 「…しょがねえな。分かったよ」
 「「「ありがとうございます!」」」

  そして作戦会議が始まった。盗賊の残留組は9人、捕まっている女性は8人。アジトまでは馬車で丸1日かかる。決行は日が沈んでからなので、出発は明日の正午。馬車2台と馬は全部で8頭、御者さんも行ってくれることになり、その他細かい打ち合わせをして明日11の刻集合となった。

  マスターの部屋を出る時、私はオリオンさんに他にも準備したいものがあるとお願いした。オリオンさんは快く引き受けてくれた。

  時刻はもう21の刻だ。今日はギルド内の宿に泊めてもらう事になっている。公衆浴場の隣にある食堂(夜は酒場)で夕飯を済ませ、そのまま24時間やっているという公衆浴場に寄る。中は日帰り温泉の施設に似ていた。軽食や飲み物が飲めるカウンターとテーブルがある。ここでお風呂上りの一杯を楽しめるようだ。

  男女に分かれた扉の前でシザー達と別れ、中に入る。やはり女性の利用者は少なく、数人しかいない。その中にひときわ目立つ女性がいた。白銀に光る長い髪、女性らしい曲線の身体、すらっと伸びた長い脚、そして小さな顔には美しいオッドアイの瞳。誰もが振り返るような美貌に思わず見惚れてしまった。その女性が浴場に入り、ハッと我に返って自分も入浴を済ませた。

  女性の扉を出ると皆が一か所に注目している。気になってそちらを見ると、そこに居たのはシザーと楽しそうに会話するオッドアイの女性だった。

  呆然としてその光景を見る。私にはとても着れなさそうな色気漂うドレスに身を包み、魅力的な微笑みを浮かべている。彼女がシザーの手に触れ、つつっと指を動かす。シザーもその手を跳ね除けはしない、されるがままだ。私にも気が付かない。胸がぎゅうっと締め付けられ、切なくなる。泣きたくなって慌てて俯き、そのまま逃げるように1人で外に出た。

  さっきの光景が頭から離れない。シザーがあんな風に私以外の女性と話しているのを初めて見た。

 「お似合いだったな…」
  思わず呟く。
 「誰がだ?」
  突然後ろで声がして驚いて振り向く。
 「シザー…な、なんでもない」
 「なんでもねえって顔じゃねぇ」
 「…ちょっと疲れちゃっただけ」
 「俺の顔見て言え」
 「…」
  どうしよう、今顔見て話したら泣いちゃいそう。そしたらシザーを困らせるだけだし…。
 「本当に、大丈夫だか…きゃっ!」
  言い終わる前にガバッと抱き上げられる。お姫様抱っこだ。
 「シザー!お、降ろして…」
 「ダメだ」
  即否定してそのままギルドに向かう。中に入ると一気に視線が集中して、恥ずかしくて顔が熱くなる。もう何も言えなくなってしまい、シザーの肩に顔を埋めた。











 宿の部屋に入ると、広いベッドに押し倒されて口を塞がれる。いつもの激しさとは違う、どこか縋るような唇に違和感を感じて閉じていた目を開く。目の前にあるシザーの瞳は不安に揺れていた。

 「シザー…?」
  何でシザーがそんな顔をするの?
 「ナツメ…何で、1人で外に出た?」
 「だって…シザー、女の人といた」
  哀しみを帯びた瞳を見たら、つい言ってしまった。
 「…あいつは娼婦だ。前にロイと娼館に行った時の女だ」
 「娼館…そっか」
  私と会う前のことだし、気にしなければいいんだろうけど…。
 「名前も覚えてない女だ。関係ねえ。…気になるか?」
 「…大丈夫。ごめんね、ちょっと驚いただけだから」
  そう言って笑顔を作る。嘘を吐いた。気にならないはずがない。でも彼が関係ないと言うのだからこれ以上は話さない方がいい。醜い嫉妬心を曝して嫌がられたくない。
 「…本当のことは話してくれないのか?」
 「え…」
 「何で我慢する?俺には我が儘言ったっていいんだぜ?」
 「あ、あの…でも」
  我慢してない、と言えばよかったと思ったがもう遅い。
 「妬いてくれたかと思ったんだがな…」
  頬を撫でられる。
 「俺の勘違いか?」
 「シザー…勘違いじゃない、よ。妬いた、すごく。だってあの人、背が高くて、綺麗で、大人っぽくて、色っぽくて…。シザーとお似合いに見えて…。小さくて子供っぽい私とは正反対」
  言っちゃった…。私、今きっと嫉妬と僻みで酷い顔してる。見られたくなくて両手で顔を隠す。
 「…俺の女を貶めるといくらお前でも怒るぜ。…顔、見せろ」
  静かに私の手を握って避ける。小さな両手はシザーの片手で包まれてしまう。
 「…私も怒られるの?」
 「ああ、俺の女は優しくて、可愛いのに綺麗で、無垢に見えるのに艶やかで…最高の女だ」
  握った手にちゅっと音を立ててキスする。
 「シザー…」
 「分かったらもっと自信を持て」
 「じゃあ、私もシザーにお願いしてもいい?」
 「ああ、いいぜ」
 「…他の女の人にさっきみたいに触らせないで」

  ただ触ったんじゃない、誘うように動いた指にされるがままだったのが一番嫌だった。

  下から睨むと、何故か嬉しそうに目を細める。握っていた手を放すとキスの雨を降らし、身体を弄り始める。
 「んっ、あ、ふ、シザー」
 「あれは面倒だから放っておいただけだ。…だが初めてだな、そんな風に言ってくれたのは。嬉しいぜ、凄く」
 「嬉しい…の?」
 「お前は皆に優しいからな。独占欲があるのは俺だけかと思ってた」
 「そんな事ない。言ったら嫌がられそうで…」
 「嫌な訳ねえだろ、ナツメこそ嫌じゃねえか?まあ、止めてはやれねえけど」
 「嫌じゃない。…嬉しい」
 「ナツメ…」
  蕩けるような声で甘ったるく呼ばれて、きゅうん、とする。
 「シザー…好き、大好き」
 「ッ!…煽った事、後悔すんなよ」

  瞬時に獣の瞳へ変貌して噛みつくように唇を奪い、まるで犯すように口内を舌で蹂躙する。服をがばっと捲って乱暴に胸を掴み乳首を引っ張る。痛いくらいの刺激に声が出かかるが、隣に聞こえそうで堪える。

 「ぁんン!ん!ッン!」
 「我慢するな、声出せ」
 「ン!や、と、なりに、聞こえ、る」
  イヤイヤするように首を振ると、ショーツを剥ぎ取り、指を入れて膣内を掻き回す。ぐちゅぐちゅと蜜の音がして、すでに濡れていた事が露呈してしまう。
 「んはぁ!あッ、ひ、んン、ん、おねが、い」
  ビクビクと背を逸らせながら懇願する。
 「初めから防音してある。…好きなだけ喘げ」
  そう言うとグリグリ陰核を潰すように捏ねて膣内と同時に責め立てる。舌は乳首にねっとりと絡まって蠢き、唾液が乳房を濡らしていく。防音してあると聞いて我慢していた声が漏れ、タガが外れたように絶え間なく淫らな声を上げて悶える。
 「あぁん!あ、あッ、りょうほ、う、は、ぁン!ダメ」
 「何で。気持ちイイだろ?」
 「すぐ、イッちゃ、う、からぁ、あッ、ひぃん!」
 「何度でもイッていいぜ」
  愛撫が激しさを増し、私を高みへ押し上げる。
 「あはぁン!ッん、ンひぃ!イク!あッ、あ、っああああ!!」
  シザーの首にしがみつき、裸体を震わせながら快感を味わう。そのまま余韻に浸る間もなく、イッたばかりでヒクヒクしている秘所をシザーのモノで一気に奥まで貫かれる。しがみつく私を片手で抱え込んで思いっきり腰を打ち付ける。
 「あぁ!ナツメ!っン」
 「あんン!あッ、んふぅ、んん」
  互いに夢中で腰を振り、唇を奪い舌を絡め合う。
 「あひぃン!あッ!シザァ、またイク、あ、ああぁー!」
 「うぁ!っは!俺もイク、ナツメ、ぁあああ!」
  お腹の上に熱い欲望が放たれる。心も身体もシザーで満たされ、幸福に包まれながら私の意識は夢の中へと落ちた。

  夜中に目が覚めると、シザーが私を眺めていた。その幸せそうな表情に惹かれて口づける。

 「起こしちまったか?」
  腕の中にいる私の髪を優しく指で梳かす。
 「何となく目が覚めただけ…っんン」
  首筋を撫でられてくすぐったさに身を捩る。
 「ナツメはここも感じるのか?」
 「ちが、う。くすぐったいだけ」
 「そうか?それにしては甘い声だったぜ」
 「そんなこと、ない。っあ、ン…いじわる」
  ククッと笑うシザー。そこでベッドのシーツが替えられていることに気が付く。
 「シザー、シーツ替えてくれたの?」
 「ん?ああ」
 「…替えたシーツは?」
  嫌な予感がします。
 「宿の奴に渡した」
  …的中です。行為後のシーツを他人に洗われるなんて…は、恥ずかしい。一緒に宿に泊まったのは初めてだったからそこまで気が付かなかったよ。うぅ。

  実はシーツよりも恥ずかしい事をすでにしでかしている。ここはギルド内の宿で冒険者以外はまず泊まらない。聞かれたくない話はこんな所でしない。即ちここで女を抱きでもしない限りは風魔法の防音なんて必要ない。防音した時点でやってますと言っているようなものなのだ。それに、強い冒険者は娼婦からも街の女からもモテる。だから冒険者の男しかいないこの宿に、女を連れてきて抱く事が強さのバロメーターになる。ついでに俺の女に手を出すな的な宣言にもなっている。もちろんそれがイイ女であればあるほど効果は絶大、比例して嫉妬と羨望も大きくなる。

  そのことをナツメだけが知らない。当然シザーは確信犯である。ロイはともかくとして、同じくここに泊まったトリトンたちや御者の2人は悶々とした夜を過ごしたのだ。











 翌朝、昨夜遅かったのにいつもの時刻に目が覚めた。まだぐっすり眠っているシザーの隣で裁縫を始める。布はあるから多めに作っておきたい。時刻が少なくて出来るか心配だったが、スキルレベル4はさすがに速い。充分間に合わせることができた。

  7の刻、シザーが目を覚ました。

 「おはようシザー…んっ」
  目を開き、私を見つけて目を細める。頭の後ろに手が伸びて引き寄せられ、そっと唇を重ねる。
 「早いな、どうした?」
 「いつもの時刻に目が覚めちゃっただけ」
 「そうか…ナツメ…」
  もう1度唇を寄せる。今度は舌が歯列をなぞり、口内をゆっくりと味わうように堪能する。指で首筋を撫でられて身体が反応する。
 「んン、んふぅ…っあぁん」
  もう片方の手が胸をやわやわを揉むと声が漏れてしまう。
 「あぁ、あッ、ン、だめぇ…」
 「なあ…」
  シザーが言いかけた時だった。
 「おはよ~!入るよ!」
  ロイさんだ!サッと離れて乱れてもいない服を直すとドアが開いた。
 「おはよう、ロイさん」
 「ナッちゃん、体調はどう?大丈夫?」
 「え?うん…大丈夫だよ…?」
 「ロイ、余計な事言うな」
  邪魔されたシザーは不機嫌だ。
 「…やっぱりね」
 「うるせえ、飯行くぞ」
 「やっぱり??」
  ロイは全てを知っている。オッドアイの娼婦も、お姫様抱っこでギルドの宿に向かった事も、当然それが示す意味も。その意味をナツメが知らないであろうという事まで。だからからかい半分、心配半分で様子見にきたのだ。まあ心配は無用だったようで一安心だ。

  8の刻、いつもならガラガラに空いているはずの宿の食堂は満席に近い状態だった。普通の女は一夜を宿で過ごしてもここで朝食を取ったりしないで帰るものだが、ナツメは冒険者だ。それならここでナツメが見られる、という訳である。

  当の本人はというと、視線はもちろん感じていたがリグレスでも初めはそうだったし、珍しいのだろう、くらいにしか思っていなかった。お姫様抱っこの件もあるし、恥ずかしいには違いないが。後から来たトリトンたちに挨拶したら真っ赤になって視線を逸らされ、首を傾げるのだった。

  朝食の後宿を出てオリオンさんの元へ行き、昨日頼んだ物を一緒に準備、確認する。シザーとロイさんも馬や馬車の準備を手伝っていた。

  集合時刻前には皆揃い、最終確認をして予定通りに街を出た。馬8頭の内、4頭は2台の馬車を引き、4頭はトリトンさん達とロイさんが乗っている。シャモワさんは御者の馬車で1人のんびりしている。そしてもう1台の馬車にはシザーと私が乗って一番前を走った。私は馬車を操るシザーの隣に座って彼の手綱捌きに見惚れていた。

  そして夕刻、予定より少し早く今夜の野営地に到着した。
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