セカンドライフを異世界で

くるくる

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15話 神様再登場

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 リグレスに着いたのは夕刻。まずはギルドに寄る。依頼達成を報告した後、使わない魔石や素材を売って外へ出る。するとギルド前に繋いであった馬の傍にマルコが居た。私達を見つけると、飛んできて私に抱きついた。

 「おかえりなさい!」
 「マルコ…何で兄ちゃんのトコに来ない…」
  ロイさんが情けない声を出す。
 「悪かったな、今回は色々あって遅くなった」
  シザーがマルコの頭を撫でるとやっと顔を上げて言った。
 「兄ちゃんたちもお帰り」
 「ただいま」
 「おう。さ、厩に入れちまおうぜ。マルコ、親父さんは家か?」
 「うん、家に居る」
 「そうか、じゃあ行こうぜ」
  セクロさんに、ノース村の甜菜糖…じゃなくてビート糖の報告をしに行くのだ。
ノース村の依頼は全てリグレスに来る。今後の依頼の中にビート糖の事もあるかもしれないのだ。事前にギルドに知らせておかないと混乱を生むかもしれない。

  厩に馬を預けてから、リビングに居るというセクロさんの元へと向かった。












 一通りの話を聞いてセクロさんが唸る。

 「う~む、まさかビートから砂糖がな…それに共同の畑に全員での作業、利益の分配、初めて聞くな。だがうまくいけば、あの村はやっと貧困から脱出できるな。よし、分かった。モーブとサラには話しておく。後は依頼が来た時に内容を見て考えよう」
  と、そこまでは真剣に話していたが、私を見て満面の笑みを浮かべた。
 「いや~、それにしてもナツメ君はなんて頭が良いんだ!謙虚で慈愛に満ちていて…まるで女神様の様だ!」
  いえ、それは幻覚です。と言いたいのを何とか堪えた。
 「親父もそう思う!?だよね~!」
  ロイさんも同意している…似た者親子だね。シザーはというと、接触していないからか黙って聞いていた…。

  その夜はマルコにせがまれて、そのまま泊まらせてもらう事になった。シザーが若干不満そうな顔をしていたが、マルコも寂しかったのだ。今日くらいは大目に見てもらおう。

  夕食をご馳走になり、お風呂もマルコと一緒に入った。久しぶりの湯船は最高だった。マルコを寝かしつけ、しばらくその可愛い寝顔に癒された後3人でお茶を飲む。場所はマルコの部屋の隣、ロイさんの部屋だ。取り止めのない話をしていると、ふと思いついたようにシザーが話す。

 「レベルの上がり方がおかしいんだよな…明らかに速い」
  それを聞いてロイさんが首を捻る。
 「いつから?」
 「ノースに行く時からだな」
  シザーがそう言った途端、明かりが消えた。
 「きゃっ!」
  驚いて声を上げた私をシザーが抱きしめる。

 「お~め~で~と~う~ご~ざ~い~ま~~~す!!」
  カランカラン!!と福引を当てた時の様なベルの音と共に、間延びした声が響いた。次の瞬間。

  そこに居たのは、神様だった…。

  シザーが私を庇うように立つと大剣に手を添える。いつでも斬れる体制だ。ロイさんも剣に手を掛けている。私は慌てた。
 「待って、2人とも!神様!相手は神様だから!剣は納めて!」
 「神様!?ホントに!?」
 「こんなふざけたのが?」
  口々に失礼な事を言う。…気持ちは分かるけど。淡く光っている神様を見る。

 「色々失礼な事考えるのは止めた方が良いですよ。全部聞こえてますから」
 「すみません…お久しぶりです。で、今日は何しに?そのベルはどうしたんです?」
 「え、キミのいた所では何か当たるとコレ鳴らしますよね?懐かしいかと思って真似してみたんですけど…お気に召しませんでした?」
 「へ、は、い、いえ。そんな事はないです。それで?」
 「流しましたね…、まあいいです。用事は彼ですよ、シザーさん。最近おかしいんでしょう?」
  とシザーの顔を見る。
 「レベルの事か?」
  …神様相手でもタメ口なんだね。
 「…そうです。それは同調したからですよ、彼女と愛を誓って体液を交換したでしょう?だから彼女と同調して、固有スキルの獲得経験値2倍の効果でレベルが上がったんです。完全に同調するのはかなり稀なケースですよ。条件が難しいですからね」
 「同調?ナツメの固有スキルが、俺にも効果があるって事か?そんな事が…でもそう考えると納得だな。一時的なものか?」
 「いえ、同調は一度してしまえば、後は余程の事がないとそのままです。他にもちょっとした利点があるんですが、まあそれは体験してみてください」
 「…嘘じゃなさそうだな。あんた本当に神か」
 「信じてもらえました?助かりましたよ」
  一瞬黙る。
 「…ここで少しでも力を開放したら、街どころかこの辺一帯が消滅しますからね」
  途端に今までの穏やかさは鳴りを潜め、神様の目に冷たい色が宿る。

 「…」
 「…」

  場に沈黙が降りる。消滅…思わずシザーに掴まる。ロイさんは黙って静観している。

 「…」
 「…」

 「…いや~、シザーさんに嘘は付けそうにありませんね。参りましたよ」
  破ったのは神様。私が分からずに戸惑っていると神様がニコッと笑って言った。
 「男前で強くて頭もいい。その上物凄く勘が良い。あなたと体液交換まで…なんてうらやましい!って事でちょっと脅かそうと思ったんですが、見破られてしまいました」

  え、あの…体液云々って…かなり、かなり!恥ずかしいんですけど!

 「…教えてもらって助かったが、本当の目的は?」
  剣呑な雰囲気を出すシザー。私を抱き寄せる。
 「そ・れ・は、彼女の顔を見に!だって~、私の奥さんと同じ顔なんですよ!胸の大きさは多少違いますが、優しい所もそっくりです!彼女は私の女神なんです!」
  両頬に手を当て、恥ずかしそうに言う神様。…ここにもいた。第3のロイさんだ。いや、神様の方が先か。
 「さすが神様!分かってらっしゃる!そうです!ナッちゃんは女神様なんです!」
  ロイさんが興奮気味に話しに割って入る。
 「おお!人族にも同志がいましたか!」
 「はい!もちろんです!」
  やり取りを聞いていたシザーがため息を吐いた。
 「そうでしょう、そうでしょう!…ん?」
  神様がふとロイさんをじっと見る。
 「どうかしました?」
 「…ここにも珍しい方がいましたね~!ロイさん、魔法が得意でしょう?」
  突然の質問に戸惑いながら答える。
 「ええ、まあ多少は」
 「多少じゃねえだろ。ロイはMPもエルフ並みに多いし、使える属性も多い」
  シザーが代わりに教えると、神様はフムフムと頷いて聞いている。
 「でもまだです。あなたの心にはまだまだ魔力が眠っている。誰しも多少の余力がある物ですが、ロイさんのは桁が違う。…属性もまだありますねえ。闇はまだ使ったことがないですか?」
 「な、ないです」
 「そうですか…こんな良い物を眠らせておくのは勿体無い。起こしてあげましょう、ロイさんなら悪い事には使わないでしょうしね」
 「え、う、嬉しいですけど何故?」
 「彼女に何かあったら…息子がまた暴れてしまいます。それに、せっかく転生してもらったのです。自らと、僕の奥さんの分まで幸せになってもらわないと。お2人は彼女が全てを話した人ですからね。これからも彼女をよろしくお願いしますね」

  神様…

「…ああ、俺たちに任せとけ」
 「もちろんです」
  2人が答えると神様が笑顔を見せて私に言う。
 「あなたは人に恵まれていますね。この2人を始め、マルコ君、セクロさん、モーブさんにサラさん、フレッドさんもですね…さて、ロイさん、やりますよ」
 「はい!」

  神様が目を瞑るロイさんの額に手をかざすと、ロイさんの体が淡く光り出す。それはあっという間に輝きを増し、部屋全体を包み込む。眩しくて目を瞑る。再び目を開くと部屋は元に戻っていた。

 「ロイさん、慣れるまでは力加減に気を付けないと大惨事になりますよ。かなり抑え気味にしてくださいね」
  神様が声をかける。ロイさんは驚きの表情で自分の体を見下ろしていた。
 「あの、神様、やはり私に同調の効果はないんでしょうか?」
  気になっていた事を聞いてみた。シザーの固有スキルは獣人能力強化。私に獣人の血は入っていないから、おそらく効果はないだろう。
 「そうですねぇ、そうなりますね。…でもあなたには私の加護があります!才能の神の加護です!」

  両手を広げ、ジャーン!と効果音が鳴りそうな勢いで大々的に発表してくれたが、いまいち効果が分かりにくい。ステータスにもなかったし。シザーとロイさんもピンと来ていないようだ。

 「「「…」」」」

 「反応薄っ!分かりましたよ!説明しますよ!」
  半ばやけ気味に言う神様。そのまま説明を始める。
 「簡単に言うと、本人も気が付かない様な小さな可能性を見つけて、芽吹かせることができる。私があなたのスキルに関する才能を見つけたようにね。他には才能を持った者が集まりやすい、というのもあります。それにあなたは教育スキルを持ってますから、相手の成長も早いでしょう」

  可能性を見つける事に関してはまだ分からないが、集まる効果はもう出ている気がした。まだその強さの全貌を見たことがないシザーと、物凄い魔力を持ったロイさんだ。そう考えると、私達を引き合わせてくれたのは神様だ。この2人との出会いは、私のセカンドライフにとても大きな影響を与えてくれている。勿論良い意味でだ。神様に感謝しなければ。

 「…よく分かりました。ありがとうございます」
  多くは言わなくても通じているだろうと思った。
 「…ではそろそろ帰ります。息子が寝ている隙に来たので。…また会いに来ます、私の女神」
  そう言って私の頬を撫でた。神様の瞳は少し悲しげに見えた。

  部屋が真っ暗になり、一瞬だけ優しい風が部屋の中を巡った。そして明かりが戻る。

 「…行っちゃったね。ナッちゃんを助けてくれただけあって、優しい神様だったね」
 「…まあな」
 「…そうだね。優しいんだけど、恥ずかしい事をさらっと言うよね」
 「恥ずかしい事?そんなのあったか?」
  …恥ずかしかったの私だけ?
 「まあね…そ、それよりロイさん、どう?変わったの分かる?」
 「…うん、分かるよ。属性は光以外は使えるし、MPは何だか恐ろしいことになってる。魔力の枯渇なんて一生なさそう」
 「力加減がどうとか言ってたな、どうだ」
 「やってみないと分からないけど練習するよ。いざという時に使えなきゃ意味がないからね」

  神様が帰ってから、こんなに騒いで人に聞かれなかったか心配になったが、神様が防音したのだろう、風魔法を使う方法なら自分たちも出来るとシザーが言っていた。いいな…魔法。











 14日ぶりの我が家だ。ここに住み始めてまだ短いが、それでもやっぱりこの家が一番落ち着く。洗濯や掃除を終わらせ、昼食を食べた後はオリーブの収穫。そして畑仕事、蒔くのはビートの種だ。

  ノース村を発つ前の日、ビート糖のお礼がしたいと言われ、自分でも育ててみたいからと言ってビートの種を貰ったのだ。勿論ビート糖を売ったりしないと約束して。村長さんにそれでいいのですか?と何度も聞かれた。シザーとロイさんはいい加減慣れてきた、と笑っていた。欲のない奴だと言われたが、ただでビート糖が手に入るのだ。これをカラメルにしてプリンとか、クッキーにスコーン、マフィンも作ってみたい!という野望があるのだ。ただビートはノース村よりも南ではほとんど育たないらしいのだが、そこは魔法の土に期待したい。農業スキルもあるし。ちなみにビート糖という呼び名は村人が決めたものだ。

  夕食が出来た所でシザーが帰ってきた。ロイさんが魔法の練習をするというので、念のため一緒に行ってきたのだ。

 「おかえりなさい」
  ドアの前まで行って軽く出迎えのキス、のつもりだったのに…腰を抱かれて体が密着する。あっという間に口内を蹂躙され息が上がる。その間にも手はブラウスのボタンを外している。
 「んンっ、ん、ふ…」
 「ん、ナツメ…」
  はだけたブラウスから零れ落ちそうな胸を弄られる。
 「ん、は…シザー、今はダメ…」
 「何で」
  一言で返して腰を抱いていた手でお尻を撫でる。
 「あッ…ン、だって、夕食冷めちゃう…」
 「今は飯よりお前が食いたい」
  胸の先端をキュッと摘まれて嬌声を上げてしまう。
 「ああん!あ、あ、あ」
 「…いいだろ?」
  耳元でささやかれて思わず首に抱きつくと、片手で抱き上げられてお風呂へと運ばれた。

  夕食を食べたのは1時間以上経ってからだった…。

  食べながらロイさんの様子を聞くと、もう心配ないと返された。元々魔法が得意で魔力の微調整も自由自在だったので、数時刻で大分自分の物にしたらしい。

  何度も言うが魔法羨ましいです。
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