セカンドライフを異世界で

くるくる

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プロローグ

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「ごべんなざい…」
  えぐえぐなく子供。その子の頭を押さえて下げさせながら隣で自分は頭を床にこすりつけて謝罪する親。まあ、ありえなくはない光景。

  その親子が神様とその息子でなければ…

「あの、もういいです」
  と私が言うと神様はがばっと頭を上げた。
 「本当ですか?!許していただけるので?!」
 「ここで駄々をこねても生き返れる訳じゃないですよね?」
 「うぅ…はい…」
 「ならしょうがないです」
  悲しむ家族もいないし。と頭の中で考える。

  そう、私は死んでしまった。神様の息子に猛烈タックルをくらって。

  息子が言うには、父の目を盗んで遊びに行ったら、今は亡き母にそっくりな私を見つけて飛びついてしまったのだとか。自分も赤ん坊の頃に両親を亡くしている身としては、気持ちが分からなくはない。強く責める気にはなれなかった。

 「でもこのままと言う訳にはいかないんです!失態を犯したら償いはしなければなりません!」
 「償い、ですか?」
 「はい!つまり転生です!」
 「…はい?」
 「同じ世界への転生は出来ませんが、異世界に転生して頂きたいんです!」
 「異世界…?」
 「はい!」

  要するにその後の人生を異世界でどうぞ、ってことらしい。今は精神のみの状態なので、体は神様に作ってもらう。その間異世界の話を聞く。そこは魔法やスキル、魔物も存在するいわばファンタジーの世界。地球で言うところのMMORPGのような世界だと思っていただけたら、と神様は話す。

  あらゆる種のゲームや異世界物の小説が大好きな私は、ちょっとワクワクしてしまう。が、ショッキングな事実が突き付けられる。

 「え…?魔力がない…?」
 「ええ、まるで無い訳ではないですが、魔法で攻撃は出来ないでしょうね。魔力は魂に宿るんです。それぞれ保有できる魔力は決まっていて、無理につぎ込んだりすると壊れてしまいます」
 「そんなあ…」
  がっくりと落ち込む私に神様が慌てて言う。
 「で、でもほら、スキルがありますよ!確かにあなたが転生する世界では魔法が使えない人はとっっても珍しいですが、あなたは魔法よりスキル向きです!スキルの天才です!私が保証します!前の世界の経験値も入れておきましたから!あ、ほら、体が出来ました!」









 確かに体は出来た。でも。

 「何で全部同じなんですか!」

  せっかくの異世界転生なのに、以前と変わらぬ長い黒髪と黒い瞳、童顔に150cmしかない身長、極めつけはこの肩の凝る胸。何を贅沢な、と思われるかもしれないがとにかく肩が凝る。ブラも可愛いのが少ないし、値段も少し高い。運動する時は邪魔なうえに男子の視線が…と、私にとっては良い思い出がない。

 「え、いやですか?私の奥さんとそっくりですよ?可愛いですよ?若さ、サービスですよ?あ、ほらこれも。アイテムボックスに冒険者装備、野営道具一式!」

 「はあ…もういいです…」
  ため息を吐き、諦める。
 「そうですか?良かった!じゃあ、そろそろ送りますよ!近くに街もあるはずだし頑張って下さいね!」
  神様が送り出そうとした時、それまでずっと黙っていた息子がぽつりと呟く。

 「お母さん…」
  その瞳に涙をいっぱいためて。

  ああ、そうか。お母さんとそっくりだもんね。その子は見た目は幼稚園児位。まだまだお母さんが恋しいよね…。私はその子の傍に行くと床に膝をつき、そっと抱きしめた。すると私にしがみついて堰を切ったように泣き始める。
  横では神様がうんうん、と頷きながら滝のように涙しながら抱きついてこようとしたのでサッと避けた。









 しばらくして泣き疲れて眠った隙に行くことにした。

 「もう抜け出すなんてことがないようにしてくださいね?」
 「もちろんですよ!」
 「…」
 「信じてくださいよ!」

  なんか軽いんだよね…

 こうして私は セカンドライフを異世界で 過ごすことになった。
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