天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第五話

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 目が覚めた翌日、秋人は病院を後にした。
 半妖故に傷の治りも桁違いに早いのもあるし、それに聞けば妖力を与えてくれた妖が真尋と居たとの事で、そのお陰でより回復も早まった。
 色々と真尋に聞きたいこともあるので、周りからはもう少し休めと言われたが早々に退院し、自宅に帰った。
 そして真尋と連絡を取り、自宅に来るようにと伝えた。

 真尋が家を出て数ヶ月。
 それからまだ一度もこの家に帰ってきていない。
 そんな中、ピンポンと真尋が訪れたと言う合図のインターフォンが鳴って秋人はすぐに玄関へと向かう。

 ドアを開けると真尋と、その後ろに見知らぬ長身の男が立っていた。

「お帰り真尋。
………そちらの方は?」

 人の姿をしているが妖気が感じられ、人ではないと秋人は身構える。

「えっとこちらは烏天狗の緋葉」

 すると緋葉は人から烏天狗へと姿を変えた。
 その姿を見た秋人は一瞬目を見開き、眉間に深く皺を寄せた。
 そんな秋人を見て真尋はよく知らない妖を連れてきて怪しんでると慌てて緋葉との出会いの経緯を説明する。
 しかしながら秋人の表情は変わらない。

 そもそも緋葉がここに居るのは彼が真尋の護衛と称して着いてきたからだ。
 未だ逃げた天狗達が何処にいるのかも分からない。
 先の出来事で真尋の顔は天狗に割れてしまっているので緋葉は心配で大学までも着いてくるのだ。
 とは言っても烏の姿になって上空から真尋を見守っているだけなのだが、今回は一緒に着いていくと聞かなかった。

「まぁいい。
二人とも早く入りなさい」

 困っている真尋を見て仕方無いと二人共家に入れた。

「ただいま~。
…………ああ、なんも変わってない」

 中に入ると家を出る前とほとんど何も変わっておらず、安心した。
 やはり住み慣れたこの家は落ち着く。

「真尋、座ってなさい」

 そう言うと秋人はキッチンの棚からグラスと冷蔵庫から麦茶を出してテーブルへ持っていく。
 家を出る前からの定位置の席に真尋は座る。

「緋葉も座りなよ」

「いえ、お構い無く」

 真尋にそう促されるが、緋葉は真尋の傍に立っていて座ろうとはしなかった。


 
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