天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第三話

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 そんな天明道が経営する病院なので、真尋と利音もここに来て身バレしないかと危惧し、竜樹も来ない方がいいと言った。
 別にここの医療従事者がバラすとかではなく、天明道の関係者が今は特に多く出入りするのでそこで色々と探られてしまうかもしれないと思ったのだ。

「早いとこ、真尋と会わねばな………」

 そう秋人が呟く。
 その口振りから周りは、まさかもう退院する気かと訊ねる。

「身体は動くし、いつまでも寝てはいられない」

「秋人さん!!」

 心配する竜樹の横で芙紗が苦笑する。

「そんなに慌てずとも良いのに……
どうせ天明道は未だ天狗達の消息は掴めていないようだし」

 そう、大天狗の3分の2は逃げてしまった。
 残りは討伐に成功したようだが、その分こちらの被害も相当なもの。
 それに皆体力も削られ、少し休まなければ正直このまますぐに戦いに出るのは難しい。
 
「って言うか、これで天狗の縄張り争いが無くなればこの任務も終わりって事にならないんスか?」

 ここで竜樹が単純な疑問を抱いた。
 元々は天狗の縄張り争いを止めさせて人への被害を無くしたいと言うのが根底にあった筈なので、この戦いで天狗達が争いを止めてくれたらそれでいいのではと……
 しかし朱兼は我々が天狗と戦うのは終わらないと言う。

「あれだけやられて、奴らが我々に仕返ししてこないわけが無い。
どの道、我らの戦いは続く」

 天狗の天明道への怒りは相当なものだろう。
 なのでこの戦いが終結するわけではない。

「ですので秋人、貴方は今の内にしっかり身体を治してしまいなさいな」

 芙紗は柔らかな笑顔を向ける。

「芙紗の言う通り。
お前はもう暫く眠れ。
竜樹よ、孫殿に秋人の様子を伝えてやれ」

「はい、じゃあ俺電話してきます」

 竜樹は朱兼に促され、真尋に電話するために部屋を出ていった。
 竜樹が部屋を出たのを確認した秋人は、朱兼に視線を移す。

「朱兼さん、真尋は孫ではなくひ孫です。
いい加減覚えて下さいよ」

 以前から朱兼は頑なに孫と言う。

「何を言う。孫もひ孫も大して変わらんだろう。
それにこの歳になると細かい事など覚えられぬ」

「……………」

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