天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(下)

第一話

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 一方大天狗に追い詰められている栗郷。 
 大天狗の薙刀の切っ先が目の前に迫るその瞬間。

 横から何かが現れ、大天狗に襲い掛かる。
 見ると大きな動物のような妖が大天狗の薙刀をバキッと噛み砕いた。

「大丈夫?」

「………?」

 艶やかな女性の声が栗郷に投げ掛けられ後ろを見ると、そこには和服姿の鹿北真奈がいた。

「アンタ、なんで………」

「私はこちらに応援に行けと命を受けましたの」

 そう言うと彼女の後ろから続々と天明道の者が現れる。
 そして大天狗は動物の妖から逃れ空へ舞い上がった。
 するとその動物の妖は鹿北の元へやって来て、すりすりと身体を寄せた。

「私の式の化け猫です」

 栗郷を寸前で助けたのは鹿北の式、化け猫だった。
 白い体毛に黄色に光る鋭い目付きの化け猫はとても可愛いとは言えない程近くで見ると威圧感がある。

 先程まで圧倒的にこちらの方が人数が少なかったのに、一気に人数が増えた上に、栗郷達が眷属の天狗を減らしたことで相手の方が不利となった。

「下劣な人間共めが………
ふん……まぁ良い、退屈しのぎにはなったしの……
また会おうぞ……」

「待て!!」

 大天狗は眷属らと共にゆらりと消え去った。
 何とかこの戦いから生き延びられたものの、任務は大天狗を殺す事だったので、任務は失敗となる。
 栗郷は悔しさに唇を噛んだ。


 そんな彼らを他所に天明道本部の敷地の奥にある屋敷に天明道会長の京道と、会員達に指示を出す最高幹部6人がいた。

「京道会長、今回の作戦の事で皆から不満が出ております」

 京道にそう切り出した壮年の男性幹部だ。
 今回の事は場当たり的だと天明道のあちらこちらから不満が聞こえてくる。

「黙れ、那由多なゆた様直々の指示であるぞ」

「それはそうですが………」

「貴様も那由多様に不満だと?」

「滅相もない」

「ならば黙っておけ」

 京道は無理矢理意見を押し込めた。
 そしてこれ以上は無意味と京道は席を立った。
 その後ろを若い女性のお付きが着いていき、この屋敷の最奥の部屋の襖の前へやって来た。
 
「那由多様………」

 京道はポツリと呟き、襖へそっと手を添える。
 そして手を話すと踵を返し、その場から離れていった。

 その襖の奥に引かれたカーテンには、髪の長い人の影が映し出され、カーテンの奥で吐息を漏らすその人は居た。
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