天狗と骨董屋

吉良鳥一

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縄張り争い(上)

第九話

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 秋人達に奇襲をかけられて天狗達は倒れていく。
 これら皆烏天狗で、大天狗の眷属だ。
 このまま戦力を削いで本丸の大天狗のところへ向かうが、烏天狗達も簡単に殺られるだけではない。
 反撃され、四方から襲ってくる。

「くっ………!!」

 烏天狗は槍を用いて秋人に襲いかかるり、錫杖で受け止める。
 そして相手の腹を足で蹴って押し返すと炎で燃やす。

「あぁぁぁっ!!」

 烏天狗は悲鳴を上げ跡形もなく燃えた。
 
「はぁ……はぁ……」

 烏天狗を相手にするだけで相当な体力を削られる。
 このままではこちらが殺られてしまう。
 しかしここで退避するわけにもいかない。

 すると山の中枢の方から大きな妖気を纏ったものがゆっくりと近付いてくるのが分かり、緊張感から秋人と竜樹も冷や汗が流れる。

「この俺、風楽ふうらくに喧嘩を吹っ掛けて来るとは何者だ?」

 迫り来る圧倒的な威圧感のある声が身体の芯へ響いた。
 鬱蒼とする茂みから陽の射し込む場所に現れるとその姿が明らかになる。
 秋人と同じような大きな漆黒の翼と、黒い山伏の衣装に真っ白なザンバラな腰まである長い髪の大天狗の男だ。

 とてつもない妖気に満ちていて、思わず身体が竦む。
 どう戦うかと秋人が考えるその前に朱兼が動いた。
 
 全身を巨大なオロチへと姿を変え、その風楽と名乗る大天狗を大口を開いて呑み込もうと襲いかかる。
 しかし風楽はそれをひらりとかわし、朱兼の口からは地面の土が溢れ落ちる。
 だが朱兼の攻撃をかわした大天狗の後ろには人の姿の芙紗が、鋭い牙を剥いて大天狗の首へ噛み付こうとする。
 
「小癪な」

「………っ!!」

 背後から迫る芙紗を風楽は翼を一つ羽ばたくとつむじ風となって弾き飛ばし、その衝撃で木に叩き付けられる。

「かはっ!!」

「芙紗!!」

「おいおい、勝手に人ん家荒らしておいて挨拶がこれか?」

 体格が良く、荒々しい風貌の大天狗、風楽は怒りを顕にする。

「蛇の半端者に、穢らわしい天狗の半端者まで居やがるじゃねぇか。
ふざけやがって………
楽に死ねると思うな」

 睨むその目はまるで刃物のように冷たく突き刺してくる。
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