天狗と骨董屋

吉良鳥一

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温泉旅行(下)

第十一話

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 山の麓のバス停ではバスが来るまであと20分あるので、ベンチに座って待つ。
 そこで真尋は虎雄から報酬を貰ってない事を思い出す。

「そう言えば報酬………」

「ああ、それならもう貰った」

「え、嘘!?いつの間に………」

 真尋がダイダラボッチに会っている間に虎雄が利音に報酬を渡してきたのだ。

「これ」

 そう言って利音がバッグから取り出したのは見たことの無いコインだ。
 丁寧にハンカチで包んである。

「明治時代の古銭で、旧20円金貨」

「え、明治時代のお金ですか!?」

 どうやら虎雄は明治時代の生まれのようで、お金と言えば明治時代の硬貨なのだろう。
 とは言え古銭なんて貰った所で使えないどころか……

「20円………」

 当時どれくらいの価値があったかは知らないが、現在の20円なんて小さな駄菓子1つ、2つ買えるかどうかくらいだ。

「20円て言うけどさ、これかなり珍しい物だよ。
しかも明治9年発行……
それだけでも価値が上がるし、これだけ状態がいいなら、500万……いやそれ以上……」

「500万!!」

 まさかの価値に口をあんぐりさせる真尋。
 やはり座敷わらしは富を運んでくれる妖のようだ。

「じゃ、じゃあそれを売って……」

「何言ってんの?
売るわけ無いじゃん」

「はぁ?何で?」

 売らないならどうする気だ?

「こんな綺麗な状態のレアもん売るなんて勿体無い」

 骨董好きの利音としては自分のコレクションにしたい。
 虎雄としてはこんな価値が付くなんて考えてもいないので、これくらいかと適当に出したらとんでもない金額となってしまった。
 どう考えても修羅像を退治した報酬としては見合っていない上に最終的にダイダラボッチの手柄なのに………

「まぁ君には給料にボーナス付けてあげるよ」

「………そうですか」

 この金貨を売らないならそのボーナスの金額も期待は出来ない。

 今回のこの温泉旅行は楽しかったのは楽しかったが、思い描いていたものとは違ったので今度は秋人を誘ってまた旅行をやり直そうかなと真尋は思うのだった。
 
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