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温泉旅行(下)
第六話
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結構長々と旅館の女性と話していた真尋。
話していたと言っても女性がほとんど一方的に座敷わらしについて教えてくれていたのだが。
中々話が終わらない事にしびれを切らした虎雄が真尋の袖をクイックイッと引っ張る。
「あ、あの……俺そろそろ……」
「あらごめんなさい。
ついついお喋りし過ぎちゃったわね。
ではごゆっくり」
女性が去った後真尋は疲れて大きな溜め息をついた。
この旅館の従業員は秘境にあって客が少ないせいか、フレンドリーだ。
よっぽど客が来てくれることが嬉しいようだ。
するとここで真尋のスマホのバイブがブーブーと鳴ったので見てみると利音からだ。
「はい」
『真尋、どうやらこっちは外れ。
どっか遊びに行ったみたいだね』
「遊びに………」
言い方よ……
真尋は利音に心の中で突っ込みつつも何処に行ったんだと周囲に目を凝らす。
そんな時、虎雄が突然真尋の腕にしがみついて怯えた様子を見せる。
「虎雄君?」
すると廊下の突き当たりの角の向こうからカタカタと音がして、何かがこちらに向かってくる様子が影に映し出され、近付いてくるのが分かる。
真尋は虎雄を守るように彼の肩を寄せ、もう片方の手に羽団扇を持ち、臨戦態勢を取った。
ゆっくりゆっくりと影が近付き、そしてその正体が壁から姿を現す。
「………っ!?」
そこに現れたのは一体の像だ。
ここからでは分からないが大きさはおよそ30センチ程だろうか?
ひとりでに動くその像は確かに黒い妖気を纏ってはいるが、女の子を食べる程大きくは無いので、本当にあれが虎雄の言う妖なのか疑問に思うも、虎雄は震えているので間違いは無さそうだ。
すると像はぐぐっとこちらに方向転換したかと思えば一瞬の内に真尋の目の前に移動して来て、像の口がぐわっと大きく開き、鋭い歯を剥き出しにしてきて思わず後に仰け反ってその場に尻餅をつくように倒れ込む。
そして間髪入れずにそれは真尋に喰らい付こうと喉元を狙って来る。
それをギリギリで羽団扇で防ぐが、像はそれをバリバリと食べてしまった。
「うっそ……マジで!?」
羽団扇を食べるとまた真尋へ照準を合わせる。
「滅!!」
真尋に襲いかかる瞬間、利音の声と共に像は弾き飛んで、壁に打ち付けられる。
話していたと言っても女性がほとんど一方的に座敷わらしについて教えてくれていたのだが。
中々話が終わらない事にしびれを切らした虎雄が真尋の袖をクイックイッと引っ張る。
「あ、あの……俺そろそろ……」
「あらごめんなさい。
ついついお喋りし過ぎちゃったわね。
ではごゆっくり」
女性が去った後真尋は疲れて大きな溜め息をついた。
この旅館の従業員は秘境にあって客が少ないせいか、フレンドリーだ。
よっぽど客が来てくれることが嬉しいようだ。
するとここで真尋のスマホのバイブがブーブーと鳴ったので見てみると利音からだ。
「はい」
『真尋、どうやらこっちは外れ。
どっか遊びに行ったみたいだね』
「遊びに………」
言い方よ……
真尋は利音に心の中で突っ込みつつも何処に行ったんだと周囲に目を凝らす。
そんな時、虎雄が突然真尋の腕にしがみついて怯えた様子を見せる。
「虎雄君?」
すると廊下の突き当たりの角の向こうからカタカタと音がして、何かがこちらに向かってくる様子が影に映し出され、近付いてくるのが分かる。
真尋は虎雄を守るように彼の肩を寄せ、もう片方の手に羽団扇を持ち、臨戦態勢を取った。
ゆっくりゆっくりと影が近付き、そしてその正体が壁から姿を現す。
「………っ!?」
そこに現れたのは一体の像だ。
ここからでは分からないが大きさはおよそ30センチ程だろうか?
ひとりでに動くその像は確かに黒い妖気を纏ってはいるが、女の子を食べる程大きくは無いので、本当にあれが虎雄の言う妖なのか疑問に思うも、虎雄は震えているので間違いは無さそうだ。
すると像はぐぐっとこちらに方向転換したかと思えば一瞬の内に真尋の目の前に移動して来て、像の口がぐわっと大きく開き、鋭い歯を剥き出しにしてきて思わず後に仰け反ってその場に尻餅をつくように倒れ込む。
そして間髪入れずにそれは真尋に喰らい付こうと喉元を狙って来る。
それをギリギリで羽団扇で防ぐが、像はそれをバリバリと食べてしまった。
「うっそ……マジで!?」
羽団扇を食べるとまた真尋へ照準を合わせる。
「滅!!」
真尋に襲いかかる瞬間、利音の声と共に像は弾き飛んで、壁に打ち付けられる。
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