天狗と骨董屋

吉良鳥一

文字の大きさ
上 下
125 / 169
温泉旅行(下)

第一話

しおりを挟む
 暫くゴロゴロした後、真尋は酔っ払った利音を置いてまた温泉に入りに言った。
 この時間は真尋の他に2人程いた。
 夜はまたライトアップなど昼間とは違ったロマンチックな風景に見惚れた。

 温泉に浸かりながら外を眺めていると、昼間よりも妖が活発になり、更に増えて景色がまるで妖のサファリパークのようだ。
 それでもダイダラボッチは人との共存を選んだのか、人を傷付けるような妖は排除しているのだと、昼間散策に行った時先程会った小鬼達に聞いていた。

 独特の生態系。
 人と妖が上手く共存しているように思う。
 温泉から上がり部屋に戻ると、いつの間にか食器などは片付けられており、布団が敷かれてその上に利音が既に寝ていた。

「利音さんもう寝るんですか?」

「寝る」

 折角の旅行なのに勿体無いと思うが仕方無い。
 秋人にまた夜の外の風景と自撮りした写真を送るとすぐに返信が来た。

『楽しんでいるようで何より。
素敵な写真をありがとう。
夜は湯冷めしないよう温かくして寝て下さいね』

 そう送られてきて、やっぱり利音ではなく秋人を誘えば良かったかなと今更ながら思う。
 秋人は仕事でこう言った旅館に泊まる事もあるようなので、わざわざ行かなくてもいいだろうと考えたが、来てみて思った。
 こう言うのは誰と行ったかだと。

 今までちゃんとお礼を言ってない。
 だから今度はちゃんと自分で稼いだお金で秋人を誘って、お礼をしたいと考える。  
 そう考えている間に真尋も眠くなり、布団に入って眠りについた。

 深い眠りについたと思ったが段々と寝苦しさに意識が浮上してくる。
 どうも身体の上に何か乗っているような息苦しさを感じる。
 寝苦しさで目が覚めて目を開けると、目の前に人の顔がどアップで映し出され、驚いて飛び起きると、誰かがイタッと尻餅をつく音がした。
 するとそこには着物を着た小さな子供がいた。
 髪が短いので男の子だろうか?

「あ、ごめ………
てか、え……誰………?」

 いきなり知らない子供が自分の上に乗って顔を覗き込んでいたことに少々パニックだ。
 しかしふと、最初に温泉に入った後の事を思い出した。 
 女性客がここの旅館は座敷わらしが出ると言う噂があると話していたのを立ち聞きしていた。

「座敷わらし……?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

晴明さんちの不憫な大家

烏丸紫明@『晴明さんちの不憫な大家』発売
キャラ文芸
最愛の祖父を亡くした、主人公――吉祥(きちじょう)真備(まきび)。 天蓋孤独の身となってしまった彼は『一坪の土地』という奇妙な遺産を託される。 祖父の真意を知るため、『一坪の土地』がある岡山県へと足を運んだ彼を待っていた『モノ』とは。   神さま・あやかしたちと、不憫な青年が織りなす、心温まるあやかし譚――。    

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...