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温泉旅行(上)
第二話
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利音に捕らえられた赤い小さな鬼はなんだこれと踠いている。
「ねぇ」
「………っ!?」
赤鬼が声の方に目を向けると、今にも殺してしまいそうな鋭い目をした利音が見下ろしていて、赤鬼は冷や汗を滝のように流す。
「ま、待て!!殺さないでくれ!!」
涙目になりながら命乞いをする赤鬼。
そこに真尋の前に現れた青鬼も駆けつけ、土下座してごめんなさいと謝り、殺さないよう懇願する。
そして更には小さな河童のような妖と三つ目の妖までも現れ利音に土下座する。
「何これ………」
真尋は呆気に取られ小妖達に状況説明を求めた。
「オ、オレ達はただたまに来る人間を脅かして楽しんでただけだ」
「視える人間は少ないから反応が面白くて……」
「でもそれだけだ。
傷付けたりはしてない!!」
必死に弁明する彼らに利音ははぁと溜め息をつき、術を解いた。
「もういいよ、こんなことやってる場合じゃないし無駄に体力使っちゃったじゃん」
折角温泉に来たのにこれ以上面倒な事はしたくない。
「まぁでも、丁度いい。
お詫びに荷物を運んで貰おうか」
大きな荷物を持って坂を歩くのはしんどいと利音は小妖達に荷物を運ばせる事にした。
彼らは反論することもなく、少し怯えた様子で大人しく言うことに従った。
「ああ、楽になった」
利音は小妖を荷物持ちにさせ歩いていくと、今度はもっと巨大な妖気が漂ってきた。
「な、なんだ……?」
ドシッドシッと地響きがする。
すると突然影が出来、何事かと上を向くととてつもなく巨大な黒いものが真上を通って行く。
しかもそれは人の形をしているが、這うようにして移動している。
「何あれ!?」
「ダイダラボッチ様だ」
真尋の疑問に赤鬼が答える。
「ダイダラボッチ……?」
「山の主様だ」
山の主、所謂土地神だろうと利音は推測する。
小妖達はあの妖がここの山を守ってくれているのだと答えた。
「なんかこの山に入って思ったけど、ここは相当な力に守られてるような感じがするんだよね」
利音はここは謂わば小妖にとって楽園のような所だと言う。
ダイダラボッチと言う強力な土地神に守られ、悪さをして山を乱す妖らは排除される。
弱い妖でも安心して暮らせる環境なのだろうと。
「面白い………
こんな辺鄙な所にって後悔しかけたけど、結構興味深い所だね」
機嫌が悪かった利音もこの特殊な場所に興味を持ったようだ。
「ねぇ」
「………っ!?」
赤鬼が声の方に目を向けると、今にも殺してしまいそうな鋭い目をした利音が見下ろしていて、赤鬼は冷や汗を滝のように流す。
「ま、待て!!殺さないでくれ!!」
涙目になりながら命乞いをする赤鬼。
そこに真尋の前に現れた青鬼も駆けつけ、土下座してごめんなさいと謝り、殺さないよう懇願する。
そして更には小さな河童のような妖と三つ目の妖までも現れ利音に土下座する。
「何これ………」
真尋は呆気に取られ小妖達に状況説明を求めた。
「オ、オレ達はただたまに来る人間を脅かして楽しんでただけだ」
「視える人間は少ないから反応が面白くて……」
「でもそれだけだ。
傷付けたりはしてない!!」
必死に弁明する彼らに利音ははぁと溜め息をつき、術を解いた。
「もういいよ、こんなことやってる場合じゃないし無駄に体力使っちゃったじゃん」
折角温泉に来たのにこれ以上面倒な事はしたくない。
「まぁでも、丁度いい。
お詫びに荷物を運んで貰おうか」
大きな荷物を持って坂を歩くのはしんどいと利音は小妖達に荷物を運ばせる事にした。
彼らは反論することもなく、少し怯えた様子で大人しく言うことに従った。
「ああ、楽になった」
利音は小妖を荷物持ちにさせ歩いていくと、今度はもっと巨大な妖気が漂ってきた。
「な、なんだ……?」
ドシッドシッと地響きがする。
すると突然影が出来、何事かと上を向くととてつもなく巨大な黒いものが真上を通って行く。
しかもそれは人の形をしているが、這うようにして移動している。
「何あれ!?」
「ダイダラボッチ様だ」
真尋の疑問に赤鬼が答える。
「ダイダラボッチ……?」
「山の主様だ」
山の主、所謂土地神だろうと利音は推測する。
小妖達はあの妖がここの山を守ってくれているのだと答えた。
「なんかこの山に入って思ったけど、ここは相当な力に守られてるような感じがするんだよね」
利音はここは謂わば小妖にとって楽園のような所だと言う。
ダイダラボッチと言う強力な土地神に守られ、悪さをして山を乱す妖らは排除される。
弱い妖でも安心して暮らせる環境なのだろうと。
「面白い………
こんな辺鄙な所にって後悔しかけたけど、結構興味深い所だね」
機嫌が悪かった利音もこの特殊な場所に興味を持ったようだ。
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