天狗と骨董屋

吉良鳥一

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拾い物

第六話

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 天狗は人と交わることを嫌うと知った真尋は秋人を思い出す。
 小学生の時に秋人に天狗である高祖父はどんな人だったのかと聞いたことがあった。
 しかし秋人は幼い時に亡くなったのでどうだったかあまり覚えていないと言った。
 その時に悲しそうな、寂しそうな、そんな表情を見せたのを今も覚えている。
 あまり言いたく無いんだなと小学生ながらに察してそれ以上は聞かなかったが、それでも優しい父だったと彼は言った。

 すると緋葉は真尋を見つめ、何故かふっと笑った。
 
「真尋殿は我が主を思い出させる……」

「主……?」

「ああ、大天狗の御仁だ。
その方に似ていると感じる………」

 容姿や性格が似ているのでは無くなんとなく雰囲気と言うか、魂と言うべきか、何処か懐かしく感じると緋葉は言う。
 しかし、その主はずっと昔に人と恋に落ち、それに激怒した身内の天狗に殺されたと言う。
 それ以来緋葉は様々な土地を転々とし、この前までいた山で他の天狗達と暮らしていた。

「ねぇ緋葉」

「……はい?」

 戸棚からマドレーヌが入った箱を持って真尋の隣に座る利音が緋葉に話し掛ける。

「天狗は人嫌いって言うなら、君はどうなの?
人の子に助けられるなんて屈辱的なんじゃない?」

 基本妖を信用しない利音はもしこのまま彼をここに置いておいて、こちらのことを利用したり、裏切ったりしないかと見定めるように質問を投げ掛ける。

「……それがし……私は」

 緋葉は真尋に喋り方が古臭いと言われ、一人称を私に変えた。

「私は妖だの人だの関係ない。
利音殿が私を信用していない事は理解しているし、信じて欲しいとは言わぬ。
ただ命を助けられたのなら命を持って恩を返すのみ。
それが私の信念だ」

 真っ直ぐ利音の目を見て訴える。
 緋葉にとって自尊心とは借りたものは倍にして返すものだと思っているが、利音は少し下らないと言うように聞いていた。

 信念だの義理だの、利音はあまり好きではない。
 正直面倒だ。

「あっそ………
まぁ精々店番頼むよ」

 利音は持ってきたマドレーヌを口に頬張りながらそう言った。
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