天狗と骨董屋

吉良鳥一

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拾い物

第二話

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 瀕死の烏を手当てし、このまま様子を見ることにした。
 ぐったりした烏を頑張れと撫でる真尋の様子を利音は少し離れた所で呆れながら見ていた。

 どう見ても妖のあの烏。
 あんなものを拾ってまた変なことに巻き込まれなければいいがと利音は思うが、そう言ってもどうせ聞かないので放って置くことにした。

 そんな烏は真尋が甲斐甲斐しく世話をしていたお陰か、数日でだいぶ回復した。
 そしてある日の事、烏は起き上がると真尋の前でその姿を変えた。

「………え?」

 戸惑う真尋の目の前には、真尋よりも背が高い人の姿のようだが頭は烏で黒い羽毛に覆われていて、そして背中には真尋と似たような黒い翼が生えている。
 そして烏は真尋に跪く。

それがし、烏天狗の緋葉ひようと申す。
此度は助けて頂き、感謝申し上げる」

「…………え?」

 突然の事に真尋は呆気にとられる。
 妖とは聞いていたものの、まさか自分よりも背の高い烏天狗だとは、しかも喋る妖とは思わず反応に困った。

「真尋殿……とお呼びすれば宜しいか?」

 そう訊ねられるが、彼の言葉を聞いておらず固まったままの真尋に烏改め、烏天狗の緋葉はもう一度話し掛ける。

「真尋、呼ばれてるけど?」

 見かねた利音が横から口を挟む。
 漸くはっと我に返った真尋はお好きにどうぞと答える。

 改めて緋葉をまじまじと見る。
 白い山伏の衣装を身に纏い、声からして男性のようだ。
 
「えっと、緋葉……さん?」

「ただの緋葉と……」

 敬称も敬語もいらないと言うので真尋は緋葉と言い直した。

「緋葉は、もう怪我は大丈夫?
てか何であんな怪我してたの?」

 そう聞くと緋葉は正座に座り直して話し始めた。

「我々天狗は山に縄張りをもっています。
某の群れは他の天狗の群れに縄張り争いに敗れ、地を追われました。
傷はその際に………」

 天狗、特に烏天狗は群れでいることを好む。
 彼らはよく大天狗と言う天狗の長に仕える事が多い。
 しかし緋葉は主を持たず、他の烏天狗や狗賓と群れを作り人里離れた山に縄張りを持っていた。

 だがそこに大天狗と言う絶対的な長を持つ天狗達に縄張りを取られ、更に緋葉の仲間も皆殺されてしまった。
 
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