天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(下)

第十五話

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 大蝦蟇の去ったこの場所には利音と栗郷が残される。

「ふむ、やっぱあの呪いに大蝦蟇の力を封じてたのかな?
それで力を取り戻そうと呪いを追い掛けてきたのか………
ま、分かんないけど」

 唖然とする栗郷の隣でそう冷静に分析する利音に人が殺られたと言うのに何故そうも動じないのかと信じられない思いだ。
 そしたら利音はこう答えた。

「だってさっき自分で言ってたじゃん。
弱肉強食って。
こう言う時こそ冷静にならないと。
君もまだまだだね」

「…………」

 重箱の隅をつつくような彼の言い方に相変わらず嫌味な奴と思うも、一理あるとも思え、複雑な感情を抱く。

「さて、真尋を迎えに行かないと……」

 色々と言いたいことはあるが、足手まといと思っていた彼には、今回ばかりは助かったと感謝している。
 まぁ、そんなこと言ったら付け上がるだけなので黙っておくが……

 栗郷の狐、魁の案内で真尋がいる場所に向かうと、木にもたれ掛かって休んでいた。
 見ると服や額に血の痕が見える。

「ケガ、大丈夫?」

「………っ!?
利音さん………」

 声を掛けると少しビクッと体を震わせこちらを見る。
 二人が近くまで来たことに声を掛けられるまで気付かなかったようで、寝ていたのかと理解する。

「問題無いです。
傷の治りは早いので……」

 おそらく数日経てば綺麗に治るだろう。
 そんな自分をどんどん人間離れしてくなぁなんて心の中で自嘲した。

「それよりそっちは……」

 その後どうなったのか気になる真尋は二人から事の顛末を聞く。
 大蝦蟇が犯人の葛西を喰ったと知り、やっぱりこの場で倒すべきだったと言うと、利音はそれを否定した。

 「あれはどうやら土地神みたいだから、逆に君が殺してしまわなくて良かったんだよ」

「土地神……」

 そう復唱する真尋は、土地神については秋人から聞いたことがあったので理解はしている。

 土地神とはその土地を護るヌシである。
 土地神がいなくなった場所は荒れるので、今大蝦蟇が居なくなった場所がどうなっているか………

 場所によっては人の生活にも関わってくる。
 自然災害が起こったり、中には毒ガスが発生した事もある。

 
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