100 / 169
河童の手のミイラ(下)
第十三話
しおりを挟む
「アンタの呪いを俺に移せ」
「はぁ?」
栗郷が利音に向かってそう言ったのは、二人が合流し、葛西を追い掛ける前の事だった。
栗郷は利音の呪いを自分に移そうと考えた。
「形代には無理でも俺になら移せる筈だ。
そこから俺が呪詛返しでアイツに返す」
葛西は利音だけでなく栗郷の事も憎んでいる。
ならばこの呪いは栗郷へも有効だろうと考え、更には顔が分かっていれば呪詛返しがやりやすいだろうと言う目論みだ。
しかし利音は訝しげに彼を見る。
「何のために?
呪詛返しなら俺が自分でやった方が成功率は高いし、それに失敗した時の反動は大きい。
最悪死ぬよ?」
失敗した時のリスクが高いと利音は反対した。
だが栗郷は呪術に詳しいのは自分だと言った。
「それにアイツも多分呪術師だ。
やり返さないな気が済まねぇ。
これは最早俺とヤツの戦いなんだよ。
邪魔するな」
呪術師同士のプライドを掛けた戦いと、呪術なら利音よりも勝ると自負していた。
それに形代に呪いを移せなかった事が余程腹が立ったようだ。
そんな彼に利音は呆れるが、もう面倒だと呪いを栗郷へと移した。
「舐めんじゃねぇよ!!」
葛西が今発動させた呪いに心臓をやられた栗郷は苦しみながらも笑みを浮かべる。
そして文字の書かれた式札を人差し指と中指で挟み詞を紡ぐ。
「天切る、地切る、八方切る、天に八違ひ、地に十の文字、秘音………」
「なん…だ……」
すると栗郷の詞に周囲の空気が変わる。
「一も十々、二も十々、三も十々、四も十々、五も十々、六も十々、吹きて放つ、さんびらり!!」
言い終わると同時に栗郷の中にあった二つの呪いが睦合うように葛西へと返され、途端に苦しみ出した。
「あ……ああぁぁぁっ!!」
「この呪詛返しは俺がアンタから直接喰らってじゃないと成功率が低かった。
アンタが俺に術を使ってくれて助かった」
呪詛返しは文字通り呪詛を術者に返す物。
なので本来利音から移した呪いは栗郷が返す事は難しい。
しかし栗郷が葛西から術を受けたことで呪詛返しが出来た。
正直ここは掛けでしかなかったのでラッキーとも言える。
そしてこれも現在真尋が大蝦蟇と戦い、足留めしてくれているお陰だろう。
そうでなければここまでスムーズにはいかない。
「はぁ?」
栗郷が利音に向かってそう言ったのは、二人が合流し、葛西を追い掛ける前の事だった。
栗郷は利音の呪いを自分に移そうと考えた。
「形代には無理でも俺になら移せる筈だ。
そこから俺が呪詛返しでアイツに返す」
葛西は利音だけでなく栗郷の事も憎んでいる。
ならばこの呪いは栗郷へも有効だろうと考え、更には顔が分かっていれば呪詛返しがやりやすいだろうと言う目論みだ。
しかし利音は訝しげに彼を見る。
「何のために?
呪詛返しなら俺が自分でやった方が成功率は高いし、それに失敗した時の反動は大きい。
最悪死ぬよ?」
失敗した時のリスクが高いと利音は反対した。
だが栗郷は呪術に詳しいのは自分だと言った。
「それにアイツも多分呪術師だ。
やり返さないな気が済まねぇ。
これは最早俺とヤツの戦いなんだよ。
邪魔するな」
呪術師同士のプライドを掛けた戦いと、呪術なら利音よりも勝ると自負していた。
それに形代に呪いを移せなかった事が余程腹が立ったようだ。
そんな彼に利音は呆れるが、もう面倒だと呪いを栗郷へと移した。
「舐めんじゃねぇよ!!」
葛西が今発動させた呪いに心臓をやられた栗郷は苦しみながらも笑みを浮かべる。
そして文字の書かれた式札を人差し指と中指で挟み詞を紡ぐ。
「天切る、地切る、八方切る、天に八違ひ、地に十の文字、秘音………」
「なん…だ……」
すると栗郷の詞に周囲の空気が変わる。
「一も十々、二も十々、三も十々、四も十々、五も十々、六も十々、吹きて放つ、さんびらり!!」
言い終わると同時に栗郷の中にあった二つの呪いが睦合うように葛西へと返され、途端に苦しみ出した。
「あ……ああぁぁぁっ!!」
「この呪詛返しは俺がアンタから直接喰らってじゃないと成功率が低かった。
アンタが俺に術を使ってくれて助かった」
呪詛返しは文字通り呪詛を術者に返す物。
なので本来利音から移した呪いは栗郷が返す事は難しい。
しかし栗郷が葛西から術を受けたことで呪詛返しが出来た。
正直ここは掛けでしかなかったのでラッキーとも言える。
そしてこれも現在真尋が大蝦蟇と戦い、足留めしてくれているお陰だろう。
そうでなければここまでスムーズにはいかない。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
みちのく銀山温泉
沖田弥子
キャラ文芸
高校生の花野優香は山形の銀山温泉へやってきた。親戚の営む温泉宿「花湯屋」でお手伝いをしながら地元の高校へ通うため。ところが駅に現れた圭史郎に花湯屋へ連れて行ってもらうと、子鬼たちを発見。花野家当主の直系である優香は、あやかし使いの末裔であると聞かされる。さらに若女将を任されて、神使の圭史郎と共に花湯屋であやかしのお客様を迎えることになった。高校生若女将があやかしたちと出会い、成長する物語。◆後半に優香が前の彼氏について語るエピソードがありますが、私の実体験を交えています。◆第2回キャラ文芸大賞にて、大賞を受賞いたしました。応援ありがとうございました!
2019年7月11日、書籍化されました。
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる