天狗と骨董屋

吉良鳥一

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河童の手のミイラ(上)

第十一話

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 友人がいるいない論争なんてバカバカしいと利音は一蹴した。

「その割りにバカにしたような目してやがったが?」

 栗郷が言う。

「だって、パパに指摘されて顔を真っ赤にして恥ずかしがる君が面白いから」

「………」

 あのプライドの高そうな栗郷が恥ずかしがる姿は見ていて気分が良いと意地の悪い事を言って彼を煽る。

 反対に眉間に皺を寄せて腹を立てる栗郷。
 この二人を見て真尋は仲がいいのか悪いのか分からないと心の中で呟く。

「ホラホラ何してるの?
早く入って」

 中々家に入らない彼らに栗郷の父が促す。

「あ、お邪魔します」

 促され先に家に入った真尋に二人も続く。
 中は外観に違わず古い和風の造りだ。
 栗郷の父が外国人なのでもっと洋風なのかと真尋は思ったらそうではなくて少し驚いた。

 和室の客室に通された二人は中央にあるテーブルの前の座布団に並んで座り、栗郷は彼らの前の席に胡座をかく。

「んで、早速だがその腕見せてみろ」

 上から目線に言う彼に腹が立ちながらも腕を見せる。
 ぱっと見、何も無いように見える。
 しかし視える者から見たら異常なのは明らかだ。
 彼の腕からは黒いモヤのような物を醸し出している。

「………これは何だ?
蠱毒……いや違うか……
何か動物か妖を使ってるな。
そう言や大蝦蟇に追い掛けられてるっつったな。
で、誰かが遠くで操ってる?」

「さあね。
でも俺を狙ってたとは思う」

 それが誰なのか見当もつかない。
 そしてこの呪いの解き方も分からない。

「ま、何にせよこの呪いは多分その大蝦蟇の血を使ってんだろうよ。
呪術でよく使われている手段だな」

 血と言うのは穢れだ。
 呪いはその穢れが強い程より力を発揮する。
 そして妖の血となると、強い妖程より強力な呪いとなるので、恐らくこの呪詛は同業者によるものだろうと予想する。

「兎に角術者を見つけ出すのが先決だろう。
その為にはこの呪詛の元を辿らなければならない」

 呪詛の元を辿るには血の持ち主の大蝦蟇を介さなければならない。

「そして術者は必ず近くにいるだろうな」

 栗郷はそう断言する。
 利音が見たと言う怪しい人物。
 ならば利音が死ぬのを見届ける筈であると判断した。



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