天狗と骨董屋

吉良鳥一

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片割れは傍らに在り(下)

第十三話

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 佐恵子は一度目を閉じ、そして目を開く。
 その目は香世子を真っ直ぐ捉えていた。

「私はかよちゃんにこれ以上苦しんで欲しくない。
逝こう………
私も一緒に地獄へ堕ちるから……」

「さえちゃん……?」

 自殺したもの、殺人を犯したもの、それぞれ逝く場所は決まっている。
 香世子は勿論地獄だが、佐恵子はなんの問題も犯していないので天へ召される筈だが、香世子を一人にしたくない佐恵子は彼女と一緒に地獄へ逝くと覚悟を決めていた。

「ずっと一緒。
もう離れないから……
ね?」

「さえちゃん……
うん、分かった。
さえちゃんがそう言うなら……」

 佐恵子は自分の額を香世子の額に付ける。
 そして二人はゆっくりと白く光ながら徐々に透明になり、消えて行く。
 その際佐恵子は真尋達に向かって深々と頭を下げる。
 そんな彼女を見て真尋は思わず何かを言わなきゃと咄嗟に思った。
 何を言えばいいのかは分からない。
 でも何かを言わずにはいられない。

「あ、あのっ……
今度は、きっと、幸せに……」

 時間も無い中で、絞り出した一言。
 けれどそれは確実に二人に届いていた。
 だって、消える直前に笑っていたのだから………

「………」

 何とも言えぬ結末に、悪鬼の脅威は去ったのに真尋は浮かない顔だ。
 二人の境遇に同情してしまったからだ。
 隣の利音は無表情で何を考えているのか分からなくて怖い。
 呆れてしまっただろうか……?

 人を襲う妖は迷わず滅する。
 そう覚悟をしていたはずなのに、こんなものを見せられては揺らいでしまう。
 所詮は妖と割り切れるようになるのはもう少し先なのかなと真尋は複雑な思いが残る。

「さて真尋」

 ここで秋人の声がビシッと真尋の心臓に突き刺さり、ビクッと震えた。

「色々と聞きたいことがあるのだけど?」

「俺も色々聞きたい」

 秋人に続き利音からの視線もまた痛い。
 間に挟まれた真尋は萎縮してしまう。
 が、そのすぐ後に真尋の腹がぐぅ~と盛大に鳴った。

「もう疲れたんで話はまた夕飯のあとで!!」

 この期に及んでもマイペースな真尋に一同は苦笑いを浮かべるしかなかった。

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