58 / 169
片割れは傍らに在り(下)
第十三話
しおりを挟む
佐恵子は一度目を閉じ、そして目を開く。
その目は香世子を真っ直ぐ捉えていた。
「私はかよちゃんにこれ以上苦しんで欲しくない。
逝こう………
私も一緒に地獄へ堕ちるから……」
「さえちゃん……?」
自殺したもの、殺人を犯したもの、それぞれ逝く場所は決まっている。
香世子は勿論地獄だが、佐恵子はなんの問題も犯していないので天へ召される筈だが、香世子を一人にしたくない佐恵子は彼女と一緒に地獄へ逝くと覚悟を決めていた。
「ずっと一緒。
もう離れないから……
ね?」
「さえちゃん……
うん、分かった。
さえちゃんがそう言うなら……」
佐恵子は自分の額を香世子の額に付ける。
そして二人はゆっくりと白く光ながら徐々に透明になり、消えて行く。
その際佐恵子は真尋達に向かって深々と頭を下げる。
そんな彼女を見て真尋は思わず何かを言わなきゃと咄嗟に思った。
何を言えばいいのかは分からない。
でも何かを言わずにはいられない。
「あ、あのっ……
今度は、きっと、幸せに……」
時間も無い中で、絞り出した一言。
けれどそれは確実に二人に届いていた。
だって、消える直前に笑っていたのだから………
「………」
何とも言えぬ結末に、悪鬼の脅威は去ったのに真尋は浮かない顔だ。
二人の境遇に同情してしまったからだ。
隣の利音は無表情で何を考えているのか分からなくて怖い。
呆れてしまっただろうか……?
人を襲う妖は迷わず滅する。
そう覚悟をしていたはずなのに、こんなものを見せられては揺らいでしまう。
所詮は妖と割り切れるようになるのはもう少し先なのかなと真尋は複雑な思いが残る。
「さて真尋」
ここで秋人の声がビシッと真尋の心臓に突き刺さり、ビクッと震えた。
「色々と聞きたいことがあるのだけど?」
「俺も色々聞きたい」
秋人に続き利音からの視線もまた痛い。
間に挟まれた真尋は萎縮してしまう。
が、そのすぐ後に真尋の腹がぐぅ~と盛大に鳴った。
「もう疲れたんで話はまた夕飯のあとで!!」
この期に及んでもマイペースな真尋に一同は苦笑いを浮かべるしかなかった。
その目は香世子を真っ直ぐ捉えていた。
「私はかよちゃんにこれ以上苦しんで欲しくない。
逝こう………
私も一緒に地獄へ堕ちるから……」
「さえちゃん……?」
自殺したもの、殺人を犯したもの、それぞれ逝く場所は決まっている。
香世子は勿論地獄だが、佐恵子はなんの問題も犯していないので天へ召される筈だが、香世子を一人にしたくない佐恵子は彼女と一緒に地獄へ逝くと覚悟を決めていた。
「ずっと一緒。
もう離れないから……
ね?」
「さえちゃん……
うん、分かった。
さえちゃんがそう言うなら……」
佐恵子は自分の額を香世子の額に付ける。
そして二人はゆっくりと白く光ながら徐々に透明になり、消えて行く。
その際佐恵子は真尋達に向かって深々と頭を下げる。
そんな彼女を見て真尋は思わず何かを言わなきゃと咄嗟に思った。
何を言えばいいのかは分からない。
でも何かを言わずにはいられない。
「あ、あのっ……
今度は、きっと、幸せに……」
時間も無い中で、絞り出した一言。
けれどそれは確実に二人に届いていた。
だって、消える直前に笑っていたのだから………
「………」
何とも言えぬ結末に、悪鬼の脅威は去ったのに真尋は浮かない顔だ。
二人の境遇に同情してしまったからだ。
隣の利音は無表情で何を考えているのか分からなくて怖い。
呆れてしまっただろうか……?
人を襲う妖は迷わず滅する。
そう覚悟をしていたはずなのに、こんなものを見せられては揺らいでしまう。
所詮は妖と割り切れるようになるのはもう少し先なのかなと真尋は複雑な思いが残る。
「さて真尋」
ここで秋人の声がビシッと真尋の心臓に突き刺さり、ビクッと震えた。
「色々と聞きたいことがあるのだけど?」
「俺も色々聞きたい」
秋人に続き利音からの視線もまた痛い。
間に挟まれた真尋は萎縮してしまう。
が、そのすぐ後に真尋の腹がぐぅ~と盛大に鳴った。
「もう疲れたんで話はまた夕飯のあとで!!」
この期に及んでもマイペースな真尋に一同は苦笑いを浮かべるしかなかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
みちのく銀山温泉
沖田弥子
キャラ文芸
高校生の花野優香は山形の銀山温泉へやってきた。親戚の営む温泉宿「花湯屋」でお手伝いをしながら地元の高校へ通うため。ところが駅に現れた圭史郎に花湯屋へ連れて行ってもらうと、子鬼たちを発見。花野家当主の直系である優香は、あやかし使いの末裔であると聞かされる。さらに若女将を任されて、神使の圭史郎と共に花湯屋であやかしのお客様を迎えることになった。高校生若女将があやかしたちと出会い、成長する物語。◆後半に優香が前の彼氏について語るエピソードがありますが、私の実体験を交えています。◆第2回キャラ文芸大賞にて、大賞を受賞いたしました。応援ありがとうございました!
2019年7月11日、書籍化されました。
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる