天狗と骨董屋

吉良鳥一

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片割れは傍らに在り(上)

第五話

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 確かにぬいぐるみは男によって盗まれていた。
 しかし余計に疑問は深まる。
 端から見れば男がぬいぐるみを盗むなど可笑しな話である。
 まだ壺や掛け軸なら価値がありそうなので理解は出来るが……

「って言うか警察には言ったんですか?」

 これは明らかに盗難事件である。
 被害届を出すべきであろうと思った真尋はそう尋ねた。

「いえ、まだ……
これはただのぬいぐるみでは無いので、まずは宗像さんに見て頂いてから判断したいと思いまして」

 下手に届け出て警察がここに出入りすると痕跡を消してしまう可能性もあったからだ。

 その利音は映像を観て何やら考え込んでいる。
 すると映像をじっと見つめていたと思ったら今度は再びぬいぐるみのあった場所に戻ってきた。

「利音さん?」

「僅かに妖気が残ってる」

「え?」

 利音のぬいぐるみの妖気がまだ残っていると言うその指摘に真尋は目を凝らした。

 ここの部屋には色々な気配が混在しているため妖気が残っていると言われてもどれがぬいぐるみの物なのか正直よく分からない。

「君って……
前から思ってたけど、宝の持ち腐れだよね」

「??」

 利音の唐突な言葉に真尋は首を傾げた。

「力はあるのに使いきれて無いって話し。
妖力は大きいのにね」

 真尋の能力はこんな物では無い筈だと利音は思う。
 元々の潜在能力は彼から感じる妖力で大体は把握できる。
 それを鑑みて、今の真尋はまだまだひよっこレベルだと感じる。

「え、それって実は俺天才って事ですか?」

「ん~なんか違う」

「じゃあ無限大の可能性を秘める感じですか?
え、俺って実は凄い?
あ、でも妖力って……俺は人間なんでやっぱ遠慮しときます」

「……ま~だそんなこと言ってんの?
いい加減認めなよ」
 
「いえ、俺は人間なんで」

 二人の少々ズレた会話に如月は思わずクスりと笑ってしまった。 
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