天狗と骨董屋

吉良鳥一

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緋色の罪

第九話

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  人の心無い行いによって一つの命が力尽きようとしていた。

「何とか薬品に侵された身体を治したいと思っていた所に他の小妖が噂をしていたのが聞こえたんです」

 それは丁度利音が勾玉の水晶を前の持ち主から引き取る所をある小妖が物影から目撃していたらしい。
 それを見てどうにか盗めないかと仲間と話していたのを椿は聞いていた。

「元々その水晶の事は知っていました。
まさかこんな近くにあるとは驚きでしたが……」

 どうにか手に入らないかと人に姿を変えたはいいが、既に弱った身体は人の姿を保つのがやっと。
 最早誰かに憑かなければ動く事もままならなかった。
 だからたまたま目に入った女性に取り憑いたのだった。

「このまま消えてしまうのは無念でなりません。
どうか私にそれを恵んでは貰えませんか?」

  悲痛な椿の叫びに真尋は同情した。
 彼女はただまだここに居たいだけだ。
 妖と言えど彼女に非は無いのにこのまま見捨ててしまうのは真尋の良心が痛む。

「利音さん、椿さんを助けてあげませんか?」

 コレクションを1つ失うとしても彼ならきっと同意してくれる。
 そう信じた。
  いや、信じたかっただけだ__

「断る」

 真尋の想いは無惨に利音の冷たい声が打ち砕く。

「これは俺が手に入れたものだし、勝手に忍び込んで来た奴を助ける義理もない」

「利音さん……」

 確かに彼女は勝手にこの家に侵入し、水晶を盗もうとしていた。
 しかしそれはどうしても病を治したかったから……
 助けてあげてもバチは当たらないと真尋は思うが、彼の意見は違うようだ。

「貴方のその霊力、祓い屋の方とお見受けします。
私はここで貴方の手によって朽ちて行く運命なのでしょうね……」

 椿は悲しげな目で利音を見るが、利音の目は変わらず冷たいものだった。
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