天狗と骨董屋

吉良鳥一

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呪いの笛

第三話

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 黒い人形となったモヤは低く唸りながら利音へと襲い掛かった。

「利音さん!!」

 やられる……
 真尋は咄嗟に名前を叫んだ。

 だが、それは利音に触れる事は出来なかった。
 人差し指と中指を立てた利音の前には結界のような物が張られ、黒い人形は弾き飛ばされた。

「縛」

 そう唱えた利音の声と共に地面から白く光を放つロープのような物が複数現れ黒い人形を縛り、動きを封じた。

「利音さん」

 初めて見る彼の力に真尋は驚いた。
 まだ彼の能力をみたばかりだが、相当な強さを持っていると本能的に理解できる。

「さて真尋」

「はい」

「君飛べるんだよね?」

「え~っと、はい……?」

 飛べるとは翼で飛ぶと言う意味なんだよなと、真尋は唐突な質問に意図が分からず曖昧に答える。
 
「今からあっちの山に移動するから」

 利音が指差す方を見ると確かに山が見える。

「なんでですか?」

「この怨霊、思ったより強力だ。
そんなのとここでやれば家が壊されてしまう。
だから移動する」

「ああなるほど……」

 だったら最初から山に行けば良かったのに……
 そう呟くともっと雑魚だと思ったなどと言葉が返ってきた。

 ところで利音はどうやって山へ向かうかと疑問が湧いたその時、彼はごそごそと蔵の中から大きな壺を取り出した。

怨敵降伏おんてきこうふく、我が名の元に召喚し給え」

 そう利音が唱えると、壺の中から中型の犬が現れた。
 色は茶色っぽく背中は黒っぽい。
 顔は狼のように精悍な顔つきで、耳は立ち耳で日本犬より小さめだ。 
 よく見ると首には傷跡が見える。

「あのこれって……」

「犬神。
これも寺の住職に貰った。」

    利音曰く、寺に来る前はとある家の蔵の奥に眠っていた壺を家主が発見した。
    札を何十にも重ねて蓋がされていたのを興味本位で剥がして中を覗くと動物のミイラ化した頭部が入っていたとのこと。
    それからその家では誰もいないのに足音や気配がしたり、急に物が倒れて来たりと怪奇現象が起こり始め、更に体調不良と気味が悪くなり寺に持ち込まれた。
    それを利音が引き取ったのだと言う。


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