ギャペラ～獣の世界に落ちて～

過去

第二話

 ラジェッド･ルーガはケイが生まれる前は王宮に勤める外交補佐官のノーザン･リオネルの秘書をしていた。

 そのおよそ10年程前には両親を事故で亡くし、まだ幼かった弟のノイルの為に学費や養育費を稼がなければと頑張っていた。

 その頑張りは上司のノーザンも一目を置くほどだった。
 そんな中でノーザンから紹介された娘のミーシェと出逢い、二人は恋に落ち、そして結婚した。

 だが、繁殖力の低いギャペラ。
二人も中々子が出来ず数十年が経ち、諦めかけた所にケイが生まれた。

 だがその子は特殊な姿をしていた。
 ジャガーとライオンの混じり合った姿は研究所も興味を示す程だ。

 しかしその奇妙な姿とは裏腹にサージェスと名付けたその子は普通の子供となんら変わりはない。

 変わりは無いのに容姿のせいで他の子から、からかわれる事も多々あった。

｢ぱぱぁ～……｣

｢サージェス……｣

 泣きながらラジェッドの元へ駆け寄ってきた息子を抱き上げると尻尾を隠すようにラジェッドとの間に丸める。

 どうやら一緒に遊んでくれていると思った子達に尻尾を引っ張られてしまったようだ。

｢いたい……｣

｢ごめんねサージェス。
お父さんが側に居ればよかったね｣

 こんな事があるから本当に可哀想で、ミーシェも自分を責めた。

｢私が普通に生んであげてたら……｣

｢それは君のせいじゃない。
誰のせいでも無いのだから、そんなことを言っては駄目だ。
サージェスの姿を否定するのと同じだ｣

｢ラジェッド……
そうね、私はあの子のあの姿が好きだもの。
ごめんなさい、私が卑屈になってた｣

 ありのままの息子の姿を愛し、育んで行くと改めて誓った矢先、事件は起こる。