ギャペラ～獣の世界に落ちて～

知らない自分

第二話

 ノイルは自分の叔父……
そんな驚きの事実にケイは言葉が続かなかった。

｢ケイ、お前の両親に会ってくれないか？｣

｢え、いや………
そんな急に言われても………｣

｢ああ、分かってる。
けど、お前の両親は会いたがっている。
特に義姉はお前を失って病んでしまって、今も一日の多くをベッドの上で過ごしている。
だから……｣

 ケイがいなくなって体調を崩すようになった彼女に、もう一度息子と再会させたい。
 しかし、今の彼はこの世界の言葉も忘れてしまい、向こうの世界に帰りたがっている。

 その現実を彼女が受け入れられるのかも心配で、もし余計に悲しむような事があったらとノイルは危惧していたが、ケイの実父でノイルの兄と話をしたところ、会わせて欲しいと願った。

 ただ生きているとこの目で確かめたい。
 自分たちの知る息子では無くとも構わない。
 そう言われた。

 一方ケイは、戸惑っていた。

 実の両親が判明した。
 しかし、ケイからしてみれば両親は日本にいる育ての親だけだ。
 正直会いたいかと言われればあまり乗り気じゃない。

 だって日本に帰りたいのだから、変に期待されても困るし、正直気持ちの整理がついていない。

｢悪い、暫く考えたい｣

｢ケイ………｣

 ここで実の両親に会ってしまえば、育ての両親に申し訳ない気持ちにもなるし、どうしてかもう二度と日本帰れないような気がしてしまう。

 だからなんとなく自分の出自の事も考えないようにしていたのに……

｢もっと、早く言うべきだった。
判断を誤った俺の責任だ。
申し訳ない。
だがなるべく早くこたえが欲しい。
あまり兄達を待たせたくはない｣

｢…………｣

 ノイルはそう急かした。