ギャペラ～獣の世界に落ちて～

知らない自分

第一話

｢………本当か？｣

｢はい、間違いありません。｣

｢ケイには何故言わない？｣

｢……彼は、帰りたがっています。
こんなことを伝えるのは酷ではと｣

 ケイには知らせなくてはいけない事実がある。
 けれど、どうにも踏ん切りがつかないのだ。

｢延ばしたところで何になる。
俺は、欲しいものは絶対に手に入れる。
あいつを手放したりは決してしない｣

｢殿下………｣

 シルヴァはケイを元の世界に戻す気は更々ない。
そんな彼を見てノイルは考えるように一度目を閉じ、再び目を開いた。

｢そうですね。
彼には知る権利がある………｣

 その後ノイルは決意したようにとある人物へと会いに行った。

 それから翌日ケイに話があると言って世話係のヴィアンに部屋を出てもらい、二人きりとなった。

｢なんだよ、改まって……
なんか嫌な予感するんだけど気のせい？｣

｢そんなに気構える必要はナイ。
お前は知りたくないか？
自分が何者なのかを｣

｢……どう言う意味？｣

 気構える必要は無いと言われたが、話が見えず不安になる。

｢お前の出生を知りたくはないか？
俺はそれを知っている｣

｢なっ………
なんで、お前がそんなこと知ってんだよ!!｣

 思ってもいない発言にケイは心臓がバクバクと大きく鼓動を打つのが感じられた。

 自分の正体を彼が知っている事実に色々な疑問が降り注ぐ。

｢知っているさ……
お前の名はサージェス。
サージェス･ルーガ｣

｢サージェス……ルーガ？｣

 あれ……ルーガって……
 確かノイルの………

｢ああ……お前は俺の甥、兄の子だ｣

｢………っ!!｣

 甥、と言うことはノイルは叔父。
 彼は俺の親族だったのか……？