わたしの弟子は超絶カワ(・∀・)イイ!!天才美少女魔法使い!

KT

文字の大きさ
上 下
33 / 60
第三章 わたしと弟子と魔導書盗難事件

第33話 幼児退行アリシア

しおりを挟む
 事情聴取が終わったのはすっかり陽が昇った時間だった。重たい瞼を擦りながら、わたしとミナリーは寮の方へふらふらと歩いていく。そろそろ授業が始まる時間だけど、どうせ寝ちゃいそうだし、それなら午前中はベッドでぐっすり寝て昼から登校することにした。

「大変な目にあったねぇ、ミナリー」

「すみませんでした、師匠。わたしが巡回の警備員にもう少し早く気づいていれば……」

「いいよいいよ。どうせ見つかってなくても学園に説明する必要はあったからね」

 警備の人に見つかったわたしたちは、あの後すぐ警鐘を聞きつけて駆け付けた先生たちに事情を説明することになった……んだけど、

「まさかあれ程信じてもらえないとは思いませんでした。不愉快です」

 ミナリーが不快感を示すほどに、わたしたちの言い分はなかなか信じて貰えなかった。状況証拠からわたしたち以外の侵入者が居たことは明確だったものの、焦点はどうしてわたしたちがそこに居合わせたか。

 ミナリーが結界の揺らぎを感じたから様子を見に……、と言って信じてくれる先生は居なかった。

 特に酷かったのが教頭で、わたしたちが侵入者を手引きしたんじゃないかって食って掛かってきた挙句にわたしを無能令嬢なんて言い出したから、アリシアとミナリーが魔法で黙らせようとしてハチャメチャになりかけた。

 なんとか開放して貰えたけど、たぶんまだ疑われてるんだろうなぁ。

 アリシアは生徒会として今後の対応について学園側と協議する必要があるから、とまだ事情聴取が行われていた会議室に残っている。

「ミナリー、侵入した二人の魔力って覚えてる?」

「感覚で何となく……。ただ、王都を探し回って見つけられる自信はないです」

「そっかぁー」

 わたしたちで犯人を捕まえたら、あの教頭の鼻も明かせると思ったんだけどなぁ。でも、ミナリーに無理させちゃうのは嫌だから黙っておく。

「結局、彼らの目的はいったい何だったんでしょうか」

「魔導書だとは思うけど……、結局どうだったんだろう? そもそも魔導書って盗まれたのかなぁ?」

「わかりませんね……」

 わたしたちが見たのは窓から飛び出していく人影だけで、彼らが魔導書を持ち去ったかどうかまではわからなかった。先生たちが書庫を調査したはずだけど、盗まれたとしたらどんな魔導書が盗まれたんだろう?

 魔導書とは端的に言えば魔力を帯びた本のこと。その効果や材質に至るまで千差万別で、中には人皮装丁の禍々しい魔導書もあるとかないとか。本を持つだけで魔法が使えるようになる魔導書もあれば、中には魔導書が呪いを帯びていて読んだ人を死に至らしめることもあるらしい。

 もしも危ない魔導書が盗まれていたら学園だけの問題じゃ済まなそうだけど……。

「ふぁ~ぁあ……」

 難しいことを考えようとしたら欠伸が出ちゃった。一抹の不安を抱えつつ寮の自室に戻ったわたしは、ミナリーと一緒にベッドへ倒れこんだ。それからたっぷりお昼まで睡眠をとって、昼ご飯を食べに学食へと向かう。

 学食で合流したロザリィ様とニーナちゃんに一眠りして来たと言うと呆れられちゃった。

「大図書館に賊が入ったとは噂になっていましたけれど……」

「まさかミナリーさんと師匠さんがそれを目撃していたとは思いませんでした」

 昨晩の出来事を説明するとロザリィ様とニーナちゃんは目を丸くして驚いた。わたしたちが寝ている間に、学校内でも侵入者に関する噂は広がっていたようだ。先生たちはかん口令を敷くと言っていたけど人の噂に戸は立てられなかったみたい。

 それからしばらく四人で話していると、学食にふらふらとした足取りのアリシアが姿を見せた。アリシアはわたしたちを見つけると、こっちに足元が覚束ない様子で歩いてくる。

「ねぇさまぁ~」

 そして間の抜けた声でわたしを呼ぶと、そのままわたしの胸に顔を埋める様に飛び込んできた。

「わっ、っとと。ど、どうしたの、アリシア?」

「もぉーつかれたぁ~。ねぇさまぎゅ~ってして~」

「あー……うん。よしよし、頑張ったね」

 人目を憚らずに甘えてくるアリシアの髪を撫でてギュッとしてあげる。

 極度の疲労と眠気で幼児退行しちゃってるなぁ……。一眠りしたわたしたちと違って、アリシアは昨晩から今までずっと起きっぱなしだっただろうから、今がちょうど疲労と眠気のピークかも。

 生徒会長として毅然とした態度を普段からとっていたアリシアの豹変に、近くの席に座っていた子達が何事かと注目してくる。

「アリシアの黒歴史が増えない内にどこかで寝かせてあげた方がよさそうですわね」

「うん、そうだね……」

 手早く食事を済ませたわたしたちは、アリシアをひとまず保健室まで運ぶ。わたしにギュッと抱き着いていたアリシアは、保健室のベッドに寝転がった瞬間には安らかな寝息を立て始めた。

「ごめんね、アリシア。わたしが巻き込んじゃったから……」

「師匠のせいではないです」

「そうですわ。それに話を聞く限りでは、アリシアを連れて行った判断は正解ですわよ。そうでなければ、二人とも今頃拘束されていた可能性があります」

「えぇっ!? お二人ともただの目撃者なのにどうして拘束されちゃうんですか?」

「目撃者だからこそですわ、ニーナ。あなた、昨日の警鐘が鳴った時間なにをしていましたの?」

「え、えっと、鐘の音で起きるまでは寝てましたけど……」

「わたくしもです。消灯時間はとっくに過ぎていましたし、それ以降の寮からの外出がそもそも校則違反ですわ。それなのに賊の犯行に居合わせたというのは、教師からしてみれば疑わしいにも程がありますわよ。ミナリーの言う結界の揺らぎを感じたというのも、胡散臭さが増すだけですわね」

「ええっと……、それってミナリーさんと師匠さんが侵入を手引きしたと思われてるってことですか……?」

「そう思われても仕方がないという話ですわ。幸いなのが先程も言ったようにアリシアを同行させたことですわね。生徒会長として教師陣からも信頼の厚いアリシアが一緒だったから何とか信じて貰えているのが現状だと思いますわ」

 ですが、とロザリィ様は続ける。

「疑いを晴らすには不十分ですわね……。教頭はセプテンバー派の重鎮として有名なフロッグ家の出身ですし、オクトーバーに汚名を着せるためこのまま罪を擦り付ける可能性もありますわ」

「またそれですか……」

 ミナリーは辟易とした様子で呟く。わたしも慣れているとはいえ、溜息が出ちゃいそうだった。

「王都に居る限りは付きまとう問題ですわよ。……ですが、それを見越してわたくしたちは動く必要がありますわね」

「見越してですか? それは、えーっと。つまり……?」

「決まってますわ。わたくしたちで犯人を捕まえるんですわよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...