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第二章 わたしの妹は超絶カワ(・∀・)イイ!!ツンデレ魔法使い!
第29話 わたしの弟子と妹が仲良しな件
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◇
チョキチョキと、部屋の中にハサミの鳴る小気味のいい音が響く。すっかり暗くなった窓の外。魔力灯の柔らかな光が部屋の中を照らしている。
「手際がいいですわね。わたくしもお願いしたいですわ」
「ほんと、プロのスタイリストさんみたいです!」
「え~? 二人とも褒めすぎだよぉ」
ミナリーの毛先を切りながら、わたしは手放しで褒めてくれるロザリィ様とニーナちゃんにうきうきで返事をしようとして、
――ジャキンッ。
「あっ……」
「師匠? やらかしましたか?」
「だ、大丈夫だいじょうぶ! これくらいバッサリ行ったほうが可愛いって思うよ、うん!」
「…………まあ、どうしようもなくなったら魔法で戻すのでいいですが」
「戻せるんだ……」
だったらわたしが髪を切っている意味はいったい……?
そんな会話も挟みつつ、ミナリーの髪をわたし好みに整えていく。だいたい一時間くらいでミナリーはセミロングの似合う可憐で愛らしい美少女へとクラスチェンジした。
「どうかな、ミナリー?」
鏡を持ちながらミナリーに確認してもらう。ミナリーはむむむぅと真剣な表情で自分の髪型を吟味して、納得したように頷いた。
「ミナリーに気に入ってもらえて安心したよぅ。短くするのって出会ったとき以来じゃないかな?」
「そうかもしれません。師匠が何度も失敗するたびに短くなっていって、行く先々で男の子に間違えられました。それが嫌で伸ばしていたんですよ」
「うっ……。あ、あの頃は本当にショートだったけど、今回はほらセミロングで良い感じ! 誰も男の子には間違えようがないよ!」
「くすっ。そうですね」
ミナリーは狼狽するわたしを鏡越しに見て、口元に手を当てて控えめに笑っている。んもぅ、ミナリーのいじわる。
それにしても、数々の失敗を積み重ねただけあって、ようやくミナリーに納得してもらえるくらい散髪が上手くなった。ミナリーと一緒に居た時間の長さを実感するなぁ。
「なかなか興味深い話が聞けましたわね。それにしてもまさかミナリーがあのスークスの神童だったなんて」
「わたしもその噂は知っていたのでビックリしちゃいました」
ミナリーの散髪をしている間、部屋に遊びに来たロザリィ様とニーナちゃんにわたしはこの5年間の話をざっくりと語り聞かせた。二人が一番食いついたのはやっぱりミナリーとの出会いの話で、特にミナリーがスークスの神童と呼ばれていた事についてだった。
「私の噂がまさかこんなに広がっていたとは意外です」
「なかなか強烈でしたわよ。子供が魔法で街を一つ焼き払ったとか」
「わたしは水で街を押し流して更地にしたって聞きましたよ?」
「どっちもやってないですよ……」
ミナリーは呆れたように溜息を吐く。ミナリーの神童の噂は色々な話が独り歩きした挙句に背びれと尾びれで空を飛んでいったような内容だからなぁ。
「そろそろ遅くなってきましたし、わたくしたちはおいとま致しますわ」
「おやすみなさいです、ミナリーさん、師匠さん」
散髪の片付けも手伝ってくれた二人は、片付けが終わると自分たちの部屋に戻っていった。時刻はもう夜中の10時を過ぎようとしている。明日から本格的な授業も始まっちゃうし、わたしたちもそろそろ寝たほうがよさそうだ。
二人で寝る支度を進めていると、部屋の扉がコンコンと控えめにノックされた。誰だろう? ロザリィ様かニーナちゃんが忘れ物しちゃったかな?
「見てきます」
そう言ってミナリーが部屋の扉を開く。すると扉の前に立っていたのは、水玉模様のパジャマ姿で枕を抱えたアリシアだった。
「どうしてあんたが姉さまの部屋に居るのよ……?」
「可愛いパジャマですね」
「うるさいっ。質問に答えなさいよっ!」
「ここが師匠とわたしの部屋だからです」
「いや、この寮は全室一人部屋なんだけど……」
アリシアは溜息を吐いて「もういいわ」と踵を返そうとしたから、わたしは慌てて扉の方へと駆け寄った。
「アリシア、遊びに来てくれたの?」
「あ、姉さま……。えっと、その……うん。姉さまといろいろお話したくって……。でもお邪魔するのも悪いから……」
「ぜんぜん邪魔なんかじゃないよっ! ほらおいで?」
「あ、ちょっと!」
わたしはアリシアの手を引いて部屋の中へと招き入れた。ミナリーは少し頬を膨らませたけど、何も言わずに後ろをついてくる。そしてわたしたちは、一つのベッドに三人川の字で寝転がった。
「ねえ、さすがにちょっと狭すぎるんじゃないかしら……」
「そうですね。これはもっと師匠に密着しないと落ちてしまいそうです」
「おいこら布団を引っ張るな。片足がはみ出ちゃうでしょ!」
わたしを間に挟んで二人が喧嘩をする。両方から圧迫されたわたしは、さながらサンドイッチの具のような気分だった。
でも、幸せだなぁ。ミナリーとアリシアと三人で一緒に寝られるなんて。どっちもいい香りだし、どっちも柔らかいし。右を向いたらミナリーが居て、左を向いたらアリシアがいる。両手に最愛の弟子と最愛の妹を抱えて眠れるなんて、ここは天国かな?
それに何より、
「色々とあったけど二人が仲良くなってくれてわたしは嬉しいよ」
果し合いなんて話になった時にはどうなることかと思ったけど、結果的に丸く収まって本当に良かった。ミナリーもアリシアも優しい子だから、心配はしてなかったけどね。
それにやっぱり、二人はよく似ているから。
「は? 全然仲良くなんかないわよ」
「そうです。これっぽっちも仲良くありません」
「えー? どこからどう見ても仲良しだよぉ。今だって息ぴったり――痛い! ちょっと、胸掴んだのどっち!?」
「ミナリー」
「アリシア」
「どっちもでしょこのぉっ! お仕置きだよ二人ともぉーっ!」
こうして入学初日の夜は騒がしくも楽しく過ぎていった。翌朝、三人揃って寝坊したわたしたちはロザリィ様とニーナちゃんに呆れられてしまうのだけど、それはまた別のお話。
チョキチョキと、部屋の中にハサミの鳴る小気味のいい音が響く。すっかり暗くなった窓の外。魔力灯の柔らかな光が部屋の中を照らしている。
「手際がいいですわね。わたくしもお願いしたいですわ」
「ほんと、プロのスタイリストさんみたいです!」
「え~? 二人とも褒めすぎだよぉ」
ミナリーの毛先を切りながら、わたしは手放しで褒めてくれるロザリィ様とニーナちゃんにうきうきで返事をしようとして、
――ジャキンッ。
「あっ……」
「師匠? やらかしましたか?」
「だ、大丈夫だいじょうぶ! これくらいバッサリ行ったほうが可愛いって思うよ、うん!」
「…………まあ、どうしようもなくなったら魔法で戻すのでいいですが」
「戻せるんだ……」
だったらわたしが髪を切っている意味はいったい……?
そんな会話も挟みつつ、ミナリーの髪をわたし好みに整えていく。だいたい一時間くらいでミナリーはセミロングの似合う可憐で愛らしい美少女へとクラスチェンジした。
「どうかな、ミナリー?」
鏡を持ちながらミナリーに確認してもらう。ミナリーはむむむぅと真剣な表情で自分の髪型を吟味して、納得したように頷いた。
「ミナリーに気に入ってもらえて安心したよぅ。短くするのって出会ったとき以来じゃないかな?」
「そうかもしれません。師匠が何度も失敗するたびに短くなっていって、行く先々で男の子に間違えられました。それが嫌で伸ばしていたんですよ」
「うっ……。あ、あの頃は本当にショートだったけど、今回はほらセミロングで良い感じ! 誰も男の子には間違えようがないよ!」
「くすっ。そうですね」
ミナリーは狼狽するわたしを鏡越しに見て、口元に手を当てて控えめに笑っている。んもぅ、ミナリーのいじわる。
それにしても、数々の失敗を積み重ねただけあって、ようやくミナリーに納得してもらえるくらい散髪が上手くなった。ミナリーと一緒に居た時間の長さを実感するなぁ。
「なかなか興味深い話が聞けましたわね。それにしてもまさかミナリーがあのスークスの神童だったなんて」
「わたしもその噂は知っていたのでビックリしちゃいました」
ミナリーの散髪をしている間、部屋に遊びに来たロザリィ様とニーナちゃんにわたしはこの5年間の話をざっくりと語り聞かせた。二人が一番食いついたのはやっぱりミナリーとの出会いの話で、特にミナリーがスークスの神童と呼ばれていた事についてだった。
「私の噂がまさかこんなに広がっていたとは意外です」
「なかなか強烈でしたわよ。子供が魔法で街を一つ焼き払ったとか」
「わたしは水で街を押し流して更地にしたって聞きましたよ?」
「どっちもやってないですよ……」
ミナリーは呆れたように溜息を吐く。ミナリーの神童の噂は色々な話が独り歩きした挙句に背びれと尾びれで空を飛んでいったような内容だからなぁ。
「そろそろ遅くなってきましたし、わたくしたちはおいとま致しますわ」
「おやすみなさいです、ミナリーさん、師匠さん」
散髪の片付けも手伝ってくれた二人は、片付けが終わると自分たちの部屋に戻っていった。時刻はもう夜中の10時を過ぎようとしている。明日から本格的な授業も始まっちゃうし、わたしたちもそろそろ寝たほうがよさそうだ。
二人で寝る支度を進めていると、部屋の扉がコンコンと控えめにノックされた。誰だろう? ロザリィ様かニーナちゃんが忘れ物しちゃったかな?
「見てきます」
そう言ってミナリーが部屋の扉を開く。すると扉の前に立っていたのは、水玉模様のパジャマ姿で枕を抱えたアリシアだった。
「どうしてあんたが姉さまの部屋に居るのよ……?」
「可愛いパジャマですね」
「うるさいっ。質問に答えなさいよっ!」
「ここが師匠とわたしの部屋だからです」
「いや、この寮は全室一人部屋なんだけど……」
アリシアは溜息を吐いて「もういいわ」と踵を返そうとしたから、わたしは慌てて扉の方へと駆け寄った。
「アリシア、遊びに来てくれたの?」
「あ、姉さま……。えっと、その……うん。姉さまといろいろお話したくって……。でもお邪魔するのも悪いから……」
「ぜんぜん邪魔なんかじゃないよっ! ほらおいで?」
「あ、ちょっと!」
わたしはアリシアの手を引いて部屋の中へと招き入れた。ミナリーは少し頬を膨らませたけど、何も言わずに後ろをついてくる。そしてわたしたちは、一つのベッドに三人川の字で寝転がった。
「ねえ、さすがにちょっと狭すぎるんじゃないかしら……」
「そうですね。これはもっと師匠に密着しないと落ちてしまいそうです」
「おいこら布団を引っ張るな。片足がはみ出ちゃうでしょ!」
わたしを間に挟んで二人が喧嘩をする。両方から圧迫されたわたしは、さながらサンドイッチの具のような気分だった。
でも、幸せだなぁ。ミナリーとアリシアと三人で一緒に寝られるなんて。どっちもいい香りだし、どっちも柔らかいし。右を向いたらミナリーが居て、左を向いたらアリシアがいる。両手に最愛の弟子と最愛の妹を抱えて眠れるなんて、ここは天国かな?
それに何より、
「色々とあったけど二人が仲良くなってくれてわたしは嬉しいよ」
果し合いなんて話になった時にはどうなることかと思ったけど、結果的に丸く収まって本当に良かった。ミナリーもアリシアも優しい子だから、心配はしてなかったけどね。
それにやっぱり、二人はよく似ているから。
「は? 全然仲良くなんかないわよ」
「そうです。これっぽっちも仲良くありません」
「えー? どこからどう見ても仲良しだよぉ。今だって息ぴったり――痛い! ちょっと、胸掴んだのどっち!?」
「ミナリー」
「アリシア」
「どっちもでしょこのぉっ! お仕置きだよ二人ともぉーっ!」
こうして入学初日の夜は騒がしくも楽しく過ぎていった。翌朝、三人揃って寝坊したわたしたちはロザリィ様とニーナちゃんに呆れられてしまうのだけど、それはまた別のお話。
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