上 下
44 / 143

真空崩壊という現象

しおりを挟む
 僕のような青二才が年上の人に言うのは失礼かなと思いつつ言ってみたのだが...

 八神さんは怒ることなく、右手の指を眉間に当てながら苦笑していた。

「ククク...だよな。君のような少年でもやっぱりそう思うよね」

 こちらを向かずにそう言った八神さんが、ビールを勢いよくゴクゴクと一気呑みする。

「ぷはぁ~!...久しぶりでアルコールが回ってしまうのが早いけど、暑い夏のビールは格別に美味い!」

 そんなに美味く感じるのか!?今の僕には分からない境地だ...大人になれば分かるかもだが、その頃にビールが存在していれば良いけどな...

 青白い肌が一瞬にして薄赤色になった八神さんが、着用している白衣の内ポケットに右手を入れ何かを取り出した。

 その何かを左の掌に乗せて僕に差し出す。

「これって例の...」

「そうだよ。青酸カリはこの手にあるので全部だ...さっき寝ている間に飛鳥井君と柴門君の話しが少し聴こえたんだが、匡君のナインスセンスって物体を消滅させることができるんだよね?」

「そうみたいですけど...」

「その能力でこいつを完全に消してくれないかな?」

 大真面目な顔からして、酔った勢いではなく真剣に考えて言っているようだ。
 
「まだ経験が浅いので上手く消せるかどうか分かりませんがやってみます!そこに置いてください」

「分かった。ここで良いかい?」

「はい。そこで大丈夫です...じゃあやってみますね」

 僕のナインスセンスが覚醒したのは今日の今日で消し飛ばした物体は二つだけ...化け物カラスの頭と木の幹。
 こんな小さい物体のみを狙って能力を発動させたことはまだ無い。
 
 要領は一応掴めているいるつもりだ。
 テーブルに置かれた十粒ほどの青酸カリを集中して見る。
 この粒だけを消滅させるイメージを想い浮かべながら、ゆっくり右手の人差し指指を突き出した。

「消えろ]

「ジュッ!」

 やった!十粒ほどの青酸カリを一瞬で消滅させることに成功した!

「お!?おお...]

 驚きの表情を浮かべる八神さんが物体の存在していたテーブルの上に手を当てる。

「す、凄い!テーブルは無傷だ。規模は全然違うが、これはまるで[真空崩壊]のような現象だな...」

 何だそれ?初めて聞く単語だ...

「あの、[真空崩壊]ってなんですか?」

 問いかけると八神さんは顎に手を当て「う~ん」とうねり、何かを考えるような仕草をする。

「...今の回らない頭ではちょっと説明が難しいんだよねぇ...[真空崩壊]というのは物理の法則を覆すような現象なんだよ...」

 知りたくて気軽に訊いたわけだが、科学者だった八神さんですら難しいと思うような話を聞く体力など僕には残っていない。
 
「申し訳ないんですけどその話はまた今度に...」

 言い終える前に話を聞くことがない事を知った。
 八神さんは既にテーブルの上へ突っ伏し、寝てしまっていたのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...