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ヒーラーの力

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 そんな優しい気持ちで接していたのだけれど、結月が何かを思い出したのか、座った目をして僕の顔を見詰める。

「ねぇねぇ匡。貴方が治療に入る前にわたしが言ったことを覚えてるぅ?」

「えっ!?あぁ、まぁね」

 不意に問われ、頭にはパッと二つのことが思い浮かんだが、片方はここではかなり言いづらい...

「あれだろ、夏休みになったら喬助と三人で一緒に遊ぼうってやつ...」

 自信なさげで尻つぼみにそう話すと、結月の座った目がさらに細くなる。

「ふ~ん、そんな話をするんだぁ...もう知らな~い」

 結月は口を尖らせてそう言い、「フン!」という感じでそっぽを向いてしまった。
 
 あたぁ。不機嫌にさせたかな...
 でも、こんなところで話す話題じゃないだろあれは。
 それに告白されてから事実上一ヶ月は経っているけど、僕からすればまだ3日も経っていないんだぞ。
 考えたくてもそれが出来なかったことは考慮して欲しい...
 などと酔いで回らなくなった頭で混乱気味に考えていると。

 結月が不意にこちらを振り向き僕の顔を覗き込む。

「べぇ~だぁ!もう、そんなに困った顔しないでよ~。まるでわたしが貴方をいじめてるみたいじゃない」

 「古っ!」っと一瞬口にしようと思ったが何とか踏み止まり、代わりの言葉を口に出す。

「結月の気持ちは本当に嬉しいと想っているよ...でもさ、今の僕は変わり果てた世界に驚かされてばかりで混乱してるんだよ。そんな状態で返事をされても嬉しく無いだろ?」

 結月が照れ臭そうな顔をして返す。

「嬉しいと想ってくれてるなら今回だけは許してあげる...わたしも酔っちゃってるし~♪」

 また結月は急にハイテンションになり、缶に残っているビールを「ゴクゴク」と音を立てて一気呑みしてしまった。
 そのまま流れるようにテーブルの上へ突っ伏まう。
 黙ってその様子を窺うと、程なく「スー、スー」と寝息が聞こえて来た。

 頭痛薬とかあるのかな?ここ。
 初めて酒なのにこんな呑みかたをしてしまったのだ。明日の朝はタダでは済まないだろう...

「あらぁ、結月ちゃん寝ちゃったのねぇ」

「おわっ!?」

 突然横から顔を出して来た葵さんに驚いた。

「そ、そうなんですよ。初めての酒なのに呑み過ぎですよね」

 よく見れば葵さんも泥酔状態なのだが...

「心配しなくても大丈夫よ~♪わたしのヒーラーの力を使って結月ちゃんが身体を壊さないようにしてあげる♪」
 
 葵さんがそう言って結月の背中に手をかざすと、掌から薄い光が発生したのだった。
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