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見覚えのある風景

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「俺は今日、この住宅街に残っている人間が居ないものかと探索していたんだ。その途中で化け物カラスの群れが一カ所に集まっているのを見つけてね。そこへ瞬間移動して群れの中心に目を向けると、若い男女の二人が手足をカラス達に食いちぎられている最中だった…即座に化け物カラスの数匹を討ち取って群れを追い払い、二人の傍に駆け寄ったんだが既に絶命していたよ」
 
 僕は飛鳥井さんの話を聞いて二人が可哀そうだと想う反面、その場所へ行かなくて良かったと想う気持ちを後ろめたく感じていた。
 
「そんなことがあったんですか…でも、今回だけでなく、この住宅街ではカラスに襲われた人達が多くいたんですよね?」
 
「さっきも言ったが恐らくそうだ。だから住宅街の住民はカラスの所為で何処かへ避難する事を余儀なくされ、現在の人の居ない空き家だらけになったんだと想う」
 
 病気の治療が終わり、地下室から出た時に僕の両親は居なかった。
 何処か安全な場所で生きていてくれたらどんなに嬉しいか…
 
「あっ!」

 一つ確かめたい事を思いついた。
 直ぐにポケットからスマホを取り出し、保存しておいた両親の画像を開いて飛鳥井さんに見せる。
 
「この画像の二人を見かけた事は無いですか?」
 
 飛鳥井さんがスマホに顔を近づけ画像をジッと見て返答する。
 
「ん~、見たこと無いねぇ。もしかして君の御両親かい?」

余り期待はしていなかったのだが、やはり有益な情報を得られず少し気持ちが沈む。

 「そうなんです。せめて生死の確認だけでもできれば良いんですけど…」
 
「今は電波を含めたライフラインが全て止まっているからね。情報収集も直接的に見たり訊いたりするしかないんだ。君の御両親の安否を確かめる術も限られている。でも希望を捨てずに探し続けていれば、いつか再会できるかも知れないよ」
 
「そうですよね。生きて探し続けていればきっと…」


 
 そこから暫くのあいだは二人とも無言で歩いた。
 20分ほど歩き続けていて僕はある事にふと気付く。
 この住宅街はかなり広く、十年以上住み続けていても通ったことのない道の方が圧倒的に多いはずなのだが、どこか見覚えのある風景ばかりが続いるのだ。

 確かこの道って…

 薄っすらと残った記憶を呼び戻すために考えていると、前を歩く飛鳥井さんの足がピタッと止まり、門構えがしっかりしていて広い庭のある豪邸を指差す。
 
「チームのアジトはあの豪邸の地下にあるんだ」
 
「えっ!?ここは…」
 
 アジトの場所を教えられた僕は、豪邸の表札に書かれた「品川」という苗字を読み記憶が一気に蘇った。

 ここは幼い頃よく遊びに来ていた品川結月の自宅じゃないか!
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